今日は アレルギー反応を起こす
IgE抗体と細胞群について説明します

<IgE抗体>

Bリンパ球が産生する抗体には
IgA IgD IgG IgM IgE
の5種類があり
そのなかの1種類です

IgE抗体は
他の抗体に比べ量的にはとても少ないのですが
アトピーやアレルギー疾患では増えています

@高親和性IgE受容体への結合

肥満細胞 好塩基球の表面に存在している
高親和性IgE受容体のFcεRIに結合し

そこに特異的抗原のアレルゲンが結合すると
複数のFcεRIが架橋して
細胞が活性化され
アレルギー反応が開始されます


アレルゲン IgE抗体 FcεRIの結合で細胞が活性化される過程を示す図




@産生される機序

IgE抗体が作られる過程には
IL-4などのサイトカインを産生するTh2細胞や
後述する自然リンパ球が関与します

IgE抗体が作られる過程を示す図


@発見者は石坂先生

ちなみにIgE抗体は
1966年に日本人の石坂公成 照子博士ご夫妻により
発見されました

ご自分たちの背中に
アレルゲンを注射されて実験され
苦労して発見されたそうです

石坂公成 照子博士ご夫妻の写真


石坂先生は世界的に著名な免疫学者で
特に日本人のアレルギー専門家には
神様のように崇められていますが
残念なことに今年亡くなられました

ご冥福をお祈りします


<肥満細胞・マスト細胞>

もともとは 感染防御に関わっている細胞です

前述したように
アレルゲンとIgEが肥満細胞に
結合すると活性化され

細胞内の顆粒から 
ヒスタミン ロイコトリエンなどの
化学物質(ケミカルメデイエーター)を放出し
これらの作用によって 
くしゃみ 鼻水などのアレルギー症状が起きます

肥満細胞が化学物質(ケミカルメデイエーター)を放出することを示した図


ヒスタミンは 
肥満細胞から放出される化学物質の代表格で
血管透過性亢進 気管支平滑筋収縮 粘液分泌作用
などの作用を介し
かゆみ 鼻水 くしゃみや 
皮膚では蕁麻疹を起こします

抗アレルギー薬の多くは
肥満細胞からのヒスタミンの放出を抑えることで
アレルギー症状を和らげています

抗アレルギー薬の作用の仕方を示した図



また 肥満細胞の活性化により
細胞膜でのアラキドン酸の生成と代謝が亢進し
代謝物のロイコトリエン 血小板活性化因子(PAF)
プロスタグランジン トロンボキサンA2などが
細胞膜から遊離されます

PAFロイコトリエンB4
好酸球や好中球などの炎症細胞を
反応局所に呼び寄せ
アレルギー反応に関与します

肥満細胞からさまざまな物質が放出されることを示す図



肥満細胞は IgE抗体以外にも

*ATP 尿酸などのDAMPs
(傷害された生体細胞から漏れ出した成分)

*IL-33 などのサイトカイン

*HSP70
(熱反応により誘導される生理活性物質)

などにより活性化され
Th2の炎症局所への誘導
Th2サイトカインの産生などを促進して
アレルギー反応を増幅します

最近では

*免疫反応を抑制するTregと
 OX40/40Lを介して相互作用する

*自然リンパ球のICL2の活性化を制御する

といった新たな免疫作用を
有することも明らかにされています


<好塩基球>

肥満細胞と似ています

*抗原提示細胞として機能し 
 ハプテン ペプチドAgを抗原提示する

*IL-4を産生し
 炎症を抑制するM2マクロファージ分化を誘導する

*Th2分化を誘導する

といった作用を有し
それらを介してアレルギー反応に関与しています

好塩基球のアレルギー反応への関与を示す図



<好酸球>

寄生虫を攻撃する役割を持つ細胞で 
IL-5により分化 活性化が誘導されます

アレルギー疾患があると局所に集積して
顆粒内に存在する
MBP ECP EPO EDNなど特異顆粒タンパクを分泌します

好酸球がアレルギー反応で特異顆粒タンパクを分泌することを示した図



これらの物質は
元来は寄生虫駆除に利用されていましたが

アレルギー反応では
上皮細胞の傷害作用を発揮して
病態形成に関与してしまいます

また

*さまざまなサイトカインを産生する

*炎症を惹起するM2マクロファージの分化誘導

*Th2の分化誘導

といった免疫作用も有しています


<サイトカイン>

サイトカインは
主に免疫細胞から産生されるホルモン様物質で
免疫細胞の分化 機能発現促進など
さまざまな作用を発揮します

書き手が大学院で免疫の勉強を始めた頃は
8種類くらいしかありませんでしたが
今や50種類以上同定されています

アレルギー反応に関わる代表的なサイトカインには

*IL-4 : IgE産生を介して 肥満細胞を活性化する

*IL-5 : 好酸球の分化・活性化を誘導する

*IL-13 : 好酸球を局所に集積させる

などがあります

アレルギー反応に関わるサイトカインについてまとめた図



<アレルギーに関与するT細胞>

@Th2

アレルギー反応に関与するメインサブセットです

IL-4を中心としたサイトカインにより分化誘導され
アレルギー反応に寄与するTh2サイトカイン(IL-4 5 13 25など)
を産生します

Th2リンパ球がTh2サイトカインを産生してアレルギー反応を起こすことを説明した図


@Pathogenic Th2

最近は Pathogenic Th2・病原性記憶Th2細胞
というサブセットが新たに同定され
アレルギー反応との関連が注目されています

アレルギー炎症反応の慢性化に関わる
メモリー型のTh2リンパ球で
長期間生存します

抗原刺激により誘導されますが 
明確な抗原特異性はありません

IL-4 IL-13以外に
IL-5 IL-17を大量に産生し

アレルギー反応が生じるときに上皮細胞が産生する
IL-33 IL-25の受容体のST2 IL-17RBを
発現しているのが特徴です

Pathogenic Th2の働きを説明した図

高橋医院