新型コロナ・スウェーデンの現状と評価
スウェーデンが耐久策をとってから数ヵ月 現状はどうなっているのでしょう? <感染の現状と自己評価> 6月の時点では スウェーデンでは人口あたりの感染者数が 世界で2番目に多かったのですが 6月後半以降 新規の感染者数が大きく減少していて 7/29にはそれ以前の14日間と比べて 54%減と大幅に減少しています また 医療体制は継続的に機能しています これは ヨーロッパの他の国と比べると珍しい現象で フランス ドイツ スペインなどでは 感染者数が40~200%増加しています 死亡者数も 4/15をピークに減少傾向にあり 最悪期の死亡者数は1日115人でしたが 最近の平均値は2人で ゼロになる日もあります こうした状況の変化を受けて スウェーデン政府は7月に 「COVID-19パンデミックにおけるスウェーデンの経験」 というリポートを公表して いまのところ自国の対応が正解に近い といった自負をにじませています この対策を指導してきた 公衆衛生庁の疫学者のテグネルさんは スウェーデンで行われているさまざまな自発的な対策は 完全なロックダウンと同様の効果をあげていて かなりの程度で成功したと語ります 実際にロックダウンは行われていませんが 社会全体の移動は大きく減少していて このスウェーデンの対策は 実は日本の対策より厳格で 緊急事態宣言の解除後は 日本の方が社会的距離政策は緩くなっています さらに 失業やドメスティックバイオレンスなど ロックダウンの副作用が起きていないことも挙げ 春先に厳しいロックダウンを敷いた ヨーロッパ諸国を暗に批判し ロックダウンのマイナス効果も 検証しなければならない そうした検証はこれまであまり行われていない とも言及しています そして 感染対策で我々が求めるのは 人々が社会的に距離をとることだけでなく 語り合い 支え合い 解決すべきことだ と結論しています うーん いかにもスウェーデンらしい という気がします(笑) <対策への国民からの評価> スウェーデンで特徴的なのは 国の対策に対する国民の支持が大きいことです 国民の7 割が公衆衛生局を信頼し 国民の6 割が 対策は経済と健康のバランスが取れていると評価していて この数字は過去4か月間 変化していません 専門家が率いる独立行政庁への信頼が 驚くほど厚いようです また こうした高い支持に必須なのが情報公開で 記者会見は常にyou-tubeに文字付き手話付きで公開され そこで時間無制限で対策の詳細が説明されます データは常に同じサイトで閲覧できて 毎日の更新だけでなく 毎週のまとめも分かるようになっています どこまでの数の感染者と犠牲者を認めるかについて 社会で認識を共有させないと 長期的視野の対策は練り難くなる という 政府の根本的な姿勢があり それが故に 犠牲者数は多いけれど それでも国民に支持されつづけているそうです 参考になりますね <カロリンスカから発表された研究成果> こうした状況のなか かつて書き手が留学していたカロリンスカ研究所から 興味深い論文が発表されました 既に紹介したように 新型コロナウイルスの抗体が陽性と判定された人数の2倍の人々に 感染した細胞を特定して破壊する特異的T細胞が見つかり それは 症状が軽かった人や無症状だった人にすら みられたそうです こうして得られた T細胞に関するデータを基に検討すると ストックホルム市内での免疫獲得者は約40%に達し 集団免疫をほぼ獲得したと推測されるそうです 前述しましたように スウェーデンの対策は 集団免疫の成立を目指したものではなかったのですが 結果として 図らずも社会のなかでの免疫獲得者が増えたようです こうした現状を踏まえ スウェーデンの疫学者のひとりは スウェーデンの免疫獲得率は 国全体ではそれほど高くなく20%ほどでしょうが ストックホルムではおそらく30~40%くらいで 集団免疫の状態に近いので もう少し規制を緩和できるかもしれません と語っています 一方で 新型コロナウイルス感染は 非常に不均一な拡がり方をするのが厄介だとも指摘しています 免疫獲得率が 0.5%の職場もあれば 20%の職場もあるようで 全体としての評価がとても難しいそうです こうしたことは 新型コロナウイルス感染における クラスター形成とその制御の重要性を 示唆しているのかもしれません 本当に色々な意味で厄介なウイルスです!
高橋医院