ラグビーにワールドカップは似合わない?
いよいよ明日開幕する ラグビー ワールドカップ オリンピック サッカーワールドカップと並び 4年ごとに開催される 世界の3大スポーツイベントとされていますが 来年の東京オリンピックが第32回 去年ロシアで行われた サッカーワールドカップが第21回 と それぞれ歴史を積み重ねてきたのに対し ラグビーワールドカップは まだ9回目です サッカーの発祥は1848年で 団体のアソシエーションの創設が1863年 ラグビーの発祥は1823年で 団体のユニオンの創設が1871年 それぞれの起源は大差ないのに サッカーのワールドカップ大会は 始まったのが1930年 ラグビーのワールドカップ大会が 始まったのが1987年 どうして ラグビーのワールドカップは 歴史が浅いのでしょう? それには ラグビーの アマチュアリズム 対抗戦を それぞれ重視するという 独特の文化が影響しています まずは 対抗戦を重視する文化 そもそもラグビーには 複数のチームが集って 対戦しあって どこが1番強いかナンバーワンを決めよう というアイデアがありませんでした 大切にするのは 昔からつながりがあるチームとの 定期的に開かれる「対抗戦」 日本なら 大学ラグビーの早明戦や早慶戦 イギリスなら オクスフォードとケンブリッジの対抗戦 ラグビーはイギリスのパブリックスクールの 体育の授業から生まれて育ったので 学校同士の対抗戦を重視します またラグビーは 地域を大切にしますから 田舎の隣村のチームとの対抗戦は 重要な戦いです! 国レベルでも代表チーム同士の 対抗戦 テストマッチが重視され ヨーロッパの国々のテストマッチを まとめて行う5か国対抗戦は ワールドカップよりはるかに歴史があります このように 馴染みの深いチーム同士の対抗戦こそが 重要であって たくさんのチームが一同に会して戦い 全体の中のいちばんを決めるという リーグ戦やワールドカップのような催しには それほど重要性を見出さなかったのです だから ラグビーでは ワールドカップの開催が遅れました しかし 対抗戦こそが大切! と理想を掲げていても 先んじて リーグ戦やワールドカップを始めたサッカーに 世界中の人気が集まるようになりました そこで ラグビーの世界も危機感を覚えて やっとワールドカップを開催しようと いうことになりました それでも 第1回の開催にこぎつけるまでには 各国間で激しい議論が 何年間も続いたそうです そして ワールドカップが開かれるようになると 新たな問題として 選手のプロ化が現れてきました そもそもラグビーは アマチュアリズムを金科玉条としていたのです 世界にたくさんあるスポーツの中で いちばんアマチュアリズムに拘っていたといっても 過言ではありません よく例に出される話ですが 1987年 第1回のワールドカップに優勝した ニュージーランド オールブラックスの選手たちは 土曜日に行われた決勝戦で勝ち その夜は祝勝会で喜びを分かち合いましたが 日曜日には選手それぞれが地元に帰り 翌日の月曜日には 普段通り 自分の仕事をしていたそうです 今では考えられないような話ですね! 当然 選手たちは 昼間は普通の社会人としてそれぞれの職場で働き 仕事が終わると夕方から夜にグランドに集まり 練習をしていました もちろん どんな有名選手でも ラグビーをすることで お金をもらうことはありません そうしたことを とても尊ぶ風潮が ラグビーの世界にはあったのです しかし 欲望むき出しの資本主義のグローバル化とともに 世界を蹂躙し始めてから そうした変化に対応していくために ラグビーのアマチュアリズムも 変節を余儀なくされはじめ 1995年の第3回ワールドカップで 遂にラグビーのプロ化が解禁されました 徹底してアマチュアリズムに拘っていた 日本のラグビー界も 先んじてプロ化したニュージーランドなどに 圧倒的な点差での敗北を喫するという現実に促され プロ化を認めざるを得ませんでした そして 現在のような盛大な大会が開催されるようになり 各国の代表チームも 4年に一度のワールドカップでの優勝を目指して チームの強化を行うようになってきたのです でも 普段 地域で 一諸に生活しているアマチュア選手が 代表として戦っていた昔を懐かしむ ニュージーランドのオールドファンは プログラムのメンバー表を見て 未だに次のような文句を言っているそうです 「おい! 選手の紹介欄に 所属するプロのクラブチームの名前は 書いてあるけれど 出身地の地域名が書かれていないぞ!」 ね ラグビーって ちょっといいでしょう?(笑)
高橋医院