心房細動の薬物を使わない治療について説明します


<カテーテルアブレーション>

カテーテルアブレーションを用いた
不整脈の治療は
1980年代後半から開発が始まり
心房細動には2000年頃から応用され始めました

開発されてから20年ほどの 
比較的歴史が浅い治療法です


現在この治療法は

*WPW症候群 

*発作性上室性頻拍 

*特発性心室頻拍 

*心房粗動

といった
主に頻拍性の重症な不整脈の
治療に用いられており
良好な成績が得られています



心房細動に対しても効果的で
不整脈を根本的に治してしまう治療法として
注目されています


@原理と具体的な施行法

足の付け根やひじの血管から
心臓の中に直径数ミリの細い管(カテーテル)を入れ
その先端から 
約60℃の高周波電流を流すことによって
異常な電気の発生源や 
電気の回路となる心臓の筋肉の一部を焼いて
不整脈の源を取り払います



焼く場所は 
心房細動の原因となる異常な電気信号が生ずる 
肺と左心房の間の部位で
ここをカットすることにより
心房に不規則な興奮が伝わらないようにします



肺静脈隔離術とも呼ばれています


30秒から1分くらいの処理を 
数十回繰り返し
平均して1時間ほどで終了します

この治療を受けるための入院期間は 
3~4日間です


@効果

発作性心房細動では
1回の治療で約80~90%に
根治または軽快が期待できます

成功すると 
不整脈が根本的に治るので
薬物治療は不要になります


持続性 慢性心房細動だと
1回の治療での奏効率は
約50~60%と低くなり
もう一度行うと約80~90%になります

長期の経過を有する心房細動ほど 
治りにくい傾向があります


@予後

カテーテルアブレーションをした
心房細動の患者さんの生存率は
心房細動がない人とほぼ同じまでに改善し
脳梗塞 認知症の発症率も低下します

薬物治療と比較すると
死亡率 脳梗塞発症率ともに
カテーテルアブレーションの方が 
良い成績が得られています




@この治療に向いている人

*60歳前後まで 
 最高でも75歳以下が望ましい

*発作性心房細動

*発症してから1年程度まで

*自覚症状がつらい

*抗不整脈薬を試して
 無効だったり副作用が出たりした

こうした方が 
カテーテルアブレーションの良い適応になります


@施行すべき時期

発作性心房細動の間で
慢性心房細動に移行する前に行うことが肝要です

薬による治療を続けていくうちに
慢性に移行してしまい
アブレーションに適した時期を逸することがないように
注意する必要があります


@合併症

下記のような合併症が起こり得ます

*心臓タンポナーデ
 心臓の壁に穴があいて そこから血液が外にもれる 
 1%

*脳梗塞
 脳の血管に血のかたまりが飛んでいって詰まる 
 0.1~1%

*房室ブロック
 正常伝導路が切断されて脈が遅くなる

*動静脈婁
 動脈と静脈の間に交通ができる

*食道関連合併症
 左心房に近い食道との間に婁ができる
 5%


@再発

手術後 数週間は
かえって心房細動の発作が
起こりやすくなります

その後 数ヵ月 1年という経過の中で
再発することがあり

10年後の再発率は
必ずしも低くないのが現状です



<クライオバルーンアブレーション>

2014年からは 
液体窒素を用いて低温処理する
クライオバルーンアブレーションも行われています



従来のカテーテルアブレーションと比べて
患者さんの痛みも少なく 
容易に施行できるのが特徴で

成績 安全性は 従来の方法とほぼ同じです


高橋医院