説明してきたように
最近になって高評価を得始めている
スウェーデンの対策ですが
死亡者数が多いという現実もあります

4~5月頃に
集団免疫を目指していると言われていたスウェーデンが
世界から非難されたのは 死亡者の多さによります

一定数の人口あたりの死亡者数でみると
スウェーデンは世界で第6位と高い順位にあり
4月の時点では
被害の大きかったイタリアに迫っていました

各国の死者数を示すグラフ


しかし
ロックダウンを行った
イギリス スペイン イタリアなどと比べると
少ないのも事実です

スウェーデンの死亡者で特徴的なのは
その内訳で
70歳以上が死者全体の約90%を占め

スウェーデンの年代別死亡者数を示すグラフ

さらにその50%は 介護施設に居住していて
高齢者が多数住む介護施設で
クラスターが多発したことが
死亡者数を押し上げた原因となりました

介護施設での死亡者数の多さを示すグラフ

こうした状況を招いた理由のひとつに
介護施設での対策が不十分だったことが
明らかになっています

民営化が進んだため 営利目的の介護施設が増え
多数の重度要介護高齢者がいるにもかかわらず
常駐医師は不在のことが通常で
入居者当たりの看護師数も不足しており
防護服などの物資不足や
臨時スタッフへの衛生教育の不充分さなども加わりました

介護施設内での様子

さらに 
多くの移民が暮らす地域でクラスターが発生し
そこに住む移民は 症状があっても
介護施設で低賃金のパートタイマーとして働いていたので
高齢の入所者に感染が伝播しました

スウェーデンは 他のヨーロッパ諸国に比べて
移民の受け入れを積極的に行っていて
ストックホルムに住む友人は
移民が多い地域に行くと世界旅行をしているようだと
笑って教えてくれましたが

スウエーデンに住む移民の人たち

そうした政策の負の面が
感染拡大や高齢者の死亡者増加に
悪い影響を及ぼしてしまったようです

こうした理由による
介護施設でのクラスター発生を防げていたら
死者数は大幅に抑えられていた可能性が高いとされます


世界に冠たる高福祉の国と言われるスウェーデンで
このような状況が生じたのは いかにも皮肉なことです

スウェーデンでは当初から
訪問を避けるべき場所として
老人ホームや病院が真っ先に勧告され
休日には祖父母や年老いた親に会わないように勧告し
買い物も他人に頼むように薦めていました

さらに
高齢者を完全隔離するのではなく
むしろ健康維持のために
老人の外出を推薦していますし
面会も屋外かつ十分な距離をあけるという条件で認めています

それにもかかわらず
こうした状況が生じたのは
福祉政策の行き詰まり 移民政策の失敗など
スウェーデン社会が抱えるさまざまな問題が
一気に表に出てしまったからのようです

しかし現時点では 対策により
最大の原因だった高齢者施設での死亡者数は
大きく減少しており
人口100万人当たりの死者数は
イギリス アメリカを下回っています
高橋医院