女性の脂質異常症・糖尿病・高血圧
閉経後の女性に増えてくる 脂質異常症・糖尿病・高血圧について説明します <脂質異常症> @高LDL-C血症 40歳代までは男性のほうが高頻度ですが 50歳以降は男女差が認められなくなり さらに歳を重ねると 女性の方が高値を示すようになります 閉経によりエストロゲンの分泌が低下すると 肝性リパーゼの活性亢進と 肝LDL-C受容体の減少・活性低下により 血中LDL-Cが増加すると考えられています @高中性脂肪(TG)血症 男性は年齢に関係なく TGが高値の傾向がありますが 女性は 閉経にともなうエストロゲンの低下により 50歳代に急増し 最終的には男性より高くなります 中性脂肪が高いと 動脈硬化の主たる原因である small dense LDLが増えるので 余計に動脈硬化のリスクを高めてしまします @低HDL-C血症 女性は男性よりHDL-Cが高値ですが 閉経後には軽度低下します @リスク因子 男性では 食生活 肥満 飲酒の関与が大きい 女性では 閉経が関与します 閉経前の女性は男性より LDL-Cが低く HDL-Cは高い場合が多く これはエストロゲンの作用によりますが 閉経とともにこの傾向は逆転し 50代から一気に LDL-C値が上昇してしまいます @閉経前の脂質異常症 閉経後に比べ頻度が低く 家族性高コレステロール血症 甲状腺機能低下 原発性胆汁性胆管炎などが 原因となっていないか注意する必要があります 治療は 生活習慣改善が中心となり 食生活の改善と減量 運動の励行 禁煙 テレビを見る時間を減らす といったことを行います *不健康な食生活をしている *運動しない *タバコを吸う *アルコールを多量に飲む *肥満 *テレビを見る時間が多い といった生活習慣がある人は ない人に比べて 心血管疾患の発症リスクが有意に高いので 若い頃からそうした生活習慣の改善を 行うことが重要です @閉経後の脂質異常症の特殊性 心血管疾患の発症率は LDL-C値80mg/dLから男女とも増加し始め 120 mg/dLから死亡率が増加します 女性は 閉経後にはLDL-C値が上昇しますが LDL-C値がかなり高値でないと 心血管疾患による死亡が増えないのが 男性と異なる点です またLDL-C値の低下が 男性よりも顕著な動脈硬化退縮作用をもたらし 55歳以上では スタチンによる心血管疾患発症抑制効果が 男性より高いので きちんと治療をすれば予後は良いのです <糖尿病> @女性は閉経後に増える 男性では40歳代で患者数が増え 男性であることが 糖尿病の危険因子とされています 女性では 閉経期を迎えると急増し 糖尿病が強く疑われる人は 50歳代で6.1% 60歳代で12.0% 70歳以上で16.8%に達します 閉経前はエストロゲンが インスリン感受性を高めていますが 閉経でエストロゲン分泌が減少すると 内臓脂肪が増加し インスリン抵抗性が増大し 糖尿病を発症しやすくなります @女性では糖尿病が動脈硬化のリスク因子になる 女性では 合併症の原因となる動脈硬化の進行が男性より早く 特に高齢女性では 糖尿病による 心血管疾患 脳卒中のリスクが非常に大きく 同年代の男性の糖尿病と比べても その傾向が顕著です 男性に比べて女性では 心血管疾患のリスクは44% 脳卒中のリスクは27% それぞれ増加するとされています ちなみに 糖尿病の遺伝は母系遺伝の傾向があり お母さんが糖尿病性の場合は お子さんは要注意です <高血圧> 男性は 30歳代半ばから増え始め 60歳代半ばにピークになり 肥満 脂質異常症が危険因子になります 女性は 40歳までは少ないのですが 50歳ころから急に増え始め 80歳近くまで増加していきます 更年期の前からじわじわ高くなる方と 更年期に急に高くなる方がいます やはり エストロゲンの作用が大きく 血管を拡張させるので 女性は男性に比べ若いころは血圧が低いのですが エストロゲン分泌が減りだすと 血管の柔軟性が低下して 血圧も次第に上がってきます エストロゲンの血圧低下作用は他にもあり 高血圧の原因となる 腎臓のレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を抑制し 腎臓からのNa排泄を促進します ですから 閉経後の高血圧には レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の 関与が考えられますから その系を抑制する降圧薬のARBの効果が期待されます
高橋医院