新型コロナ・新型コロナウイルスは自然免疫を抑制する
7/4のNHKスペシャルでは iPSの山中先生とタモリさんの司会で 「人体vsウイルス 驚異の免疫ネットワーク」 というタイトルで 新型コロナウイルスと免疫 に関する内容を放送しましたが タイムリーで しかもかなり濃い内容の番組で コンピューターグラフィックスも素晴らしく さすがはNHKと感心しました 番組のなかで興味深かった点がいくつかありました まず 新型コロナウイルスが ヒトの免疫反応を巧妙にすり抜けることです 自然免疫をすり抜ける能力として 新型コロナウイルスの ORF3bという遺伝子が紹介されました この遺伝子の働きにより 自然免疫反応で産生されるインターフェロンの産生量を 1/10まで減少させるそうです さらに 重症化例ではインターフェロン産生量が低い ORF3bという遺伝子は インターフェロン産生に関与する以外にも インターフェロンの作用発現に関わる IRF3という分子にも作用して その機能を変化させて インターフェロンの働きも修飾するようです また エクアドルでは ORF3bに変異がある新型コロナウイルスが同定され このウイルスは インターフェロン産生量を 1/20まで低下させるそうです 今のところ このウイルス変異はエクアドル以外では 見つかっていませんが そんな変異が頻発してくると厄介ですね インターフェロンが産生されないと ウイルスに対する自然免疫反応が 稼働しないので困りますが もうひとつ厄介なのが インターフェロンがないと熱が出ず ウイルス感染していても無症候性となることです 無症候性感染者による ウイルス拡散は大きな問題ですが 新型コロナウイルスで 無症候性感染が多いことに このORF3bが関与しているのかもしれません 興味深いことに 新型コロナウイルスとSARSコロナウイルスでは 遺伝子の80%ほどが同一なのに ORF3bの遺伝子配列は全く異なるようです しかもインターフェロン産生の抑制力は SARSコロナウイルスより 新型コロナウイルスの方が強いようです 新型コロナウイルスでは SARSウイルスと異なり 無症候性の患者さんが多いことに こうした現象が関与しているかもしれません ちなみに 重症化例でインターフェロン産生量が低いことは アメリカのイェール大学の岩崎先生らも報告されていて 感染した新型コロナウイルスの ウイルス量が少ない場合は 初期から充分量のインターフェロンが産生されて ウイルスが早期に排除されるので 軽症ですみますが ウイルス量が多い場合は 初期のインターフェロン産生量が少なく ウイルスが持続感染して炎症が続き 重症化するそうです 一方 獲得免疫をすり抜ける機序として ウイルス感染細胞を攻撃するキラーTリンパ球に 感染細胞が自分が感染していることを知らせるために ウイルス抗原を提示する際に機能する分子を (HLAということ?) 新型コロナウイルスが 細胞表面に表出させないようにしてしまうので キラーTリンパ球が目標を失い攻撃できなくなる という話も紹介されていました 全然 知りませんでした そんなことがあるのですね 新型コロナウイルス おそるべしです
高橋医院