新型コロナ・再感染はあるのか?
新型コロナウイルスが 日本で第1波の猛威を振るっていた4月頃 新型コロナウイルスに感染して 症状が改善し PCRでウイルスが陰性化して退院したあとに 再び症状が出現し 再度PCRでウイルス陽性になる症例が 中国や韓国から相次いで報告されました @各国からの再感染例の報告とWHOの見解 韓国では そうした再感染例が116人も認められ 日本でも 大阪府や北海道などで 退院した人が 再びPCRで陽性になったとの報告があり また ちょうど4月頃に 中国の回復した軽症患者175人の研究から 回復後に 検出できるほどの抗体反応を示さなかった人もいれば 非常に高い反応を示した人もいたことが 明らかにされました こうした状況を受けWHOは 新型コロナウイルスの感染者で 回復後に再びPCRで陽性になる患者が出ており 回復者に免疫がついているかは不明だ との見解を示しました そこで 新型コロナウイルスは 一回治っても 再感染することがあると 一時は大騒ぎになりました 治癒後に再感染する可能性があるというニュースは とても衝撃的で 書き手もビックリしたのを覚えています さらに5月になると 中国の各所から PCRで再陽性になる確率は 9.1% 14.5% 21.4%といった報告がなされ 「新型コロナウイルスは再感染する」 というリスクが喧伝され続けました @どうしてPCRの再陽性化が見られるか? ウイルスや免疫の専門家たちは 症状が改善しPCRで陰性化した後に 再度PCRで陽性になった例について *PCR検査の結果に信頼性がおけない可能性 *体内に残存したウイルスが再活性化した可能性 *免疫システムが弱く抗体が充分でないため 新たに再感染した可能性 といった機序を考え 結論を出すには更なる検討が必要とコメントしていました @PCR再陽性化は どういう臨床的意義を有するのか? しかし6月になり Travel Med Infect Disという医学誌に Testing Dilemmas というタイトルのEditorialが発表され PCR再陽性例の解釈について 疑問が投げかけられました そもそも PCRで陽性ということは 完全な形でのウイルスの存在や 活性化した感染を必ずしも意味するものではなく たとえゲノムシークエンスが行われても 生きたウイルスの存在を証明するものではない というのです だから PCRで再陽性になったからと言って その患者さんの体内に 他者に感染するような完全なウイルスが存在するとは とても言えない と主張します さらにPCR検査では ウイルス量が測定感度閾値より少ないと 偽陰性になる可能性があり 改善後のPCR陰性というのが 信頼おけない可能性もあると指摘しました つまり PCR検査というものは 感染性を有するウイルスと 非感染性のウイルスを 区別することはできないのだから 治癒後にPCRが再陽性化することを 過大評価して騒ぐのはいかがなものか? と疑問を投げかけたのです PCR陰性化後に再度陽性化しても 再感染やウイルスの保持を意味するものではなく それを明らかにするためには ウイルス量 抗体反応 詳細な症状の評価などを 行うべきである 再感染か否かを評価するには 患者さんから得た検体からウイルスを分離して 全ゲノム解析 電顕での検討 細胞への感染性の評価などを行う必要があり そうした分析なしに 軽々しく再感染云々の可能性を口にすべきでないと 警鐘を鳴らしました @PCR再陽性化例は 再感染しているのか? 実際に 韓国で行われた 285例のPCR再陽性例の検討では 再陽性化した際に患者さんから採取した検体から 感染性のあるウイルスが分離できた例は 1例もありませんでした また 8月に中国から報告された PCRで再陽性化した患者さん619例の検討による その臨床的特徴では 陽性例は全体の14%で 非再陽性例と比較して 軽度の症状の若い人に多く 入院期間は短く平均17日だったことが示されましたが 98%が抗体を有していて その抗体値は非再陽性例と変わらず 感染性のウイルスは全例で分離されず 完全なゲノムは1例も認められず ゲノムのフラグメントが認められたのみ と報告されました そして PCR再陽性例は ウイルスの活動性は認められず 咳や痰からの感染リスクはとても低いと推測される と結論しました こうした経過から PCR再陽性化例の再感染の可能性について 疑問が呈されるようになっていますが では 新型コロナウイルスは 本当に再感染しないのでしょうか? それとも 再感染することがあるのでしょうか?
高橋医院