ここで これもお馴染みとなった
体重のセットポイント理論が登場しますが

筆者は

「脂肪定常性 リポスタシス」

と呼びます

「脳が脂肪の量を規定する」
 
というキャッチーな言い回しをして
そのメカニズムを解説しますが

興味深いのは 
セットポイントの変化について
詳述している点です


<セットポイントを下げる食事 生活習慣>

リポスタシスのセットポイントは
人によって異なり
暮らしぶり 食事内容によって変化し得る

食事が美味しくなくて 
食がもたらす報酬が少ないと
セットポイントが下がり 
減量後の飢餓反応が見られないが

元の食習慣に戻ると
セットポイントも元の水準に戻る


逆に 高カロリーの美味しい食物や過食は
レプチン分泌量を
体脂肪量非依存性に増やし抵抗性を誘導し
セットポイントを上げ 
太った状態を維持するようになる

過食がセットポイントを上げることを説明する図

つまり 美味しいものを食べずに
粗食を続けていれば
セットポイントは上がらないので 
肥満にもならないということ?


また タンパク質を多く摂ると
アミノ酸が視床下部に作用して
セットポイントが下げられるので

タンパク質摂取を増やさないと 
炭水化物ダイエットの効果は得られない


一方 運動により
セットポイントが下げられるが
運動は体脂肪量を減らすので
リポスタシスは食欲を高めようとする

この拮抗するバランスの具合は 
人により異なるので
運動による減量効果には個人差がある


充分な睡眠 ストレスの処理も
セットポイントを下げる可能性が大きい


ここから 
神経生物学者の本領が発揮されます


<食事内容により
 脳の食欲・脂肪蓄積に関わる部位の炎症・損傷が起きる>

肥満のヒトでは 
視床下部に慢性炎症が生じていることが多く

視床下部に慢性炎症が生じていることを示す写真

それがレプチンのシグナル伝達を阻害して
レプチン抵抗性を誘導し
食欲増加 肥満を引き起こしている

レプチン抵抗性により食欲増加 肥満が生ずることを説明する図


また 
視床下部の食欲 脂肪蓄積を調節する領域では
炎症だけでなく軽度の損傷も起きている

ラットに
太りやすい餌(脂肪 糖分の多いカロリーの高い精製加工品)
を与えると
まず脳の炎症 損傷が起きて そのあと太る

食物を健康的な粗食に戻すと 
炎症 損傷は改善される

ヒトでも 
視床下部に損傷らしきものがある人は
肥満になりやすい

こうした事実から
不健康な食物の摂取によって
脳の食欲や脂肪蓄積を調節する部位に
炎症 損傷が引き起こされ
体重増加が助長される可能性

が示唆されます

不健康な食事で脳が損傷され
それにより体重が増加するなんて
なんだかびっくりしますね!


ということで 
どんな食事を摂れば脳をだませるか 
という話題が広がります

高橋医院