インスリンの脂肪への作用
インスリンの脂肪組織への作用について説明します インスリンは 脂肪組織に対して *血中から脂肪細胞への グルコースの取り込み促進 *脂肪細胞内での グルコースから中性脂肪への合成促進 *脂肪細胞内での 中性脂肪の分解抑制 の3つの作用を行います つまり 脂肪細胞内に中性脂肪を貯めやすくするわけで インスリンが 「太るホルモン」と呼ばれる所以です このメカニズムを 詳しく説明しましょう <中性脂肪の代謝を仕切る2種類のリパーゼ> 中性脂肪の代謝は 2種類のリパーゼ(LPL・HSL)と呼ばれる酵素 によって行われます @リポタンパク・リパーゼ(LPL) 血管内皮細胞の表面に存在し カイロミクロンやVLDLに含まれる アポC-IIにより活性化され 血中の中性脂肪を 脂肪酸とグリセロールに分解し 分解で出来た遊離脂肪酸を 脂肪細胞内に取り込ませやすくします この作用により 血中の中性脂肪は下がり 脂肪細胞に取り込まれた 脂肪酸とグリセロールは 中性脂肪に再合成されて 脂肪細胞内で貯蔵されます この貯蔵された中性脂肪こそが 皮下脂肪や内臓脂肪の正体です @ホルモン感受性リパーゼ(HSL) アドレナリン ノルアドレナリンなどの ホルモンの作用により 活性化する酵素で LPLと異なり 脂肪細胞内に存在します ホルモンで活性化されると 脂肪細胞内の中性脂肪を 遊離脂肪酸とグリセリンに分解し 血中に送り出すので 血中の中性脂肪は上がります <インスリンのLPL HSLへの作用> インスリンは *LPLを活性化し *HPLを抑制します つまり 脂肪組織の血管内皮細胞の LPL活性を上昇させるので 脂肪細胞内に中性脂肪を貯めやすくし 脂肪組織のHPL活性を抑制するので 脂肪細胞内の中性脂肪分解が 抑制されます インスリンが太るホルモンなのは こうした脂肪細胞のLPL HSLへの 相反した作用により 脂肪細胞内に中性脂肪をためやすくするからです また インスリンは 脂肪酸の 合成を促進し 分解を抑制し コレステロールの合成を促進します このように 血糖値を的確に制御するインスリンも 脂質代謝に関しては 必ずしも優等生とは言えない立場にありますし 脂肪組織に中性脂肪を蓄えさせて 太らせてしまうホルモン という一面もあるのです
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