集団免疫については 以前に説明しましたが

感染症の原因となるウイルスに対する抗体を持つ人の割合が
一定以上に増えると
社会全体で未感染者に対する感染防御ができるようになり
感染症が制御できる

という考え方です

集団免疫について説明した図

社会全体で集団免疫を目指す場合は
あまり積極的な予防対策をとらず
敢えてある程度の流行を許してしまうことになります

イギリスではジョンソン首相が
新型コロナウイルスが流行し始めた当初
この集団免疫を目的とした対応を行うと宣言しましたが
そんなことをしたら死者の数が大変なことになると
科学者たちの非難を浴びわずか数日で撤回しました

記者会見するジョンソン首相

しかし ヨーロッパで唯一
集団免疫戦略を行っているとされている国が
スウェーデンです

書き手が若き日に留学していた国でもあるので
なんとなく気になっていましたが

このところ
スウェーデンは本当に集団免疫を目指したのか?
という論調の記事を
色々なところで目にするようになりました

スウェーデンに関する記事

そこで 現地の知人 友人に話を聞いたり
さまざまな記事を読んだりしたことを
まとめてご紹介しようと思います


<スウェーデンは集団免疫を目指したのか?>

スウェーデンが目指したのは
必ずしも集団免疫ではなく

新型コロナウイルスが
ワクチンなどで感染を制御できるようになるまでには
かなりの時間を要すると予想されるため
医療崩壊が起こらないレベルに流行を抑え
それを持続するという
長期的視野に立った耐久戦略だったようです

スウェーデンが目指した戦略を説明する図

そのため
持続が難しい完全なロックダウンという方法を
取らないと明言しました

長期戦になりそうなので
抑止より緩和を志向し
感染抑制と社会経済活動の調和による
持続性の維持を基本戦略としたようです

経済を止めることで 
今後 失われる命も多いはずで
経済の問題は命の問題であるともいえる
という考えがベースにあったと考えられます

強すぎる制限はどこかで解除し
長期型対策にシフトしなければならない

しかし
この方法での軟着陸に失敗すると
再流行が起こり
再度の規制をせざるを得なくなり
人々の生活が対策の変動のたびに振り回されてしまう

そのために 敢えて
他のヨーロッパの国々がしたような
厳しいロックダウンを行わなかった

屋外で日光浴を楽しむスウェーデンの人々

またスウェーデンでは
憲法において「国民の移動の自由」が守られており
国民の行動の規制が許されていないことも
ロックダウンを行えなかった理由のひとつだったようです


<スウェーデンが行った対策>

では スウェーデンは具体的に
どのような新型コロナウイルス対策をとったのでしょう?

法律で禁止しているのは
「50人以上の集会」と
「介護施設への訪問」のみです

そして他のヨーロッパ諸国のように
厳しいロックダウンをせず
国が法律で個人の行動を規制することはしませんでした

スウェーデンの独自の戦略について説明した図

また 
幼稚園 小学校の一斉休校はしませんでした

スウェーデンでは
多くが核家族で多世代家族は少ないため
子供が感染することで高齢者に感染させるリスクも
少ないためです

これについては
半年余りにわたり小学校を休校したイギリスが
インターネット環境が整っていない家庭もあり
これ以上学校を閉鎖すれば
教育格差が広がるとの懸念が強いという理由で9月に再開し
スウェーデンの方針に追随した形となっています

飲食店も休業させませんでしたが
代わりに1.5 mの距離をとれる
座席配置にするという条件を
12月まで続ける方針を早々と出しています

ストックホルムのレストラン

人が触れ合う状況をうまく防げれば
感染確率が大幅に下がるとの判断から
敢えてレストランを休ませず
感染機会を完全にゼロにするのではなく
非常に低い確率に抑えることを目標としたようです

但し スウェーデンの食文化である
バイキング・スモーガスボードは御法度で
もちろんバーでの立ち飲みもダメです

バイキング・スモーガスボードを楽しむスウエーデンの人たち

接待をともなう飲食は どうしたのかな?
あ あの国にはそういうのはなかったですね(笑)

また 単なる外出自粛を求めず
具体的な行動の判断基準と対処法を明らかにし

大都市での流行を鈍化させるための強力な移動制限を
地方に当てはめるのは不合理だとしました

こうした戦略は
科学的根拠を優先して
外国の動向や目先の悲劇に惑われないドライなもので
これをヨーロッパで実践・貫徹したのは
スウェーデンだけでした

スウエーデンの感染対策のポスター
高橋医院