心房細動の薬物治療
心房細動の薬物治療について説明します <治療薬の分類> 心房細動の薬物治療には @発作自体を起こしにくくする抗不整脈薬 :リズムコントロール薬 @脈拍数をコントロールして症状を改善させる薬 :レートコントロール薬 が用いられます <抗不整脈薬:リズムコントロール薬> @作用機序 発作の頻度を減らし 症状をある程度改善させる薬です 心筋細胞の電気的興奮過程を修飾させることで 発作を減らします @効果 発作時に使用すると 50%で1時間以内に洞調律に戻り ほとんどが服用後24時間~7日以内に 洞調律に戻ります また 発作予防として用いる場合は 発作の頻度を1/3程度にでき 持続時間も短くできます 但し 完全に発作を抑え込めるわけではなく 心房細動そのものを 治療しているわけでもありません ですから 症状が改善しても ず っと飲み続ける必要があります @慢性には効かない 発作性が適応で 慢性には効きません 慢性では構造的リモデリングが生じているので 電気的な問題だけを処理しても 効果が出てこないのです 構造的リモデリングが生じる前の 初期段階で治療して 洞調律を維持して 線維化を進行させないようにすることが肝要です @種類 抗不整脈薬は10種類ほどあり 心筋細胞の興奮に関わるプラスイオンを通す 細胞膜上のチャンネルをブロックする *ナトリウムチャンネルブロッカー *カリウムチャンネルブロッカー *カルシウムチャンネルブロッカー が 主として用いられます 心筋細胞内に プラスイオンが入らないと興奮しにくくなるので 過剰な収縮が止まり 洞調律に戻りやすくなります それ以外に 交感神経を抑制するβブロッカー ジギタリスなどの薬 も用いられます @薬を服用するときの注意 副作用 服薬を止めれば 再び発作が起こるので ずっと飲み続ける必要があります また 効きすぎると心筋の電気的バランスが崩れ 心室細動などの致命的な不整脈を 生じさせる副作用があります 特に 高齢 腎機能 肝機能低下 の方に用いる場合は要注意で それぞれの薬が 腎排泄か肝代謝かで 使用できる患者さんが決まります <心拍数をコントロールする薬:レートコントロール薬> @作用機序 動悸などの症状が強い場合に用い 脈拍数そのものを抑え込む薬です 主に房室結節に働きかけ 心室の収縮数を減らします @治療目標 心拍数のコントロールは 110/分以下が目標で 動悸の症状が強いときは 80/分以下にします @種類 *ジギタリス 昔はよく使われましたが 最近は効果を疑問視するデータが出されています *βブロッカー 安静時も運動時も 心拍数を低下させます 心機能低下保護作用があるので 心不全傾向がある人が適応になります *カルシウムチャンネルブロッカー 洞結節 房室結節での 電気信号伝達抑制効果が強い薬です リズムコントロール薬とレートコントロール薬で 治療効果 予後には 差はないと報告されています
高橋医院