野田さんの Q

Qのポスター

第2幕は 
島流しにあった上川・ロミオと
彼からの手紙を待つ松・ジュリエットの
せつない恋物語が展開されます

この島流しの場所が なんとシベリアという設定で

シベリアの厳しい環境の中で苦境にあえぐ
流された人々の苦悩が
戦後に抑留された方たちの姿を彷彿させます

シベリア抑留の場面

書き手は正直言って
この展開には少し違和感を覚えて
ちょっと面白くないなあ
どうせなら ロミオとジュリエットの悲恋を
もっと深堀りして欲しかったなと 思いました


でも 野田さんは
「戦争」や「戦後」を重視したくて
こういうストーリー展開にされたようです

プログラムには
中学の先輩である吉永小百合さんに
宛てた手紙が載っていて

そのなかに
たとえ若い人たちに煙たく思われようとも
戦争や戦後に拘っていきたい
という思いをつづられていました

Qのプログラム

ちなみにプログラムは
こんなカラフルな小冊子でした

また プログラムの観客へのメッセージにも

大量の人間が 
ひとくくりで同じ「運命」を背負わされるとき
そこには 
ひとりひとりの「人生」が失われている

この物語の入り口は 
たったひとつの若いカップルの「運命」であるけれど
出口は 群衆の「運命」である

と書かれています


野田さんは 書き手より4歳年上なだけです

書き手は正直言って
戦後を意識したことは あまりありません

野田さんは 
どうしてそんなことを感じられるのかな

洒脱さ 軽妙さの印象が強かっただけに
少し意外に感じました


インスパイアされたクイーンの音楽に関しては
こんな風に語られています

クイーン

もともと 
ロミオとジュリエットの後日談をテーマにした戯曲を
構想していたところに
クイーンのアルバムを聴いたら 
その詞が突き刺さってきたそうで

クイーンがあのアルバムで表現したかった世界は
ロミオとジュリエットに近いのではないかと
思われたそうです

オペラ座の夜のCD

ただ
音楽には観客をたやすく感動させる力があり
それは危険な側面でもある
という 劇中で使用される音楽の存在位置を
認識してもいたので

舞台を作り上げていく過程で 役者さんたちと
各曲でどんな場面が描けるのか模索を繰り返され
音楽と芝居が同化する使い方と同時に
芝居の内容と対照的な気分の曲を
異化的に使う試みもされたそうです

確かに 役者さんがいない舞台に
ボヘミアン・ラプソディだけが
流れるシーンもあって印象的でしたが

うーん 
書き手のクイーンの詞への勉強不足もあって
野田さんが意図したことを楽しむには 
残念ながら至りませんでした

もうひとつ印象的だったのが
野田さんがこの戯曲を書くにあたって
三島由紀夫を意識されていたということです

三島由紀夫

今回の戯曲は
ロミオとジュリエットの「美しい死」を 
ある意味で冒涜しているわけで
三島さんなら それをどう思われるだろう
と考えたそうです

そうした三島さんのまなざしを
跳ね返そうという意識で
第2幕をあのように作り上げた面もあるようで

そのエピソードを読んで
「ああ なるほどね」と思いましたよ

野田さんが三島さんを意識する気持ちは
年代が近い書き手としては
なんとなくわかるような気がします

そして
そういう意識がなかったら 
どんな第2幕になっていたのだろう

そちらも見てみたかったなとも思いました

そう この舞台は 
ロミオとジュリエットの物語ですよ!

ロミオとジュリエット

二組のロミオとジュリエットが

二組のロミオとジュリエット

時空を超えて交わりあうさまは 
とても新鮮で面白かったし

演じた4人の役者さんたちは 素晴らしく魅力的でした

演じた4人の役者さんたち

そして なんといっても 

松たか子 さん

松たか子

実は 
松さんもナマの舞台で拝見するのは初めてでしたが
凛とした立ち振る舞いは 風格すら感じました

舞台上の松たか子