マリアナ・マッツカートが語るコロナ後の世界・1
NHKのBS1スペシャル コロナ危機 未来の選択 世界の知性が語る「コロナ後の未来」 この番組では 初登場のふたりの女性へのインタビューも行われました 書き手は不勉強なことに おふたりとも存じ上げていなかったので とても良い勉強の機会になりました 最初に登場する女性は 「官は民よりイノベーション力で劣る」 という“神話”を打ち砕いた イギリスの経済学者でイノベーションの専門家の マリアナ・マッツカートさん パンデミックは 多くの危機のひとつに過ぎないので 経済危機 気候変動などの以前からある危機にも しっかりと対応すべきであると主張されます そして コロナ危機の今こそ 国家主導で技術革新を起こすべきだと提唱し 「企業家としての国家」の重要性を説かれます @危機における国家の役割とは? 国家の役割に関するこれまでの通説は 国家は市場が失敗したときだけ介入すべきという考え方だが これは大きな誤解である 今 必要なことは 国家が企業と共同でイノベーションを起こし 新たな産業を創出していくことで 経済活動における国の役割を再検討すべきである これが 彼女のいちばん大きな主張なのですね! @ワクチンと国家 ワクチンの配給 価格の決定は 国家が主導的に決めていくべきで ワクチンが適正な価格で広く行き渡るようにするためにも 資本主義の在り方を変えていく必要がある 「公共の利益」という これまで軽んじられてきたアイデアを 資本主義の中にしっかり位置付けさせなければならない そもそも ワクチンの開発には税金も用いられているのに 利益を製薬会社が独占するのはおかしい 国家はもっと企業に口出しをすべきだし 公的資金が公共の利益につながるよう 公的支援にもっと条件を付けるべきだ たとえば フランスのマクロン大統領は 企業を変えさせるため 支援の条件にCO2排出削減を約束させ デンマークでは タックスヘイブンを利用して納税を回避する会社には 補助金を出さないことにした こうしたことが もっと行われるべきだ @コロナ危機はこれまでの経済のあり方を変えるチャンス 新型コロナの経済対策に 多額の公的資金が使われている今こそが 資本主義を見直すチャンスである 企業が 得られた利益で自社の株を購入し 株価を上昇させて役員の給与を上げるやり方は 資本主義システムを用いた「利益の抜き取り」であり この機会にそうしたことを是正していかなければならない 国家が企業をリードする形で公的資金を投入して 社会の課題が解決されるイノベーションが理想的だ @「企業家としての国家」 経済が危機にあるときこそ 国家は予算削減せず イノベーションを起こして雇用を創出すべきだ 歴史的には 公的資金がイノベーションの原動力となり 企業の研究開発が活発になった 国連が掲げる持続可能な開発目標を実現するには 野心的な志のある公的資金投入が必要で 国家が理想を掲げ 方向性を決定し そのもとに企業や市民が実現に取り組む体制が望ましい また 政府のチャレンジが失敗しても それを責めてはいけない 政府は失敗すると民間企業より叩かれるが 大切なのは失敗から学ぶことだ どうして人々は イノベーションは民間が起こすと信じているのか? 人々は民間企業については サクセスストーリーしか語らず 公的セクターについては失敗例ばかりあげつらう 国家は市場の尻拭いをするだけでなく リスクをとってイノベーションも起こすべきで 国家は最初の投資家になるべきなのに 現在の多くの国家は そのようなきちんとした仕事をしていない 国家はよりクリエイティブになり 民間企業の良きパートナーとして社会に貢献すべきである また 国家は民間が投資を怖れるようなハイリスクな先駆的分野に 率先して投資すべきである これまで行われた 月面着陸 インターネット ナノテクなどは 全てが国家による投資から始まった ハイテク分野だけでなく 環境保全と経済成長の両立を図るグリーン成長の分野 再生可能エネルギーへの転換に向けても 各国の政府が積極的に投資して取り組むべきだ 国家がリスクをとって投資を始めれば 企業は後からついていくものだ 「国家が先駆的な投資家であれ」 というアイデアは初めてうかがったので とても新鮮でした 日本の高度成長期の通産省のようなイメージでしょうか? いちいちごもっともだとも思いましたが たとえば今の日本の官僚組織に そこまで求めて叶うものかな?という疑問も持ちました どうなのかな?
高橋医院