パンデミックにおける精神的な状況を読み解きながら
「新実在論」の解説が始まります

<パンデミックが明らかにする「意味の場の存在論」>

「意味の場の存在論」について語りたい

意味の場の存在論について語るガブリエル

意味の場とは
およそ何かしらのものが現れる場で
現実のあらゆる存在が 常に意味とともにある

人々の感覚が生み出す意味と離れては
何ひとつ存在することはない

物質はひとつでも そのイメージは複数に増え得る
そうしたイメージを結びつけるものが対象であり
これが「意味の場の存在論」である

イメージを結びつけるものが意味の場の存在論であると語るガブリエル

対象はイメージの外にあるのではなく
イメージを結びつける力なのである

このように考えると 世界という実在は消えていく

世界という実在は消えると説くガブリエル


えっ? うーん うーん 難しいよ~(苦笑)

テレビを見ながら頭を抱える書き手を置き去りにして
ガブリエルは論を展開していきます

過去 現在 未来をつなげるものは何か?

過去も現在も未来も
ひとつながりではなく 切り離されていて
それらを結びつける法則など存在しない

だから「世界は存在しない」という結論に至る

現実は相互につながっていない

ある実在は 独立した断片で構成され
断片同士はときに重なり合っている

現実は 絶えず変化に開かれている

自然科学の前提となる 固定的な物質や直線的な時間も
ひとつの錯覚に過ぎないのだから
自然の法則が 過去 現在 未来を結びつけるわけではない

「意味の場の存在論」における 私という存在は何か?

個人主義は
個人のアイデンティティという幻想に基づいている

人は モノを消費するもので
消費者行動に支配される個人だという考え方は
消費資本主義のイデオロギーにより作りだされ押し付けられたもので
そのような個人は存在すらせず 単なる幻想である

人は 変化する複雑なプロセスである

個人として存在しているのではなく
非常に複雑なプロセスと現実のネットワークで
他者と重なり合っていて
他者とともにあり 道徳的に結びついている

だから 人は個人として存在しているという錯覚を認識することで
初めて自由になり 現実への一歩を踏み出せる

錯覚を認識することの重要性を主張するガブリエル

新実在論では
プロパガンダ イデオロギー 幻想 妄想 偽りなどから独立した
実在の形があると考える

意味の場としてのリアルな関係性は既にあり
発見されるのを待っている
私たちは その関係性の一部なのである

私たちをつなげているのは 現実そのもので
私たちは現実から逃れられない

う~ん ガブリエルが言わんとするところ
特に人の実在の在り方については
なんとなくわかる気がするのですが
でも ちょっと構造主義的じゃない?


<コロナがくれた最後のチャンス>

危機の時こそ決断の時で
このまま悪の道を進み続けるか 道徳的に良いことをしていくかを
今こそ決断しなければならない

人類全体として この決断を迫られている
今回のパンデミックが
善か悪かを決める 最後のチャンスである

回のパンデミックが善か悪かを決める最後のチャンスであると語るガブリエル

パンデミック以前の世界では
目まぐるしい資本主義活動
民主主義の危機
世界的な気候変動
などが起こっていたけれど

そうした状況に危機を感じていたからこそ
人はこのパンデミックに大きなショックを受けている

人類は皆
自分たちが間違った方向に進んでいることを無意識に気づいていて
パンデミックは 私たちを認識の眠りから呼び起こした

だからこそ この全人類的ショック状態は
ウイルスにより引き起こされた「形而上学的なパンデミック」と言える

私たちは ウイルスからの呼びかけに どう答えるべきか?

思考や倫理の新たな歩みを進められるのか?
パンデミック以前の道に戻ってしまうのか?

どうすればいいのか?

ここでガブリエルは
「相手が正しい可能性はある」という
ハンス=ゲオルグ・ガダマーの言葉を引用します

相手の視点を 感情も含めて考慮する必要がある
相手の視点からどう見えているかを知ることが大切で
他者の視点を取り入れることで 自分の視野を広げられる
それが倫理的な進歩につながる

物の見方は 人の数だけ無数に存在し得る
人はどこまで 他者の眼差しや言葉に想像力を持てるか?

先が見えない不安に負けず 耳をすます

今 人は 人間の自由への攻撃の真っただ中にいるのだ

そして最後にカントの言葉が引用されます

哲学は教えられない
哲学することしか 教えられない

語るガブリエル

今回のパンデミックは
現代人の生き方に大きな疑問符を突き付けるもので
これを機に人の価値観が変わることができるか
という問いは なるほどと思わせるところがあります

人はどこまで 他者の眼差しや言葉に想像力を持てるか?
というメッセージにも共感できる

混沌とした変革期において社会に進むべき指針を示すという
哲学が持つ本質的な役割が果たされる場面を
今回のパンデミックはまさに提供しているということでしょう

でも もう少し考えてみないと まだまだ消化不良です(苦笑)

 

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