喘息の症状 診断 検査について解説します

<症状>

@典型的な症状 

*喘鳴 息切れ 咳 胸部絞扼感 などが 
 変動的に出現します

喘息の典型的な症状を示すイラスト
 
*夜間 早朝に増悪する傾向があります

夜間 早朝に増悪する傾向があることを示す図

*感冒 運動 アレルゲン暴露 
 天候の変化 笑い 大気汚染 強い臭気
 などで誘発されます 


@症状の強度

*喘鳴
急ぐ 動くと苦しいが動作はほぼ普通
SpO2 96%以上

*軽度
苦しいが横になれる程度で 動作はやや困難
SpO2 96%以上

*中等度
苦しくて横になれない
動作はかなり困難でかろうじて歩ける
SpO2 91~95%

*高度
苦しくて動けず 歩行不能で会話も困難
SpO2 90%以下

*重篤
呼吸減弱 チアノーゼが見られ
会話 体動ができない
SpO2 90%以下

喘息の症状の強度についてまとめた表

@喘鳴を伴う呼吸困難感が発作性に出現します
 
*ウイルス 感染 運動 冷気などの
 さまざまな誘因により症状が誘発されます

*症状は
 1日中出ているか 夜間や朝にだけ出るか
 温度差や環境要因で誘発されるか
 がポイントになります
 
*季節性 日内変動が見られ
 季節の変わり目や 
 夜間 早朝に悪化しやすいのが特徴です
 
*症状がないときは 全く安定しています 


@成人の喘息を疑うポイント 

*アレルギー性鼻炎 薬剤 食物アレルギーの既往

*アトピー素因 喘息の家族歴の有無 

*喫煙や常用薬剤の有無

*住環境 ペット飼育状況の変化

*職場環境・勤務動態と症状出現の関連の有無 


<診断>

@症状

上記のような
発作性の呼吸困難 喘鳴 胸苦しさ 咳の反復
といった症状が診断の目安になります

@気流制限が可逆性である

*短時間作用性吸入β2刺激薬の吸入で
 呼吸機能検査の値が改善する

*治療や自然経過で症状が変動する

のが特徴ですが

罹患期間が長期に及ぶと 気道のリモデリングが生じて
こうした可逆性はなくなります


@気道過敏性の亢進を認める

症状がなくても 
過敏性が亢進していることがあり
弱い刺激でも気道収縮反応が起きます

暖かいところから寒いところに移動すると
症状が出ることが多いのも特徴です

@気道炎症の存在

後述する
*喀痰好酸球数の数 比率(3%以上)の増加
*血中好酸球数(通常は220~320/μl)の増加
*FeNO
などにより評価します


@アトピー素因の存在

*血清総IgE高値
*環境アレルゲンに対する特異的IgE抗体の存在
などにより評価します


@他の疾患の除外

心不全 気管支結核との鑑別が重要で
COPD併存の有無のチェックも必要です


<検査1・呼吸機能の評価>

@スパイロメトリー
スパイロメトリー検査を行っている様子

*喘息の特徴である
 変動性の気道閉塞を検出します

*気道閉塞時には 1秒量 1秒率が低下しますが
 1秒率は70%未満には低下しません

*安定期には 気道閉塞は認めません

*ステロイド投与による改善が15%より大きいと
 ほぼ100% 喘息と診断できます

喘息の人のピークフロー

@ピークフロー

*気流閉塞の程度を示す指標です

*日内変動が20%以上の場合は 可逆性ありと判断します

*過敏性 炎症の程度も反映します

@経皮的動脈血酸素飽和度 SpO2

簡単な機械に 手の指を入れて測定します

経皮的動脈血酸素飽和度測定を行っている様子

軽度なら正常ですが
進行により低下していきます


<検査2・気道炎症の評価>

@呼気中一酸化窒素濃度 FeNO

呼気中一酸化窒素濃度 FeNOについて説明する図

気道炎症の程度を評価でき
診断 治療効果の指標にもなります

*正常値 15ppb
*上限値 37ppb

20(小児)25(成人)ppb以上であれば
喘息の可能性が考えられ

35(小児)50(成人)ppbが
喘息診断の目安になります

FeNOの値と喘息診断について説明する図表

喀痰好酸球数 気道粘膜の好酸球浸潤と
正の相関を示します

気道に好酸球等が浸潤して炎症が起こると
IL-4 IL-13などのサイトカインが産生され
それらの影響によりNOを産生する iNOSの発現が亢進して
呼気中のNO産生が増すためです

喘息でFeNOが増加する機序を示す図

吸入ステロイドにより
速やかに容量依存性に改善し
症状 1秒量 気道粘膜好酸球数より早く低下します
 
特に高値例では有効で
47ppbくらいだと改善が期待できます


鼻炎・副鼻腔炎などの存在により影響を受け
アレルギー性鼻炎では約20%上昇します

喫煙者は
タバコ煙のNOがNOS活性を低下させるので
低値を示すので要注意です


@喀痰中好酸球比率

喘息では3%以上に増加し
増加は 発作の数週間前にみられます

ステロイド反応性の予測因子になり
治療中は3%未満の維持が目標になります

好酸球の像

@血中好酸球数

喀痰好酸球数比率が3%以上では
220~320/μlを示し

300~400/μlだと
増悪 コントロール不良のリスクとなります

喀痰より 感度 特異度は低いです

好酸球数高値と1秒率の低下との相関がみられ
IL-5の量を反映します

@IgE

アトピー型では
*血中総IgE値
*特定アレルゲンに対する特異的IgE抗体
が増加します

問診により推定されたアレルゲンに対する
特異的IgE抗体の存在の有無が
診断の手助けになります

IgE抗体について説明する図


@血中ペリオスチン値

ペリオスチンは
IL-4 IL-13などで発現誘導される
肥厚した気管支基底膜の構成成分で
血中バイオマーカーとして注目されています

ペリオスチンについて説明する図
喘息でペリオスチンが増加することを示すグラフ

 

高橋医院