脳梗塞の発症を防ぐための1次予防
について説明します

<脳卒中予防・十か条>

脳卒中の発症を予防するために
日々の生活で注意すべき10個のポイントが
以下のような標語として示されています

脳卒中予防・十か条を説明する図表

*高血圧を治しましょう

*糖尿病放っておいたら悔い残る

*不整脈見つかり次第すぐ受診

*高すぎるコレステロールも見逃すな

発症の大きな危険因子である
高血圧 脂質異常症 糖尿病などの生活習慣病や
不整脈などを
きちんとコントロールすることが大切です


*予防にはタバコを止める意志を持て

*アルコールは控えめに 過ぎれば毒

*食事の塩分・脂肪控えめに

*体力に合った運動続けよう

*万病の引き金になる太りすぎ

禁煙 節酒 塩分の摂り過ぎ
運動不足 肥満の解消
が大切です


*脳卒中 起きたらすぐに病院へ

これまでに説明してきたように
脳卒中は初期治療がとても重要で
発症後どれくらいの時間経過で治療を開始するかが
予後や後遺症の程度を規定しますから

あやしい症状があったら
すぐに医療機関を受診することがとても重要です


<高血圧のコントロール>

高血圧のコントロールは予防に極めて有効で

早い時期から 
薬を用いた降圧治療を行うことが肝要です


治療により発症率は36%減少します

収縮期血圧が10〜20mmHg下がると
脳卒中は半減するとされ

拡張期血圧が5mmHg下がると 
発症率は42%減少するとされています

特に高リスク群では 
抑制効果が大きいとの報告もあります

高血圧の治療により脳卒中の発症率が改善することを示す図


@管理目標値

140/90mmHg未満

糖尿病 タンパク尿があると
130/80mmHg未満厳しく管理します

高齢者の目標は 150/80mmHg未満で
この管理でも発症率が30%下がると
報告されています


頸動脈 頭蓋内主幹動脈に 
閉塞 高度狭窄がある場合は
下げ過ぎると脳卒中のリスクが上がるので
画一的な基準での過度の降圧は要注意です


<糖尿病>

HbA1cが1%上昇すると 
脳卒中の発症率は12%上昇します

HbA1cの増加と脳卒中発症率増加の関連を示す図

しかし 
血糖コントロールによる予防効果については
ピオグリタゾンによる治療で
発症率が16%減少したという報告がありますが

高血圧に比べると 
未だ充分な科学的根拠とはいえません


厳格な血糖コントロールよりも
合併する高血圧 脂質異常症などの
包括的なコントロールが効果的とされ
肥満 喫煙の管理も重要視されています

特に血圧管理が非常に重要
糖尿病患者さんの厳格な血圧コントロールにより
脳卒中発症率は44%抑制されるとされ
130/80mmHg未満を目標に降圧治療を行います

血糖と血圧のコントロールの重要性を示すグラフ

糖尿病患者さんの脂質異常症は
スタチンを用いてLDL-Cを40mg/dl減少させると
脳卒中発症率は21~48%抑制されると
報告されています


<脂質異常症>

高LDL-C血症の治療薬のスタチンが
脳梗塞の1次予防に効果があったという報告が数多くなされ
発症率を19~28%減少させます

脂質異常症のスタチン治療が脳梗塞の発症率を低下させることを示すグラフ

LDL-Cを10%低下させると 
発症率は15.6%減少します

また スタチンとエゼチミブの併用により
発症率が21%減少するとの報告もあります


@管理目標値

*LDL-C 120mg/dl未満

*HDL-C 40mg/dl以上

*TG 150mg/dl未満

です

但し 高血圧の管理の有用性には及びません

また スタチンによる脳出血発症リスクの増大も
指摘されています


<肥満>

BMIの増加にともない 発症リスクが増加します

そして減量により 
高血圧 糖尿病 脂質異常症が改善すると
発症リスクを抑えることができます

BMIが高いと
リハビリテーションの効果が低くなる
という報告もあります


<心房細動>

心房細動で脳梗塞になりやすい人は
以下のような危険因子のいずれかを有しています

*心不全がある :1点

*高血圧がある :1点

*75歳以上 :1点

*糖尿病がある :1点

*過去に脳梗塞またはTIAになったことがある :2点
CHADSスコア


これらの合計点数をCHADSスコアと呼び
今後1年間に脳梗塞を発症する率を予測できます

CHADSスコアの点数と脳梗塞発症率の関係を示すグラフ

0点 1.9%
1点 2.8%
2点 4.0%
3点 5.9%
4点 8.5%
5点 12.5%
6点 18.2%

危険因子の数が多いほど
脳梗塞の発症リスクが高いことが
よくわかると思います

最近は

2点以上なら
なんらかの予防をしなければならない

0点でも 
65歳以上なら予防をした方が良いと

考えられています

予防的抗血栓療法について説明した図


具体的な予防としては

@アスピリン

抗血小板薬のアスピリンを使用すると
発症率が22%低下します

しかし 前述したように
心房細動のときの心房内でできる血栓は
血小板でなく
凝固因子のフィブリンが関与しますから
抗凝固薬の方が
より大きな効果が得られると考えられます

実際に

@ワルファリン

抗凝固薬のワルファリンの使用により
発症率が64%も低下し

アスピリンより効果があることが
明らかにされました

@新規経口抗凝血薬

ワルファリンとほぼ同様の約70%の予防効果を示し

ワルファリンの重大な副作用である頭蓋内出血は
新規経口抗凝血薬では大幅に低下しています
高橋医院