読み手の皆さんは
「性差医療」という言葉を
聞かれたことがあるでしょうか?

男性と女性では
かかりやすい病気の種類が異なり
同じ病気になっても 
発症する年齢 症状 予後などが異なる

そうした事実が
次々に報告されるようになり

男女の差異を念頭において
医療を行うべきではないか?
というアイデアが 
1990年代からアメリカを中心に生まれてきて

Gender-specific medicine 性差医療 
と呼ばれるようになりました

性差医療について書かれた医学書の表紙


当院には
生活習慣病や糖尿病の患者さんが
多数来院されていますが

男性と女性では
ライフスタイルなどが異なる影響からか
生活習慣病の発症や進展の具合が
男女で微妙に違っています

そうしたことからHPでも 
女性の生活習慣病の項を設けて
説明しています

また 近隣の会社にお勤めの女性や
新築マンションに移住されてきた
若年~中年の女性の患者さんも
多数来院されています

そこで 
性差医学の最新情報に基づき
生活習慣病を中心に
女性の病気の特徴について
詳しく解説しようと思います


<性差医療という分野が生まれてきた背景>

これまでの医学は 
成人男性を標準として
病態 診断方法 治療方法などが
研究されてきて

産婦人科や泌尿器科などの
生殖器領域以外の性差については
あまり考えられてこられませんでした

しかし 近年では

*発症頻度の男女差が明らかな疾患がある
 
 たとえば
 甲状腺疾患は女性の方が多いし 
 痛風は男性の方が多い

男性に発症しやすい病気 女性に発症しやすい病気についてまとめた図表

*発症頻度は同程度でも
 症状 治療反応性 予後などに
 男女で差がある疾患がある

*同じ疾患の発症に関する
 危険因子(リスクファクター)でも
 寄与度に男女差がある場合がある

疾患の発症に関する危険因子の男女差を説明した図

たとえば上図に示されるように
虚血性心疾患において
喫煙や糖尿病は
男性より女性でより大きな危険因子です

*同じ医薬品でも 
 効果に男女差がある場合がある

といったことが明らかになり
病気の発症・進展 治療における性差が
注目されるようになっています


<そのような性差が現れる原因>

*男女のホルモンバランスの違い(生物学的要因)

*生活習慣の違い(社会文化的要因)

が原因に挙げられています

生物学的性差 社会文化的性差の説明図


こうしたことから
男性を基準として作成した診断方法や治療方法を
そのまま女性に適用した場合
最良の医療とはならない可能性があります

性差医療は
こうした医療における男女差を研究し
治療に反映させようという試みです


<セックスとジェンダー>

ちなみに 最近は
セックス
ジェンダー 
という言葉をよく見聞きしますが
このふたつは どう違うのでしょう?

どちらも性差を意味する言葉ですが

*セックスは 生物学的性差

*ジェンダーは 社会的性差

を意味しているそうです

セックスとジェンダーの違いの説明図

性差医療の世界においては

セックスによる違い 
という場合は
遺伝やホルモンによる影響を意味することが多く

ジェンダーは
文化や国民性にも大きく影響されますから
就労環境 喫煙や飲酒の頻度 検診機会の差
家庭 社会生活での役割の差などの
健康に及ぼす影響を検討する場合に
使われることが多いようです

なるほどです

 

高橋医院