今日は
女性の肥満 生活習慣病 メタボの特徴
について解説します

<肥満>

生活習慣病 メタボの原因となる肥満は 
男性と女性で趣が異なります

@肥満になる年齢

女性は40代までの肥満の割合は20%以下ですが
50歳以降に増加傾向を示し 
70歳以上で24.7%と最多になります

女性では肥満が50歳以降に増加傾向にあることを示すグラフ

男性では 30代で増加し
以降ずっと30%以上と高い状態が続くのとは
大きく異なります


@皮下脂肪か 内臓脂肪か?

女性は もともと
筋肉量が少なく脂肪量が多いのですが

脂肪の中でも
内臓脂肪より皮下脂肪が多く
高齢者でも皮下脂肪が多い

エストロゲンは
内臓脂肪の蓄積を促す
リポタンパクリパーゼ(LPL)の働きを抑制するので
内臓脂肪は溜めこまず
逆に皮下脂肪は増やすのです

女性は皮下脂肪が多いことを示すグラフ



しかし 
閉経後はエストロゲンの効果が薄れるので
内臓脂肪が蓄積する傾向が認められ
その増加率は男性と同程度まで上がります

エストロゲンが内臓脂肪蓄積を抑制する機序を解説する図
エストロゲン減少により内臓脂肪が増えることを示すグラフ


また 
エストロゲン減少により皮下脂肪が減少すると
皮下脂肪が産生するレプチンの量が低下するので
食欲が抑制されず さらに肥満となってしまいます


一方 男性では
30歳代以降に内臓脂肪がたまりやすくなり
皮下脂肪より内臓脂肪が多い

テストステロンは
内臓脂肪を増やすと言われていますし
内臓脂肪は皮下脂肪に比べ 
アンドロゲン受容体の遺伝子発現量が多いのです

また 男性に多い喫煙は
脂肪量を増やし肥満の形成に関与します


@脂肪分布の男女差の生物学的意義

女性で皮下脂肪が多く 
男性で内臓脂肪が多い生物学的な理由として

オスは
狩りなどで瞬時にエネルギーが必要なことが多いので
余剰な栄養を短時間にエネルギーに変換できる
内臓型脂肪が多く

メスは
妊娠・授乳時に長期保存型栄養として利用できる
皮下脂肪が多い

と推察されています


<やせ>

BMI<18.5の痩せは 
男性5% 女性10.4%で 女性に多い

女性の痩せは有意に増加しており
特に児童期から20代にかけて増加していて
その2~3%には 摂食障害が関与しています

女性の年代別のやせている人の比率を示すグラフ

また 女性では痩身願望も強い

高齢者の痩せも 女性の方が多く
(男性3.9% 女性9.1%)

男女別の年代別のやせている人の比率を示すグラフ

筋肉量減少によるサルコペニアも 
女性に多く起こります

高齢女性でサルコペニアが多いことを示すグラフ

女性は 肥満だけだなく
痩せにも注意する必要があります


<生活習慣病>

肥満と同じで 
男性は30代から生活習慣病になりやすいので
できるだけ早くから
生活習慣改善に努めるべきですが

女性は 
更年期を過ぎると一気に頻度が増し
同年代の男性より発症リスクは
むしろ高くなります

女性は閉経後に生活習慣病が増えることを示す図

女性はこのことを意識して
更年期前から
生活習慣改善や体重減少に努めるべきです

また
糖尿病の方は 
心疾患により死亡する危険性がより高いのですが
特に男性よりも女性の方がリスクが大きい

女性は糖尿病で心疾患で死亡することが多いことを示すグラフ

女性は高年齢になって発症するため
高血圧などの糖尿病以外の動脈硬化の危険因子も
併せ持つことが多く
複数リスクファクターが重なることが
原因と考えられています

閉経後には 
複数の生活習慣病を併発する可能性もあるので
より一層の注意が必要になります


<メタボリックシンドローム>

男性は22.4% 女性は10%がメタボに該当し
その差は2倍以上ですが

男性は
30歳代で有病率が上昇し始め
40歳代以降の年代ではほぼ横這いなのに対し

女性は
肥満や生活習慣病と同様に 
50歳代から頻度が急に増えます

女性は50歳代からメタボの頻度が急に増えることを示すグラフ

またメタボリックシンドロームは 
心血管系の動脈硬化を誘導しますが

心血管系疾患を発症し死亡する人の割合は
男性よりも女性の方が高いので
女性のメタボはより真剣に対処する必要があります


<アデイポカイン分泌の性差>

肥満 メタボの病態に関与するのが
脂肪細胞が分泌するアデイポカインですが
その分泌には性差が見られます

@レプチン

食欲を抑制してくれるレプチン
内臓脂肪より皮下脂肪が多く産生するので
同じBMI 脂肪組織重量でも 
血中濃度は男性より女性で高くなります

女性はレプチン分泌量が多いことを示すグラフ

また 
エストロゲンにより分泌促進され
アンドロゲンにより分泌抑制されます

ですから
閉経前には
食欲を抑制し肥満防止に働いてくれていますが

閉経後には 
エストロゲンも皮下脂肪も減少して
レプチンの分泌が減少してしまうので 
食欲が増して太ってしまいます

女性は閉経後にレプチン分泌量が減ることを示すグラフ


@アデイポネクチン

善玉アデイポカインのアデイポネクチンも
皮下脂肪からの産生が多いので
女性の方が血中濃度が高いのですが
レプチンと異なり 
閉経前と閉経後で差は見られません

アデイポネクチンの分泌には
エストロゲンは関与しないのかもしれません

高橋医院