新型コロナ・スウェーデンでの老人の延命に関する考え方
スウェーデンでは 今回 施設で犠牲になった高齢者の多くの生命予後は もともと限られたものであり パンデミックにより死亡が前倒しになったにすぎない という考え方もあるようです そうした考え方の根底には 延命処置を嫌うという風潮があることが 指摘されています <老人の延命に対する考え方> 助かる確率が低く かつ運良く助かっても余命が少ない人に どこまで濃厚な延命治療を行うかは 今回のパンデミック以前から 福祉国家を成り立たたせる上で避けては通れない問題で スウェーデンでは多くの議論がされていたようです
今回の新型コロナウイルスの流行で 医療現場で行われた判断の基本は 平時から行われてきた 年齢(80歳以上)と基礎疾患の程度による 徹底した集中治療室(ICU)入室のトリアージ(優先順位付け)と 対象外患者の緩和ケアで 公的なガイドラインが順守されたそうです このガイドラインでは ICUが満床になったときは *80歳以上の患者 *70歳代で1つ以上の臓器障害を有する患者 *60歳代で2つ以上の臓器障害を有する患者 はICU治療の適応外とされています ですからグラフに示されるように 緑で示されたICUで治療した患者さんは 80歳以上ではほとんどいません 繰り返しになりますが こうした処置は平時から行われていることで 今回の新型コロナで 特別に行われていることではありません また 認知症などの高齢者は コンプライアンスが良好でないため 感染しても病院へ搬送されるケースは少なく 介護施設で感染した高齢者の 約10%が病院へ搬送されましたが 残りは介護施設内で治療を受けるか 緩和治療の対象となり これまでの集計では 介護施設における感染者のうち約30%が死亡したそうです その結果 老人の死亡者数が増えましたが 国民は 厳しい結果だけれど当然のことと 受け入れているとのこと スウェーデンでは 限りある医療資源を有効に使うために 通常診療時から 救える命に医療資源を使うという方針が徹底されており 多くの国民がそれを受け入れています 終末期医療に関しても 無駄な延命治療は行わないのが通常で そうした指針は 国民のコンセンサスが得られています さらに 治療方針の決定は あくまでエビデンスに基づいて行われ 効果がほとんど期待できない治療は 患者や家族の希望があったとしても行われません 書き手も留学中にうっすらと感じていましたが 浪花節的感覚の日本人からすると スウェーデンのそうしたところは かなりシビアで冷たい印象すら持ちました また 結構 孤独な老人たちも多かったし 自殺者も多く 高福祉国家といっても 決して明るい面だけではないなと感じました <スウェーデンの新型コロナウイルス対策の根底にあるもの> さて 閑話休題で スウェーデンの 新型コロナウイルス感染に対する基本的な考え方は 老人が寿命を縮めることを怖れるあまりに 若い者の寿命を縮めさせるような ロックダウンのような対策を全国一律に課すのは 長期的視野のない安易な判断ではあるまいか? 新型コロナウイルスの制御だけを特別視して 他のデメリットを過小評価している意見の多くは 多面的な視点と長期戦略が抜けている 目先のことだけにとらわれず 対策にともなう長期的デメリットを多面的に分析することも 重要なことである ということだそうです ある意味で とてもリアリスト・現実主義者的だと感じます そういう考え方をする国もあるのですね 日本は そこまで徹底した考え方を持てるでしょうか?
高橋医院