徐脈性不整脈・その1
徐脈性不整脈について説明します <徐脈性不整脈が起こる機序> 洞結節からの電気刺激の発生が 低下して起こるのが 洞不全症候群 電気刺激が途中で遮断されて起こるのが 房室ブロック です 加齢による心筋細胞の変性 心筋梗塞などによる心筋細胞の障害 が原因になります 徐脈性不整脈は 高齢になると増えます 薬は効果がなく 副交感神経遮断薬のアトロピンやβ刺激薬が ペースメーカー導入までの 一時的しのぎで使われます <洞機能不全症候群> 洞結節の働きの低下により 電気信号が作られなくなる病気で 脈拍数が毎分50回未満になります 運動 興奮時など 脈波が速くなるべき時でも速くならないので とても疲れやすくなります ひどくなると心臓が停止することがあり 数秒以上心臓が停止すると ふらつきが起こり 10秒以上停止すると 意識がなくなって倒れる アダム・ストークス発作を起こすことがあります 心房の異常も合併することがあり そうなると徐脈と同時に頻脈も出てくるようになり 頻脈が停止した時に心臓が止まりやすくなって ふらつきや失神が起こります @重症度により3タイプに分類されます *I型 洞性徐脈 脈拍は遅いけれど 規則正しいリズムの脈が持続します 症状がなければ 放置して構いません *Ⅱ型 洞停止 洞房ブロック 一過性の心停止が起こります *Ⅲ型 徐脈頻脈症候群 徐脈と頻脈を繰り返して 心房細動 粗動の発作がおさまるときに 高度な心停止が起こり ペースメーカーの適応になります 洞結節の機能は年齢と共に低下するので 高齢者に多く 60歳代にピークが見られます 洞結節や心房の老化現象が 主要な原因ではないかといわれていて 自動能を司る洞結節の細胞が 加齢により徐々に減っていくことが 原因と考えられています 降圧薬や強心薬などの薬剤でも 起こることがあります @ペースメーカー治療 脈が遅いために 失神やふらつきなどの症状が出現した場合は ペースメーカー治療が必要となり 症状がなくても 4秒以上の心停止が見つかった場合は ペースメーカーを植え込むことがあります 洞不全症候群の20~25%が ペースメーカー治療を受けています <房室ブロック> 房室結節の機能が低下して 心房から心室に電気が伝わらなり 心室の収縮が遅くなったり停止する病態です 高齢者に多く見られます 原因は 加齢によるもの 冠動脈疾患などの心臓の病気によるもの 薬の影響によるもの があり 腎不全の高カリウム血症 心サルコイドーシスでも起こります @重症度による分類 *Ⅰ度 タイミングは遅いが 電気信号は伝わっています *Ⅱ度 ときどき信号の一部が伝わらず 心拍が遅くなったり 不規則になります ウエンケバッハ型とモビッツⅡ型があります #ウエンケバッハ型 房室結節でブロックが起こる状態で 心室への伝導時間が徐々に延び 一端途絶えますが 回復します #モビッツⅡ型 ヒス束以下でブロックが起こる状態で 伝導時間の延長はなく いきなり伝導が途絶えて その後回復します ウエンケバッハ型より危険なタイプです *Ⅲ度 完全房室ブロック 心室に信号が全く伝わらない重度なもので 突然死につながることがあります よく運動をする人では 迷走神経の機能が高まって 生理的な現象として 房室結節からの電気が少し伝わりにくくなり Ⅰ度またはⅡ度のブロックが起こることがありますが 無症状であれば 心配はありません 心筋梗塞や心筋症のような病気に伴って Ⅱ度~Ⅲ度の房室ブロックが起こった場合は 極端に脈が遅くなったり 心臓がそのまま止まったりしてしまうことがあるので 注意が必要です Ⅱ Ⅲ度では 基礎疾患の心臓病が隠れていることが多いので 十分な検査が欠かせません 治療が必要なのは 脈が遅いために失神 ふらつき 息苦しいなどの 症状が出現した場合です 症状が軽い時は 薬を用いることもありますが 多くはペースメーカー手術が必要となります 症状がなくても モビッツⅡ型 Ⅲ度の完全房室ブロックがある人には ペースメーカー治療が望ましいとされます <頸動脈洞過敏症候群> 頸動脈洞は 頸動脈分岐部にある血圧センサーで ここが圧迫されて 迷走神経の過剰な反応が起こり さまざまな循環障害が起こる病態です 心拍が抑制されて めまいや失神が起こることがあります 中高年の男性に多く見られ 頸動脈の動脈硬化が関与すると考えられています
高橋医院