ワインは 地中海 エトルリア人を経て ローマに引き継がれます

<ローマのワイン>

初期のローマでは
ワインを楽しむことは堕落への誘いと見做され
特に女性はワインを飲むことを禁じられていました

女性がワインを飲んでいないか
チェックするためにキスをしていた
という話もあるそうです

しかし紀元前2世紀頃には
ブドウ栽培は 大きな利益を生む重要な農業活動になりました

ワインが利潤を生む商品になったのです

やがて上流階級は高級ワインを楽しむようになり
テロワールの概念も生まれ
醸造地の名前がワインの名前になりました

ワインを楽しむローマの人々

ローマ人にとって ワインは文化と文明の中心であり
日常生活の中心となっていきました

ローマの人々は ギリシアと同じような飲み方をしていて
甘いワインが好きで
優れたワインは ほとんどが白ワインだったそうです

ローマ帝国の領土拡大とともに
帝国の供給・交易ルートに
ブドウの木が植えられ ワイン造りが広まり
ヨーロッパ全体に ワイン造りの文化が定着していきます

ローマ帝国の拡大とワイン造りの広まりを示した地図

植民地での兵士たちの喉の渇きをいやすために
ワインが必要だったのです


<陶器から樽へ>

ワインを発酵させ貯蔵する器も考案されました

大型の陶器にブドウ果汁を入れて発酵させることで
システマテイックなワイン造りができるようになり
出来上がったワインは 小さい容器に入れて保存していました

ワインを保存していた小さな容器

しかし ローマ時代に
樫の木の樽を用いた 発酵 熟成技術ができました

樽はもともと ガリア人がビールの貯蔵 運搬に用いていたものです
ローマのガリア侵攻により 樽を発見したのです
樽は 転がせるし 軽いので 壺よりはるかに便利でした

ワインを貯蔵する樽

但し 樽で熟成が行われるのは20世紀になってからのことです

やがてワインは 宗教との結びつきを深めていきます
ワインは ユダヤ教 キリスト教では
儀式 典礼に欠かせない酒になったからです


<ユダヤ教とワイン>

イスラエル ユダヤ人が
ギリシア・ローマとは異なるワイン文化を生み出していきました

旧約聖書には
ブドウ酒という言葉が181ヵ所も出てくるそうです

しかし 旧約聖書では
ワインはネガティブに扱われることが多く
人を酔わせ 正体を失わせてしまうものと捉えられ
エジプト ギリシアと異なり ワインが神に捧げられることはありませんでした


<キリスト教とワイン>

一方 新約聖書では
ワインが重要な位置を占めるようになります

キリストは
最初の奇跡を行ったカナの饗宴で 水をワインに変え

最後の晩餐で「自分の体はパン 血はワイン」と語ったので
日常のミサ 祈りの場 聖体拝礼の儀式で
ワインは必須のものになりました

最後の晩餐の様子

また 当時は飲料水の質が悪かったので
ワインが生活必需品として
水の代わりに飲まれていたという事情もあります

こうして キリスト教が ワイン造りを擁護 奨励し 発展させ
キリスト教の世界への普及とともに
ワインもその地に根付いていきました

ミサで供されるワイン

最良のワインを造ることが
神の栄光を称える方法のひとつと考えられていたのです


<修道院とワイン>

修道院は
高貴な心の持ち主の修道士たちが集まり
町にある教会などからの俗化を避けるために
人里離れた辺鄙なところに作られ
自給自足の生活を行っていました

そんな修道院にとって
ブドウの木の栽培 ワイン造りは大事な仕事でした

修道院とワイン畑

ワインは 毎日行われる儀礼に欠かすことができないもので
修道院が旅館代わりになって旅人をもてなすためにも必要でした

また ワインは修道院のビジネスでもありました

修道院は いちばん良いブドウができる畑を知っていましたし
知識と学問の宝庫だった修道院では
ブドウ栽培について多角的に研究されていました

修道院の貯蔵庫は 世界最先端の貯蔵庫であったと言われています

修道院のワイン貯蔵庫

ブルゴーニュには 6世紀の頃から
多くの大小のベネディクト会の修道院が創設され
中世の頃には 広大なブドウ畑を所有していました

なかでも
ベネディクト会から派生した より厳格な修道会のシトー派
清貧 強い信仰心 高い教養を持つ聖職者を養成しましたが

彼らは ワインの品質を磨き上げるのに精をだして
神に捧げるワインを至上至高のものにしようと
ストイックに励んだのです

ブドウ品種を ピノ・ノワール シャルドネに限定して
栽培に最も適した土地を探して
コートドールのブドウ栽培の基礎を作り上げました

斜面の色々な部分を細かく分けて土壌を分析して
細分化された優秀な畑を選別していったのです

修道士たちは 畑の土を食べて調べたとまで言われています

ワイン畑で働く修道士たち

また17世紀には
シャンパーニュ地方のオーヴィレール修道院の貯蔵室で
ベネディクト会の修道士 ドン・ピエール・ペリニョンが
シャンパンの作り方を発見しました

フランスだけでなくドイツ スペインにも
たくさんのワインを造る修道院がありました

いや~ 修道院がビールを作っていたことは知っていましたが
ワインも作っていたのですね!

修道院 奥が深そうです!
高橋医院