喘息と肥満
アレルギーの解説シリーズの最後に
喘息と肥満の関係について説明します
肥満は
糖尿病や脂質異常症だけでなく
アレルギー疾患の喘息とも
関連するのですよ!
<肥満だと喘息になり易くなる>
喘息の発症率は
BMIに比例して増加することが
明らかにされています
アメリカでは
BMIが30を超えると
喘息発症率は2倍になり
日本では
軽度のBMI上昇でも
喘息有病率が増しています
中高年の肥満者 特に女性で著明で
肥満が原因と思われる喘息は
重症喘息の10%を占めています
また
肥満は喘息の増悪因子でもあります
一方
肥満が改善すると 喘息は改善します
10%程度の体重減少で
呼吸機能 症状が改善しますが
睡眠時無呼吸 胃食道逆流などの
肥満合併症の治療も必要です
喘息患者は
運動不足になり易く肥満になり易いので
肥満と喘息が影響しあうと推察されています
<肥満が関連する喘息の特徴>
肥満は
アトピー IgE上昇 アレルゲン感作と相関しないので
肥満関連の喘息は非Th2型と考えられます
また 肥満が原因の喘息は
*女性が多い
*発症年齢が高く 小児より成人で多い
といった特徴がみられます
<どうして肥満だと喘息になり易いのか?>
@肥満は呼吸機能に悪影響を及ぼします
肥満者は胸腹膜壁が厚く
腹腔内の脂肪沈着により
横隔膜が上方に偏位するため
肺が下から圧迫されて
機能的残気量 1回換気量が低下することが
指摘されています
@アディポカインの関与
肥満で生じる
脂肪細胞のアディポカイン分泌異常の関与が
推定されています
*レプチン
肥満で分泌増加していて
レプチン濃度の上昇と
喘息症状の重症度 呼吸機能低下
末梢血や喀痰中の好酸球数が
正の相関を示します
レプチンは
好酸球のアポトーシスの抑制
血中IgE 増加
気道過敏性亢進
などをきたすため
そうした機序により
喘息の病態形成に関わると推察されています
*アディポネクチン
代表的な善玉アディポカインの
アディポネクチンは
気道過敏性を減弱させ炎症を抑制します
肥満では分泌が低下しており
喘息発症に関与すると考えられます
*悪玉アディポカインのPAI-1 TNF-α
PAI-1 は
肥満の喘息患者さんで高値を示します
プラスミノーゲンアクチベーターを抑制して
気道壁の細胞外基質蛋白の沈着を増やし
さらにフィブリン沈着を促進させることにより
気道リモデリングを引き起こし
喘息発症に関わると考えられています
TNF-α は
脂肪細胞やマクロファージから分泌され
インスリン抵抗性の悪化や
炎症性サイトカインの産生を誘導します
TNF-αの作用で
脂肪組織へのマクロファージ浸潤が増加し
慢性炎症が惹起され
炎症により気道過敏性亢進のリスクが高くなり
喘息が発症し易くなります
@自然リンパ球
自然型アレルギーへの
自然リンパ球ILC2の関与の解説をしましたが
肥満関連の喘息では
別のタイプの自然リンパ球のILC3が
IL-17の産生を介して
病態に関わると考えられています
肥満で増加する脂質(
脂肪酸 コレステロールなど)により
炎症を誘導する
M1マクロファージが活性化され
M1マクロファージが産生するIL-1βが
肺内にIL-17Aを産生するILC3を誘導 集積させ
気道過敏性が誘導され喘息症状が現れます
<肥満による喘息の治療>
通常の喘息に効果を示す吸入ステロイドが
効きません
上述のレプチン TNF-αなどが
ステロイドへの耐性発現に関与しているためと
考えられています
抗ロイコトリエン薬 抗コリン薬は有効なので
併用が推奨されます
ということで
これでアレルギーに関する解説は終了します
さて 今年のお勉強ブログも今日が最後です
火曜~木曜にアップしている
病気や体の仕組みに関するお勉強ブログは
「難しくてよくわからないよ!」
というご批判も多く
書き手の筆力不足を申し訳なく思っています
ただ 病気に関するブログを読まれて
相談に来られる患者さんも少なくありません
そういう時はちょっと嬉しいですし
同時に責任も感じます
書き手は酔狂なことに
お勉強好きなので(苦笑)
自己満足的に書いてしまいがちですが
今後も最新の知識を勉強し続けて
その内容をわかりやすく解説できるように
心掛けたいと思います
今後も興味あるテーマについて
解説していきますので
お付き合いいただけると幸いです
年明け第一弾は
皆さんお悩みの ”アレ” がテーマですので
ご期待ください!
高橋医院