では 糖尿病の患者さんは
全てハイリスク群かというと
治療により十分な血糖値のコントロールがされていれば
それほど心配する必要はありません

世界各国の糖尿病の専門家が
糖尿病の患者さんが 
新型コロナウイルスに感染しても
重症化しないためのコントロール目標を
論文にして発表しています

重症化しないためのコントロール目標が記された論文


<重症化予防のための糖尿病のコントロールの目標>

@新型コロナウイルスに未感染の場合

定期的な通院をやめて
糖尿病の治療を中断することなく
継続して行うことが大切で

血糖値は 70~140mg/dLの範囲内に留める
HbA1cは 7%未満に留める
ことが目標です

また 血糖だけでなく
血圧 脂質のコントロールをしっかりと行うことも
強調されています

重症化予防のための糖尿病のコントロールの目標を示した表


当院でも 来院される糖尿病患者さんに
この目標値を何回となくお話しています

それを聞いて
安心される患者さん
もう少し頑張ろうと意気込む患者さん
意気消沈される患者さん

人それぞれですが
多くの患者さんにA1c値を
6台に維持していただきたいです!


@新型コロナウイルスに感染した場合

たとえ糖尿病でなくても
メタボリック症候群のハイリスク群の患者さんは
新型コロナウイルス感染で誘導される
糖尿病発症に注意すべきです

糖尿病患者さんは 
しっかりと血糖コントロールを行うべきで
血糖コントロールが良好だと
感染の予後も良いことが明らかにされています

血糖コントロールが良好だと感染の予後も良いことを示すグラフ


@ステイホームでの注意

既にこのブログでも注意喚起しましたが

テレワークで自宅勤務になると
ついつい食べ過ぎたり
おやつを食べたり
運動不足になったりで
体重が増えて
血糖値のコントロールが悪くなりがちです

ステイホームで起こるリスクをまとめた表

当院に通われる患者さんでも
ステイホームにより 
10人中9人は体重が増加しています

十分にご注意ください


<肥満も新型コロナウイルスのリスク因子>

糖尿病だけでなく 肥満も
高血圧 心血管疾患 糖尿病と並ぶ
新型コロナウイルスの重症化のリスク因子です

肥満もリスク因子であることを示す図

新型コロナウイルス感染症における肥満の割合は
アメリカで40% イタリアで20% スペインで24%と報告され
アメリカでは
糖尿病の患者より肥満の人の方が多いとされます

特にBMIが40を超えるような高度肥満は危険です

また 比較的予後が良いとされる
若い人の危険因子になります

若い人の肥満は危険なことを示すグラフ

肥満の若い人は
入院のリスクは2倍以上になり
BMIが35を越えると
人工呼吸器利用率が7倍増え
ICU管理が3.6倍増えると報告されています

若い人は肥満により入院リスクが増えることを示すグラフ
若い人は肥満によりICU管理が増えることを示すグラフ

肥満の若い人は要注意です!


肥満では糖尿病と同様に
免疫力低下 慢性炎症などがあり
さらに加えて
肥満による物理的な胸郭圧迫で生じる呼吸機能の低下が
病態の悪化に関与すると推測されています

肥満により呼吸機能が低下することを示す図


<日本では糖尿病 肥満の関与が少ない?>

新型コロナウイルスの予後と糖尿病 肥満の関連について
8/6に国立国際医療研究センターは
興味深い研究結果を報告しました

日本の新型コロナウイルス患者さんの
特徴を明らかにしようと行われている
レジストリ研究の7月末での中間報告で
日本全国の227施設から登録された2638例が
解析対象になっています

レジストリ研究の概要を示す図

入院患者さんの死亡率が7.5%と
20%を超える諸外国に比し低いのが特徴的ですが

重症化しやすい要因として
男性 喫煙 高齢
心血管疾患 糖尿病 呼吸器疾患
があげられています

併存疾患は
糖尿病が16.2%
高血圧が15%
脂質異常症が8%
肥満と脳血管障害がそれぞれ5.5%でした

日本の新型コロナウイルス感染者では糖尿病 肥満の割合が低いことを示す図

海外と比較すると
糖尿病などの持病を持つ患者の割合は低く
糖尿病の患者さんはアメリカ イギリスの半分程度
肥満の患者さんはアメリカの6分の1以下
このことが死亡率の低さに関連している可能性が
示唆されています

とても興味深いデータです

どうして日本では
糖尿病や肥満の割合が低いのか?
糖尿病の患者さんの予後自体も諸外国より良いのか?
知りたいことがたくさんあります

今後の更なる解析が期待されます
高橋医院