新型コロナウイルスは
依然として世界中で猛威をふるっていて
いったい いつ収束できるのか
全く見通しが立たない状況です

書き手は9月頃から 患者さんたちに
「いったい この先 どうなるのですか?」
と聞かれると
「手洗い マスクなどの予防策をしっかりと継続したうえで
 インフルエンザと同じような感覚で接するように
 社会全体の雰囲気を落ち着かせていくしかないと思います」
と答えるようにしています

コロナとうまく付き合おうと勧めるポスター


感染制御にシャカリキになると 経済状況が厳しくなる

かといって 経済優先で動きだすと 
感染者が再び増加してくる

まさに 言葉は不適切かもしれませんが
いたちごっこの状態です

そして こうした「いたちごっこ状態」が
もしかしたら数年は続くかもしれません


一方で 幸いなことに
重症化して亡くなる方の数は減少しつつあります

感染初期への対処法
重症化を早期に察知する方法
重症化した際の治療法
などが
試行錯誤のなかで少しずつ解ってきた成果だと思います

死者数の減少傾向を示すグラフ

発病前の無症状の人から
たくさんのウイルスが排出されるため感染の制御が難しい
という このウイルスの厄介さには 
残念ながら抗う術がありませんが

それでも 3密の回避や手洗い マスクの励行などで
感染の抑制はある程度できています

だから 過度に怖れたり悲観したりせずに
「インフルエンザと同じような感覚で接する」方向に
持って行くしかないように思うのです


そんな書き手の漠然とした気持ちを
上手な言葉で代弁してくれる記事を読みました

日本経済新聞で
編集委員の矢野寿彦さんが10/10に書かれた
「命か経済か」には解がない 対コロナ医療再考を
という記事です

日本経済新聞の記事

この記事の冒頭で矢野さんは

「感染抑制と経済回復」の⼆兎を追う戦略は危うい
ある程度の感染を織り込んで進めないと
⼀兎をも得ずになりかねない

「感染抑制と経済回復」の⼆兎を追う戦略の厳しさを示す図

と注意喚起されます

うまい ポイントをついている! さすがはプロです!


矢野さんは 論を展開されます

現在の対処法では
「命か経済か」というイデオロギーの対立を生んでしまう

あらゆる病をコントロールしたい できるという人間の欲望が
新型コロナでも感染してはいけない 
感染させてはいけない
という感覚を社会にまん延させていて
その弊害として
差別 偏見といった新たなリスクを生じさせている

また 生活苦による死も無視できず
今年8月の自殺者数は前年同月に比べて16%増えている

しかし 幸いなことに
この病気は「治せる病気」になってきた

ならば 感染者ゼロを目指すのではなく
感染者数を一定以下にコントロールできれば
良しとするべきではないか

あくまでゼロを目指すと
人々はまだ対策が十分でないと不安に駆られてしまい
そうした過度な恐怖が国民心理の萎縮を招き 
経済に大きなダメージになっている

人間の行動は 
科学的な合理性だけで割り切れるものでもないのだから
コロナの医療は 
現代医学頼みの硬直的な姿勢を改めるべきだろう

と述べられています

矢野さんの主張をまとめた表

矢野さんの意としたところとは
少し異なるかもしれないので恐縮ですが
書き手は
感染者ゼロを目指すのではなく
感染者数を一定以下にコントロールできれば
良しとするべきではないか
という意見に とても共感を覚えました

それこそが 
目指すべき「落としどころ」ではないでしょうか?


一方 患者さんたちに
「インフルエンザと同じような感覚で接する云々」
とお話しすると 多くの患者さんが
「でも先生 インフルエンザには薬もワクチンもあるけれど
 新型コロナウイルスには
 その両方ともないじゃないですか!」
と言われます

ごもっともです!

この点に関しては 10/5の朝日新聞に掲載された
塩野義製薬の手代木社長へのインタビュー
ワクチンだけじゃ無理
という記事が面白かったので紹介します

朝日新聞のインタビュー記事

手代木さんは こんな風に語られます

ワクチンができたとしても
新型コロナにかかるリスクを減らすひとつの手段にはなり得ますが
ゼロにはなりません

ワクチンは万能ではありませんし
免疫はそんなに簡単ではないのです

インフルエンザの死者数が大きなニュースにならないのは
ワクチンもあり 治療薬もあり 早期診断ができるキットもあるので
感染症と一緒に付き合っていこうよというモードに
人間がなれるからです

我々はワクチンも急ぎでやっていますけども
診断薬 治療薬も開発を急いでいます
その三つをそろえて 
初めてインフルエンザと同様の安心感をもって
世の中は普通の生活にお戻りいただけると思っているのです

塩野義製薬の研究所での新薬開発風景


まさにおっしゃる通りだと思います

新型コロナウイルスの診断に関しては
抗原キットの精度がもう少し上がればいいと思いますが
当院で行っている唾液のPCR検査では
検査会社のSRLさんのご協力で ほぼ1日で結果が得られます

新型コロナでは
インフルエンザのように 診断2日以内に抗ウイルス薬を使用すべき
というわけではありませんから
医療サイドへの感染リスクが少ない唾液PCR検査が広まっていけば
良いのではないかと感じています

治療薬に関しては
アビガン レムデシビルなどの早期投与の成果が確認されれば
より良い方向に進んでくれることが期待できます

多くの人々が納得できる「落としどころ」を 
早く見つけたいものです!

落としどころを示すイラスト
高橋医院