仲間と食べるともっと美味しい
ヒトがグルメになった理由は もうひとつあります @ヒトで発達した共感能力 集団で協力し合って生き抜く道を選んだヒトの祖先は 他人が感じる喜怒哀楽を まるで自分の感情のように共感できる能力を 高度に発達させてきた この共感能力により ヒトは生き延びることができた 共感中枢は ヒトで高度に発達した前頭葉に存在する @共感能力が美味しさの感じ方を変化させた 優れた共感能力が 祖先たちの食に劇的な変化をもたらしたと考えられる ヒトには 自分の舌や嗅覚で直接感じるおいしさより 人から与えられる情報により感じるおいしさの方を より強いものと認識する第3の特殊能力が備わった 仲間が新しい食材を見つけて おいしそうに食べているのを見ると 共感中枢が反応して情報指令部に情報を送る すると 脳の情報司令部は 仲間が食べているおいしそうなものは 自分も食べる価値があると判断し その食べ物を美味しいものとして 記憶するようになったと考えられる 人類は自分の食の好みにとらわれず 仲間と分かち合うものを 美味しいと感じられるようになった 自分の味覚 嗅覚からの情報より 分かち合いの美味しさの情報の方が上回る 単なる 味 臭いの記憶よりも 誰と一緒に食べたか そのときにどういう気持ちになったか という共感の記憶の方が より大切になる 人によって美味しいものが異なるのは 思い出が異なるからかもしれない 誰かと分かち合いたい という気持ち そのおかげで か弱い存在だった人類は 常にみんなで一緒に新しい食べ物を見つけ出し 分かち合って食べることができるようになり 厳しい生存競争を生き抜くことができた さらに おいしさの共有 拡散につながる それを裏付けるように チンパンジーは 毛づくろいをしているときよりも 仲間と食べ物を分かち合っているときの方が 幸せホルモンのオキシトシンが およそ2.5倍も多く出ていて ひとりで食べるときに比べても 5倍も出ていることが明らかにされています 人間で実験しても 同じような結果が得られるのでしょうか? 共感力で美味しさが増すなんて 全く想像していませんでした ビックリ! でも グルメになる理由としては 前回ご紹介した苦味や嗅覚より より人間らしくて納得できる気がします(笑) @美味しさに影響を与えるもの 共感が生むおいしさを大切にして現代に至った人類では 伝えられた料理の名前が おいしそうな印象のものになっただけで 食事に満足する人の割合が60%から87%に上昇する 同じ料理でも この名前より こっちの方が美味しさ倍増だそうで 口コミでのおいしいという他者の評価 おいしさを感じさせるさまざまな情報により 食べたときのおいしさが影響される こうしたおいしさの共有は 美食を追い求める原動力になっている 再度 なるほどです! 食品や飲料のCMの効果も こうしたメカニズムを介しているのかもしれません それにしても 名前だけで美味しさが変化しますか? だとすると逆に 美味しさという感覚は脆弱というか 嗅覚 味覚などの物質的な基盤の変化がなくても 名前や口コミだけで味わいが変わることに 驚きを感じ得ません 2001年宇宙の旅という映画で 宇宙船の乗組員が食事時間に 美味しそうな食べ物の写真を見ながら 栄養たっぷりだろうけど マズそうなムースを口にしていたのを思いだしました 肥満や糖尿病を避けられる 新しいグルメの進化は そんな具合になるのかもしれません? うーん それって ホントに美味しいのかな?(笑)
高橋医院