中性脂肪にも注目を!
健康診断の結果表の脂質の欄には コレステロールと中性脂肪が 並んでいます コレステロールは 善玉とか悪玉とか 肉や揚げ物が良くないとか 動脈硬化を悪くするとか さまざまな情報がよく知られていますが 中性脂肪(トリグリセライド:TG)は コレステロールに比べると 情報量が少ない 医者も 患者さんのTG値がすごく高くても 「前の日に焼肉食べ放題でも行ったのではありませんか?」 程度ですましてしまうこともあったります でも それではマズイ! 今日から 中性脂肪(TG)の怖さについて説明します <中性脂肪は食事の影響を受けやすい> TGは脂質のなかで いちばん食事の影響を受けやすく LDL-CやHDL-Cに比べると 食後の変動がとても大きいのが特徴です LDL-Cの本体は 肝臓で作られるコレステロールなので 食事の影響はあまり受けず その値はほぼ一定で LDL-Cが変化したHDL-Cも同様です しかし TGは食事の影響を強く受けます <食事後の中性脂肪の体内動態> 食物中のTGは小腸で吸収され 小腸の細胞内で 内部にTGをたくさん含むリポタンパクの カイロミクロンが形成されます カイロミクロンは 体内のさまざまな組織にTGを配って回ります TGは 脂肪酸とグリセロールから構成されていて カイロミクロンがたどり着いた臓器の 血管内皮細胞に存在する リポプロテインリパーゼ(LPL)という酵素の働きで カイロミクロン中のTGが分解され 構成成分の脂肪酸が組織に配られます カイロミクロンは 徐々にTGの含有量を減らしながら カイロミクロンレムナントに変化します ということで 食後には 血中でTGを多く含む カイロミクロンとカイロミクロンレムナントが 増加しています <食後中性脂肪値?> さて TGへの食事の影響について ダラダラ述べている理由を これから説明します 健康診断でも通常の受診時でも 採血は食後でなく 一定時間 絶食したあとの空腹時に行います 健診などでは 前の晩9時以降は食べないようにと 注意されるでしょう しかし通常の生活で 12時間以上も空腹状態が続くのは 朝起きたときくらいで 健康を気づかって 1日3食しっかり規則的に食べている方は 1日のうちで 空腹状態よりも食後状態の方が長いことは事実です ですから 例外的な長時間絶食後の空腹時採血だけでなく 食後での採血時の値も検討した方が より現実的では? という意見があります こうした意見が出てくる背景となったのが 食後高血糖の問題です 既に解説しましたが 空腹時血糖値が基準範囲内にあっても 食後血糖値が高い方は いずれ本格的な糖尿病になられるリスクが高い 「かくれ糖尿病」の状態で そうした方は 充分に注意して経過観察しないといけませんが 空腹時血糖値が基準範囲内で HbA1cにも異常がない場合は 見逃されてしまう可能性があります このような理由から 空腹時血糖だけでなく 食後血糖の重要性も認識されていますが 同じようなことが 脂質異常症でもあることが明らかにされました どうして文頭で 食事のTGへの影響をしつこく説明したか 勘が良い方は 話の流れが見えてきましたね?(笑) この続きは次回 詳しく説明します ちなみに 肥満との関係が強いのは 空腹時の中性脂肪値ではなく 食後の中性脂肪値だそうです ほらね 続きが読みたくなったでしょう?(笑)
高橋医院