新型コロナ・重症例の抗凝固治療
新型コロナウイルスの重症例では サイトカインストームに加えて 全身の血管内での 微小血栓形成が見られることから 新たな治療が試みられています <急激に悪くなる前から抗凝固療法を> 前回ご紹介した 現場の声や研究報告を踏まえ 重症例に対して 低分子ヘパリンなどを用いた抗凝固療法 が試みられ アメリカや中国から 死亡率の改善 生存期間の延長などが 報告されています 中国からは 死亡した患者さんたちは 生存例と比べて Dダイマー 血液凝固時間が有意に高値で 血小板数は少なく DIC傾向を認め そうした検査値を示す患者さんたちに ヘパリンによる抗凝固療法を行うと 行わなかった群と比較して 4週間後の死亡率が有意に低く 予後の改善が見られることが報告されました アメリカからは 2773人の多数の患者さんで検討を行い 抗凝固療法を行った群は行わなかった群と比較して 死亡率が低く 生存期間が長く 両群の相違は 人工呼吸器を使用した患者さんで大きいことが 報告されています また 抗凝固療法に用いる低分子ヘパリンは 抗炎症作用もあることが明らかにされています こうした状況を背景に 入院患者さんの 血液凝固状態を定期的にチェックして 少しでも異常が見られたら 早目から抗凝固治療を行うべき という指針が提唱され始めていて 国際血栓止血学会は 「新型コロナウイルスの入院患者に対し 血栓形成リスクを定期的に測定し 禁忌がない限り 血栓・塞栓予防用量の低分子ヘパリンの投与を推奨する」 とガイダンスに記し 5/11のランセットにも Dダイマー プロトロンビン時間などの血液凝固能を 定期的に2~3日毎に測定し 異常があれば可及的速やかに抗凝固療法を開始すべき との声明が掲載されました このように 高度な炎症・血管内皮傷害と それを引き金とする微小血栓の形成が 急速な多臓器不全による重症化を引き起こす というコンセプトが認識され 対策として早期からの抗凝固療法が 推奨され始めています 都内の某病院のICUで 新型コロナウイルスの重症例の 治療を行っている医師は 抗凝固療法の手応えはあると言われていました 期待ができますね! ウイルス感染における 高度な炎症をともなう血栓形成傾向は SARSやインフルエンザでも 見られることがあるようですが 新型コロナウイルスでの 血栓形成の凄まじさ 速さは インフルエンザのそれとは比較にならない との声も聞かれます どうして新型コロナウイルスは そんなに凄い血栓形成を誘導するのか? どのような患者さんで そうした血栓形成が進行するのか? その2点が明らかになれば さらなる治療の進歩が期待されますが 現在でも 早期からの抗凝固療法が 有効性を示しているようなので 少しは明るい兆しが見えてきたと 期待してしまいます 重症化する患者さんが 少しでも減少するように願ってやみません
高橋医院