ワインのびん熟成
樽で熟成されたワインはびん詰めされて保管されますが びんのなかでも熟成は続きます <びんによる熟成> 樽に比べて空気の出入りが少ないので 酸素が少なく微還元状態にあり ワインのリンゴ酸 酒石酸 乳酸などとエタノールが反応して エステルができる熟成反応が中心になります 樽熟成が酸化的熟成なのに対し びん熟成は還元的熟成と言えます 代表的なエステルであるコハク酸ジエチルは フルーティーな香りの主成分となります びん熟成が過度になると 還元的な硫黄化合物を生成して 異臭を持つようになるので 適切な時期にびん熟成を終わらせるべきです <コルク> 17世紀から びん詰めの栓としてコルクが用いられています コルクは ポルトガルで植栽されている樫(コルクガシ)の木の樹皮で 最初の層を剥ぎ 10年後に再生してくる層も剥いで その10年後に再生してくる層から コルクとして用いられます 約10ごとに 150年間で10~15回ほど収穫できます コルク栓は 酸素を適度に通すので びん熟成過程に必要とされる酸素を供給できます コルクの最大の欠点は カビ 残留塩素などにより生じるコルク臭で 一定の確率で生じてしまいます レストランなどでソムリエさんが 抜栓した直後にコルクの匂いを嗅いでいるのは コルク臭がないかチェックしているのです 最近は びんの栓に コルクでなく王冠やスクリューキャップも用いられますが びん内のワインの品質を最も長期間持続できるのは 王冠 ついで スクリューキャップで コルク栓はいちばん成熟のピークを保てる期間が少ない というデータもあります ニューワールドのワインでは スクリューキャップが多用されます <ワイン造りにおける亜硫酸> 亜硫酸は 二硫化硫黄を水に溶かしたもので 酸化防止剤として 世界のワインの99%以上で用いられています ワインにおける亜硫酸は ビールにとってのホップのようなものだ と評される方もおられます 亜硫酸の主たる作用は 殺菌作用 酸化防止作用 果皮からのポリフェノール抽出促進作用 ですが ワイン酵母の殺菌による発酵の停止 乳酸菌の殺菌によるマロラクティック発酵の停止といった 発酵を止める作用もあり 醸造家たちは 適切なタイミングで亜硫酸を加え 醸造過程を上手にコントロールしています びん詰めの時には 遊離型の亜硫酸を20~40ppmになるように添加します 亜硫酸無添加ワインは 特に白では品質面で劣り 添加ワインの方が香味は優れています なるべく化合物を添加しないで造る有機ワインでも 亜硫酸の使用は認められています
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