脳梗塞の危険因子
脳梗塞には さまざまな危険因子があります <高血圧> 最も関連が強い危険因子で 血圧が高いほど 脳卒中の発症率は高くなります 収縮期160mmHg以上で3.46倍 拡張期95mmHg以上で3.18倍 も発症リスクが増加します 危険因子の60%を占め 発症への寄与度は45.2%です 血圧の日内変動が大きいこともリスク要因になり 以前説明した夜間昇圧型は 特に要注意です 血圧のコントロールが不良で高値の状態が続くと 脳出血を起こし 軽症だと ラクナ梗塞やアテローム血栓性梗塞が起こってきます 高血圧は くも膜下出血の危険因子でもあります <糖尿病> 発症リスクを2.27倍高めるとされ 高血圧を合併すると さらに4倍に増加します 危険因子の24%を占め 寄与度は7.9%です HbA1cが1%上昇すると 脳卒中発症率は12%上昇する という報告もあります アテローム血栓性梗塞の30% ラクナ梗塞の26% に糖尿病の合併を認めます 男性に比べ女性では 糖尿病が寄与する発症が27%多いとされています 高血糖が続くと 動脈壁内に糖がしみ込んで 動脈硬化が促進され動脈が細くなるうえ 血小板の凝集作用が高まって血栓ができて 血管が閉塞します また 糖尿病では内皮細胞の傷害が強いことも 明らかにされています <高脂血症> 危険因子の17%を占め 寄与度は35.2%です 悪玉の LDL-C値が高い人は 全身の動脈硬化を起こしやすく アテローム血栓性梗塞を発症しやすくなります LDL-Cが160mg/dl 中性脂肪が150mg/dl 以上で 発症が有意に増加します 一方 総コレステロール値が低いと 血管が脆弱になるので 脳出血の危険因子になります <心房細動> 危険因子の21%を占めます 特に心原性脳塞栓症に強く関連し 心房細動がある人の発症率はない人の 2~7倍にもなります 合併率は 男性21.8% 女性26.2%で 加齢とともに増加しています 高齢者に多いのは 心臓のペースメーカーの働きが鈍るからではないかと 推測されています 心原性脳梗塞症の72.8% TIAの15.2% アテローム血栓性梗塞の7.1% ラクナ梗塞の4.9%に それぞれ合併しています 高血圧 糖尿病 高脂血症が 心房細動の原因となることがあるとされています 発作性の心房細動は 見つけにくいのが問題です 自覚症状がないか あってもすぐに治まるので 本人は気がつきませんし 24時間のホルター心電図でも同定されにくいのです <喫煙> 危険度の17%で 寄与度は21.4%です 吸わない人に比べて 4倍も発症リスクが高く リスクは喫煙本数が多いほど高くなり 5~10年の禁煙で低下します 受動喫煙も危険因子となり 避けるとリスクが減ります <大量飲酒> 発症率と飲酒量はJカーブの関係を示し 特に大量飲酒者でリスクが高くなり ラクナ梗塞への関与が顕著です <肥満> 高血圧 糖尿病がなくても 肥満だけで動脈硬化は進みます 寄与度は26%です <運動不足> 寄与度は29.4%です <CKD> 最近注目されているCKDですが 脳梗塞の独立した危険因子でもあり 発症率は腎機能が低下するほど高くなります 男性で1.63倍 女性で1.51倍 高くなり 男性では脳出血 女性では脳梗塞の有意なリスク因子です 禁煙 減塩 肥満の改善 節酒 血圧の管理 130/80mmHg未満への降圧 合併する糖尿病 脂質異常症の管理 が重要です <社会的因子> 学歴が高い 社会的サポートが多い と 発症リスクが低いことが示されています 結婚相手との離別 死別 自覚ストレスの大きさ 貧困度が高い地域での居住 などが リスク上昇に関与しています <脳梗塞になりやすい人の特徴> 60歳以上の男性で 家族に脳卒中の病歴があるという人が多いです 危険因子の数が多いほど発症しやすいとされ 発症リスクは 高血圧があるだけで約5倍 それに高脂血症が加わると21倍 さらに糖尿病 喫煙などが加わると 約70倍にも増えることが明らかにされています ですから 危険因子を1つでも減らすことが大切になります @脳梗塞になりやすい人のチェックリストを示します *60歳以上 *高血圧がある *脂質異常症がある *糖尿病がある *肥満がある *家族に脳卒中になった人がいる *脈が乱れることがよくある *お酒をたくさん飲む *タバコを吸う *運動不足 *ストレスが溜まっている *完璧主義者 *味付けの濃いものが好き *脂っこいものが好き *調味料をたくさんかける *果物をあまり食べない *野菜をあまり食べない 思い当たる点が多い方は たとえ今 症状がなくても 早目に相談に来られてください
高橋医院