喘息とは
昨年末にCOPDについて解説したので 同じ呼吸器疾患で 患者さんの数が多い 気管支喘息について説明します <喘息の特徴> 喘息は *気道のアレルギー性慢性炎症 *気道の過敏性 が基盤に存在し *呼吸器症状を出現させる 気管支平滑筋の収縮による気道狭窄が 可逆的に繰り返し出現する といった特徴がある疾患です
その特徴は @気道狭窄症状が変動性を示す 発作時には気道が閉塞して 喘鳴 咳 痰 呼吸困難が生じ COPDと同じ気流制限の状態になります しかしCOPDと異なり 発作がないときには 気道は閉塞していません つまり 気道閉塞の程度は 時々刻々変化し (=気道変動性) 治療により改善しますし 自然に軽快することもあります (=気道可逆性) これが喘息の症状の特徴です @ベースに気道過敏性がある 喘息で見られる気道閉塞は 気道過敏性をベースにして起こり さまざまな内的・外的因子が 閉塞の誘導因子になります @慢性炎症が病態の基盤にある 喘息の患者さんの気管支には 好酸球 好中球 リンパ球 マスト細胞などの 炎症細胞の浸潤がみられ それらによる慢性炎症には 気道上皮細胞 線維芽細胞 気道平滑筋細胞などの 気道構成細胞や サイトカインなどのさまざまな液性因子 が関与します
<喘息のさまざまな病型> 喘息には 多様な病型が混在しています @アトピー型 非アトピー型 喘息は アトピー型 非アトピー型に大別されます アトピー型では アレルゲン特異的IgE抗体が検出されます IgE抗体については アレルギーの解説で詳しく説明しましたので 参照してください また 小児はアトピー型が 大人は非アトピー型が 多く認められます 両者の間で 気道の炎症像 過敏性の程度に差はありませんが 誘因や増悪因子は異なります @女性に特徴的なタイプもあります 以前にアレルギーの解説で紹介したように 中高年の女性の喘息には 肥満が大きく関与します <疫学> @呼吸器疾患でいちばん患者さんが多い病気です 成人の有症率は10.4%で 有病率は4.2%です そのうち医療機関を受診 治療しているのは 約10%の100万人前後と言われています @性別 14歳までは男性優位 15歳以上は女性優位で 女性では 肥満合併が多く 重症化しやすいのが特徴です @年齢 2~3歳がピークですが 小児では減少傾向にあり 一方 成人は増加傾向で 最近は中高年発症が多く見られます @発作による救急外来受診 入院 ここ20年で大幅に減少しており 喘息死も1990年代から順調に低下しています 死亡例の9割は 65歳以上の高齢者です 気道の慢性炎症が病態の本態であることがわかり 吸入ステロイド薬(ICS)を中心とした 抗炎症療法が広まったことにより 予後の改善がみられています <発症の危険因子> @個体の要因 *遺伝的要因 家族歴があることなどから 遺伝的要因があることは事実ですが 網羅的遺伝子解析(GWAS)では 単一の遺伝因子の関与は少ないことが明らかにされ 環境因子を含む多数の因子の相互作用により 発症すると考えられています *アトピー素因 アトピー型喘息の病因であるアレルゲン特異的IgE抗体を 産生しやすい体質で 家族集積性にみられます 血清総IgE値は 年齢 性別に関わらず喘息と強く関連します *気道過敏性 その存在そのものが発症の危険因子で 複数の遺伝因子が関与すると推察されています *性差 小児では男児が 成人では女性が それぞれ優位に発症します *肺の低発育 *肥満 以前にも紹介しましたが 肥満が病態形成に関わる非アトピー型の喘息も存在します @環境の要因 *アレルゲン暴露 患者さんの多くは 吸入アレルゲンに感作されていて アレルゲンへの暴露により 気道の慢性炎症が誘導されます 3歳までの感作が原因となるので 発症予防には アレルゲンの回避が大切です *呼吸器感染症 乳幼児期の ライノ RSウイルス感染 細菌感染などが 原因になります *喫煙 喫煙は 気道上皮細胞からのTSLP産生を誘導して 喘息の発症に関わります 妊娠中の喫煙は 子供の発症リスクを喫煙量依存的に増加させるので 両親 家族の禁煙が推奨されます *大気汚染 PM10 PM2.5 デイーゼル排気微粒子などが 小児の非アレルギー性喘息に関与します *鼻炎 アレルギー性鼻炎 副鼻腔炎は 小児でも成人でも アトピー素因と独立した危険因子になります *食物 人工乳は母乳よりリスクが高く 特に子供がアトピー素因がある場合は要注意です <増悪の危険因子> *過去の増悪の回数と重症度 *現在のコントロール状態の不良 *不適切な治療薬の使用 アドヒアランス不良 *喫煙 *大気汚染 ペットなどの環境アレルゲンへの暴露 *併存症の存在 ・肥満 ・鼻炎 副鼻腔炎 ・食物アレルギー ・精神疾患 ストレス ・GERD など *妊娠では約20%で増悪します これらが増悪の危険因子とされています
高橋医院