ということで 
スウェーデンが実際に行った対策
何もやらずに集団免疫の成立を目指すのではなく
過度な自粛を強いない耐久戦略と言えます


<集団免疫でなく耐久策>

医療崩壊を招くような医療機関への負担がないなら
収束に時間がかかろうとも
日常的な経済活動の制限を最小限にできるメリットが大きい
という方針で

いわば 緩いロックダウン

ですから
社会的距離 ソーシャル・ディスタンシングをとる
少しでも症状があれば自宅療養する
リモートワークを推進する
などの勧告はしっかり行っています

スウェーデン政府が行った勧告

当初から
集団免疫は戦略にも目標にもしていなそうで
そこに世界的な大きな誤解があると
スウェーデンの人々は考えているようです

誤解があると訴えるスウエーデンの人たち


但し こうした耐久策の最大の困難な点は
最適な実効再生産数と
その実効再生産数を達成しうるギリギリの行動制限を
推し量って決めることです

スウェーデンの公衆衛生局が
「これで実効再生産数< 1を達成できる」
という対策を見だしたのは4月第2週で
残念なことに
それまでに老人を中心に
多数の感染者・死者が出てしまいましたが
この方針を12月まで継続する予定だそうです

こうした対策の結果 最近の研究では
首都ストックホルムでは
抗体とT細胞免疫の獲得率が上昇しつつあるようで
この点については また詳しく紹介します


<ロックダウンがもたらす負の側面>

スウェーデンがそうした対策をとったのは
ロックダウンのような強い自粛策の
負の側面を心配したからです

WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアンさんは
4月下旬の時点で
スウェーデンの方法は将来のモデルになるかもしれない
対人距離の確保や自己規制などについて
市民の能力ややる気に依存し
コミュニティーを信頼しているのが特徴だ
国民とのパートナーシップを通じて公共政策を実施しており
学ぶことはある
と スウェーデンの対策を評価しています

スウェーデンの対策を評価するWHOの担当者


ちなみに ロックダウンに関しては
人々の行動の制限がウイルスの感染を抑え込むよいう
明確な根拠がないから
WHOは一度も推奨したことはないそうです

厳しいロックダウンを行っても
感染を抑え込めないのは
イギリス アメリカを見れば明らかで
WHOでは
ロックダウンの負の部分も含めて検証する必要がある
との声もあがっているとか

ロックダウンの検証を訴える人々

実際に 
ロックダウンのような厳しい移動制限によって
世界経済は壊滅的なダメージを受けています

特に飲食 観光業界への影響が甚大で
経済が止まり 
世界中で多くの雇用が失われています

ロックダウンの経済への影響を示すグラフ

また ロックダウンによる精神的なストレスは
アルコール依存 鬱 家庭内暴力などを引き起こして
一部の人たちの寿命を縮めるだろうと
推測されています

ロックダウンによる鬱の注意喚起をするポスター
さらに 
ロックダウンが
2~3週間で終わることが確実ならともかく
今のように先の見えない状況では
ロックダウン対策は ひとつの賭けとさえ言えます

スウェーデンでは
向こう1 年の犠牲者数の予測として
2200人(1100〜4400人 死因の2 %強)
という予想がでましたが
行動制限による失業者の短命化 
精神的ストレスなどによる犠牲者数も
ほぼ同じと予測されたので
ロックダウンが行われない対策が支持されたそうです

ロックダウンをしなければ
さらに被害が増えるだろうとの声もありますが
これについても明確な根拠がなく
ロックダウンは
あまりにも経済を痛めつける諸刃の剣だというのです

ロックダウンが経済を痛めつけることを示すグラフ

第2波が来ても ヨーロッパ各国は
全国的なロックダウンには再び踏み切れないだろうと
推測されています

実際 イギリスなどでは
感染が増えた地域に限る
小規模なロックダウンでしのごうとしていますし
日本の状況も似たようなもので
政府は経済のダメージを心配して
全国的な緊急事態宣言を出したがりません

WHOも7/27に
経済を開放し 人々は仕事をし
貿易は再開されなければならないと述べ
経済を動かしながら
ウイルスを封じ込める努力を続けることが重要
との認識を示しています

もっとも
ロックダウンによる経済活動を止めなかったスウェーデンでも
世界的な需要減少からは逃れられず
20年の経済成長率は
周辺国とあまり変わらないマイナス7%を見込んでいます

しかし ロックダウンをした他のEU諸国より
経済の傷は浅いというデータもあります

スウェーデンの経済損失が軽微なことを示すグラフ

グローバル化が進む現状では
そうした事態は避けられないのでしょう

世界各国が悩み続けている
感染のブレーキと経済再開のアクセルのバランスの取り方には
決定的な正解はないのかもしれません
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