他の現代哲学の
大きな流れについて見ていきましょう

<マルクス主義>

カール・マルクスにより
ドイツで生まれたマルクス主義は
資本主義に対抗するもの
近代哲学に対抗するもの でした

マルクスの資本論

そして
共産主義国家・ソビエトという壮大な実験ののち

ソビエトの様子

その崩壊とともに 凋落しました

マルクス主義は
個人の自由を前提とする実存主義の 
カウンターパートでもありました

マルクス主義は構造主義に近く

個人の在り方は
階級や社会での立ち位置に規定され
自由に個人が活動することは基本的にできない

個人の意識は
あくまで社会構造の反映であるから
社会を変えないと意味がない
という考え方です

マルクスの写真


しかし 同じ構造に着目するスタンスでも 
構造主義とは大きく異なる点があります

社会は
歴史的変化により 改良され上昇していく
昔よりも今の方が優れている
と考えたのです

この点が構造主義と大きく異なります


ソビエト連邦は
社会的な規制を重視したあまり 全体主義的社会になり

その社会構造の崩壊により
思想としてのマルクス主義も終わってしまいました

ソビエトが崩壊する様子

でも その存在意義は大きかったし
マルクス主義をアレンジする新たな考え方が
興ってくる可能性もあると思います


<分析哲学>

現代哲学のもうひとつの大きな流れが

イギリス アメリカで興った
新しい経験主義とも言える分析哲学です

真の正しい命題は
数学や論理学のように 
経験を通さず理論だけで動けるものか
自然科学のように 
現実的にどうかということを検証できるものに限る

と分析哲学者は考えます


@科学的実証主義

分析哲学では
論理学 論理的分析がベースとなる
数学 論理学に基づいて研究し
世界を実証的に分析しようと試みました

そうしたスタンスは 科学的実証主義と呼ばれ
自然科学的なモデルに基づいて
科学により世界分析する流れと 
とても近い関係にあります

科学的実証主義について説明する図


@言語に着目した哲学

分析哲学では
言語を通して世界認識をする
「言語論的転回」を行いました

人間は言語を介して世界を認識する 
という考え方です

言語論的転回について説明する図
そして
言語相対主義
言語が違えば モノの見方や理解の仕方が変わる
というアイデアが生まれました

これは
文化の違いによってモノの理解の仕方が変わるという
文化人類学の発展にも大きく影響しました

どれが正しいとは言えない のです


@20世紀哲学への影響

分析哲学は
20世紀のアメリカ イギリス フランス ドイツの哲学に
幅広く影響を及ぼしました

構造主義
フレーゲ ラッセル ヴィトゲンシュタインらの言語分析
ソシュールの言語学分析 記号論
ハイデガーの 存在への意味の問い
ハーバーマスの コミュニケーション理論

いずれも分析哲学の影響を受けています

最近の分析哲学は
言語でないものを取り扱おうともしています


@パラダイム論

分析哲学は パラダイム論も生み出しました

科学的な事象は
どのようなパラダイムを使って分析するかで 
理解の仕方が異なり
正しい 間違いの判定が変わってしまう

相対主義 ダイバーシティにもつながりますが
書き手は大学に入ってすぐに
こうした考え方の流れを組む
トーマス・クーンの「科学革命の構造」を読んだとき
本当に目から鱗で びっくりしました(笑)

トーマス・クーンの「科学革命の構造」


@プラグマティズム

19世紀末に アメリカで生まれた分析哲学の一派で
ヨーロッパから亡命してきた分析哲学者により
大きな影響を受けました

経験主義の最たるもので
何が正しいかを論じるのではなく
議論そのものが役に立つかどうかで価値が決定される
と説きます

しかし
役にたたないことはどうでもいい
役に立つのであれば 正しさを決定できなくても問題ない
という
ちょっと厄介な解釈法にもつながっていきます

プラグマティズムは
1970年代にリチャード・ローティらにより復活され

現在のアメリカは
科学主義的哲学
プラグマティズム系分析哲学
が主流となっています
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