アレルギーの治療
アレルギー疾患の
治療について説明します
<アレルゲンの回避 除去>
治療の大原則は
IgE抗体を作らせないように
アレルゲンを回避・除去することです
@室内ダニの除去
*部屋を清潔にして
*こまめに床の掃除 寝具の洗濯を行い
*湿度は上げ過ぎず50%程度
室温は20~25℃に保ちます
@スギ花粉の回避
*花粉情報に注意して
飛散が多いときは外出を控える
*マスク メガネの着用
*毛織物コートを着ない
*帰宅時に 衣服 髪をよく洗う
*洗顔 うがい 手洗い 鼻をかむ
*窓を閉める 換気は最小限に
*布団 洗濯物は外干ししない
*こまめな掃除 特に窓際をきれいに
などを励行します
@ペット抗原の回避
*できれば飼育を止める
*寝室に入れない
*ペットを清潔に保つ
*カーペットを止めてフローリングに
*通気をよくして 掃除を励行
*埃の立ちやすい場所は
拭き掃除のあとに掃除機をかける
などを励行します
<抗アレルギー薬>
実際の治療では
抗アレルギー薬が処方されます
抗アレルギー薬は
下図に示されるように
*ケミカルメデイエーター合成・遊離阻害
*ヒスタミン受容体拮抗
*Th2サイトカイン合成阻害
*生物製剤(人工抗体)による
IgE サイトカインなどの抑制
といったさまざまな作用点を有しています
@ケミカルメデイエーター遊離抑制薬
肥満細胞等から分泌され
アレルギー症状を引き起こす
ヒスタミン ロイコトリエン
血小板活性化因子(PAF)
プロスタグランジン トロンボキサンA2
などの遊離を抑制します
*トロンボキサンA2合成阻害薬 拮抗薬
トロンボキサンA2は
気道過敏性 鼻閉に関与するので
合成阻害薬は
気管支喘息 アレルギー性鼻炎の
鼻閉症状に有効です
*ロイコトリエン受容体拮抗薬
ロイコトリエンは
気道収縮 血管透過性亢進
気道分泌亢進作用があるので
受容体拮抗薬は
気管支喘息 アレルギー性鼻炎の
鼻閉症状に有効です
@ヒスタミンH1受容体拮抗薬
第2世代の薬は
ヒスタミンだけでなく
他のケミカルメデイエーター遊離抑制作用も
有します
@Th2サイトカイン阻害薬
Th2細胞からの
IL-4 IL-5の産生を抑制する薬で
気管支喘息 アレルギー性鼻炎 アトピー性皮膚炎
に有効です
効果発現まで
2~4週間かかります
<ステロイド>
抗アレルギー薬の効果が不充分なときは
ステロイド(グルココルチコイド)薬が用いられます
ステロイドは
強力な抗炎症作用 抗アレルギー作用を
有しています
注意すべきは副作用で
*血圧上昇
*耐糖能障害
*易感染性
*骨粗鬆症
*筋力低下
*消化性潰瘍
*精神症状
*ムーンフェイス
*中心性肥満
*白内障
*ニキビ
などの さまざまな副作用があります
長期にわたりステロイドを継続使用する場合は
副作用対策を行う必要があります
@鼻噴霧ステロイド
花粉症などでよく使われますが
長期連用により効果が上がり
重症例にも効果が期待できます
<免疫療法 減感作療法>
最近 注目されているのが
免疫療法 減感作療法です
自然経過を改善させる唯一の治療法で
2~3年以上の長期の治療期間が必要ですが
効果は長期間持続します
@皮下免疫
皮下にアレルゲンを注射する治療で
薄い濃度から始めて
抗原量を増やしていきます
1か月に1回のペースで
3~5年間行います
アナフィラキシーショックに注意が必要です
@舌下免疫
アレルゲンを経口投与します
2014年にスギ花粉症
2015年にダニ通年性アレルギー性鼻炎に
保険適応されました
患者さんは12歳以上でないとダメで
毎日1回 液剤は2分間 錠剤は1~2分間
それぞれ舌下に保持します
アレルゲン量は週単位で徐々に増加させ
最低2年以上
3~5年の長期にわたる治療が
推奨されています
寛解率は
1年目2.3%
2年目17%と報告され
80%で効果を認めますが
15%は効果を認めないようです
副作用は
全身性副作用はなく
局所反応(口腔内の腫れ かゆみ)のみですが
数時間で自然に回復します
作用機序としては
*肥満細胞 好塩基球 好酸球の
活性化 機能の低下
*制御性T細胞の分化誘導 局所への誘導
*IgEの産生低下
*抗原特異的Th2の減少
などが推察されています
<生物製剤>
これまで説明してきたように アレルギー反応は
*IgE抗体
*IL-4 IL-5 IL-13などのTh2サイトカイン
*TSLPなどの上皮性サイトカイン
などの種々の物質により病態が形成されますが
生物製剤は それらの物質の働きを阻害する
人工的に作成された抗体です
最近は
IgE IL-5 IL-4 IL-33などを抑制する抗体が
主に重症の喘息症例に使用され
良好な成績が得られ始めています
これらの生物製剤は
毎日でなく4~8週ごとの投与間隔で
効果を発揮します
@オマリズマブ 抗IgE抗体
IgE抗体が
マスト細胞等の細胞表⾯に結合する部分のFCε3
に対する抗体で
⾎中のIgE IgE受容体 IgE産⽣を
抑制します
60%の喘息患者さんに有効で
慢性蕁麻疹にも有効とされています
@メボリズマブ 抗IL-5抗体
好酸球抑制効果により
喘息の急性増悪を改善できます
特に⾎中の好酸球数が⾼値の
重症喘息患者に有効で
発作を53%減少させます
従来使用されていた
副作用の強いステロイドが
50%減量できます
@ベンラリズマブ 抗IL5受容体抗体
NK細胞などの作⽤を誘導し
その抗体依存性細胞障害(ADCC)により
好酸球を細胞死(アポトーシス)させて
症状を改善します
また メボリズマブと同様に
ステロイドが減量できます
@デュプリマブ 抗IL-4受容体α抗体
ベンラリズマブと同等の効果
好酸球が悪さをする重症型喘息に
よく効きます
また ステロイドが減量できます
アトピー性皮膚炎への有効性も
認められています
さらに現在開発中の新たな生物製剤には
@エトキマブ 抗IL-33抗体
好酸球を減少させ 症状を改善します
@上皮性サイトカイン 抗TSLP抗体
好酸球数 IgE価に関わらず有効で
抗IL5抗体など他の生物製剤が無効例でも
効く可能性があります
などがあります
こうした生物製剤の使用により
将来的には
Th2系反応により生じるアレルギー反応の抑制が
期待できるようになってきています
高橋医院