脂質異常症で動脈硬化になる理由
血中LDL-C値が高いと 動脈硬化が進むことを説明しましたが そもそも どうして動脈硬化になるのでしょう? <血管壁が肥厚するメカニズム> 血液が流れる血管は 内側から外側に向けて *血管内皮細胞 *内膜 *中膜 *外膜 からなる層構造になっています このうち動脈硬化に関与するのは 血管内皮細胞と内膜です 正常な状態では いちばん内側の血管内皮細胞が 血管機能の恒常性を維持するために 重要な役割を担っています しかし何らかの原因で 内皮細胞に機能障害や傷害が起こると 内皮細胞上に血球細胞が 接着する分子(接着因子)が発現してきて 血管のなかを流れている白血球や血小板が 内皮細胞に接着して 内皮細胞の透過性亢進が起こり 炎症細胞の血管壁への浸潤が増加します さらに 血小板から血小板由来増殖因子が産生され 内膜を構成する平滑筋細胞の増殖が起こり 内膜にこぶ(プラーク)が形成されます そうして 血管の壁が厚くなっていきます こうした過程が徐々に進行していって 動脈硬化になってきます プラークがさらに大きくなって破れると そこに血小板などが集まってきて血栓ができ この血栓によって血管がつまり 狭心症や心筋梗塞になります <酸化LDL> 高LDL-C血症そのものが この過程に悪影響を及ぼします 高LDL-C血症は 内皮細胞の機能低下をもたらし 透過性を亢進させ LDLなどの内膜への蓄積を増加させます 血管内膜には抗酸化物質が存在しないので LDLは活性酸素によりすぐに酸化されて 酸化LDLになり 酸化LDL はマクロファージに取り込まれ 取り込んだマクロファージはその場に集積し 泡沫化を引き起こし これにより さらに内膜の肥厚・プラーク形成が進みます 上述したように プラークが破けて炎症が起こると 局所での酸化ストレス状態が亢進し さらに酸化LDLが形成されるという 悪循環が起こってしまいます <超悪玉コレステロール・sdLDL> さらに最近では 酸化LDL以外の動脈硬化促進因子として 超悪玉コレステロールの sdLDL が注目され sdLDL値が高い人ほど 心筋梗塞や狭心症の発症リスクが高いことが 示されています sdLDLは 高中性脂肪血症やメタボリックシンドロームの人で高く 耐糖能異常を有する人では LDL-Cが正常値でも sdLDLが高い方がいます sdLDLは 小さいだけに血管内膜に侵入しやすく 酸化され酸化LDLになりやすいので 動脈硬化の直接的な原因となりやすい とても危険なLDLです また 通常のLDLと異なりLDL受容体に結合しにくいので 血中や血管壁に滞在する時間が長くなり それだけ酸化されやすくなります さらに sdLDLが増えるとHDLが減少するので余計に厄介です <動脈硬化を促進する因子> 動脈硬化の促進には LDL以外の因子も関与します *男性は45歳以上 女性は55歳以上の加齢 *動脈硬化による病気になった家族の存在 *高血圧の存在 *糖尿病の存在 糖尿病単独でも冠動脈疾患の発症率が2.6倍に増加します *低HDL血症 *高尿酸血症 *肥満 特に内臓脂肪型肥満は 高血圧 高脂血症 糖尿病を併発する *喫煙 20本で心臓病リスクが50~60%増え HDL低下 LDL酸化変性が促進されます *運動不足 *ストレス これらのリスク因子の数が増えるほど 心筋梗塞・狭心症の発症リスクはさらに増えます ですから LDL-C値が高い方は 肥満 高血圧 糖尿病 高尿酸血症などにならないように 充分に注意する必要がありますし 逆に それらを合併している場合は より厳しいLDL-C値の管理が必要になります 脂質異常症で動脈硬化が進行する過程を イメージしていただけたでしょうか?
高橋医院