かつての日本では 脳卒中といえば 脳出血でした

<脳出血とは>

頭蓋内血管の破綻にともなう脳実質内の出血が 
脳出血です

脳出血について説明する図

日本では 以前は多かったのですが
最近は減少傾向にあります

人種的に 日本人 アジア人は
起こしやすいとされています


<疫学>

脳卒中全体の25~30%をしめますが
頻度は 横ばいからやや低下傾向にあります

脳出血の頻度について説明する図

現在は1960年代と比較して
発症率は 男性で72% 女性で55%も減少し
死亡率は 男性で97% 女性で85%と
大幅に減少しています

脳出血の発症率 死亡率の経時的変化を示すグラフ

脳出血を起こさせる
いちばんの原因である高血圧が
食事の減塩や 適切な降圧治療により
減少したことが
脳出血が減少している大きな要因です


<発症の特徴>

血圧の変動が激しい
日中の活動時に発症することが多く

真冬(11月~3月)の
朝7時頃 夕方5時頃に多いとされています

発症の特徴について説明する図
発症の特徴について説明する図・その2

また 
外出時 入浴中 排便時 興奮時に
発症しやすいとされます

脳内で出血が起きて数分で
頭痛 しびれ 嘔吐 意識障害などの症状が 
一気に現れます


<機序>

脳内の細い穿通枝動脈の
血管壊死や微小動脈瘤の破綻が原因です

またモヤモヤ病 脳動静脈奇形 脳腫瘍
などによっても起こります

脳出血の発症機序を説明する図

<原因>

@高血圧

一番の原因で
約80%を占めます

脳出血と高血圧の関連を示す図

高血圧が持続すると
脳内の細い動脈である穿通枝の動脈硬化が進行し
壊死を起こしたり 
小さな動脈瘤ができることがあるのです

被殻 視床 基底核部 小脳など
脳の深部で起こることが多いです

高血圧性脳出血が起こる部位を示す図


@脳アミロイドアンギオパチー

80歳以上の高齢者に多く
脳血管の内側にアミロイドタンパクが沈着して
血管が脆くなり破れやすくなります

発症部位は皮質下が多く 再発が多いのも特徴です


@脳血管奇形 もやもや病

若年者に多いです


@抗血栓薬の内服

原因の約30%を占め
脳梗塞の治療などで用いられる
アスピリン ワルファリンなどの
薬剤によるものが多いです


<危険因子と予防策>

@高血圧

寄与度73.6%で 最大の危険因子で
血圧値と発症との間には正の相関があります

降圧治療によりリスクは半分になるので 強く推奨され
管理目標値は130/80mmHg未満です

血圧の管理が不充分だと再発しやすく
拡張期が90mmHg以上だと再発率が高いです


@糖尿病

発症率を1.56倍高めます

しかし 血糖値の管理は予防に貢献しないとされています


@運動不足

寄与度は27.6%ですが
運動による予防効果は定かではありません


@肥満

寄与度は26.1%です

発症率はBMIと正の相関を示しますが
減量が予防に貢献するかは不明です

脳出血の危険因子についてまとめた図

@喫煙

発症に寄与し
10年以上の禁煙継続により 
有意な発症抑制を認めるとの報告がある一方で
予防には寄与しないとのデータもあります


@大量飲酒

発症率は68%増加し
摂取量増加に伴い発症率が増えます
高橋医院