関東と関西では変異株の種類が異なる?
新型コロナウイルスの感染拡大が全国で止まらず これから先 厳しい状況が続くことが危惧されますが 4/2にNHKをはじめとする報道各社が 関東と関西では 問題となっている変異株の種類が異なるのでは? という非常に興味深い仮説を提示しました この新たな仮説の根拠となったのが 東京医科歯科大学が発表した E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株が これまでにCOVID19で医科歯科病院に入院した患者さんの 1/3(36人中12人)で検出され 3月に限ると14人中10人 71%で検出されたというデータです ちなみに関西圏で増加しているN501Y変異を有するイギリス株は 検出されなかったそうです <E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株> E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株 ですか? 先週説明したように 現在問題視されている3種類の変異株で イギリス株はN501Y変異を有し 南アフリカ株 ブラジル株は それに加えてE484K変異を有しています N501Y変異は 感染力の増大に寄与し E484K変異は 免疫逃避に寄与する と考えられています しかし E484K変異だけ有しN501Y変異を有さない変異株は これまでにあまり話題になったことがありません ところが実は 今年2/19に国立感染研から E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株が 関東全域で91例検出されたことが報告されていたのです また2/18には 今回の話題を発信した東京医科歯科大学が E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株が 入院患者さんから検出されたことを明らかにし カナダ株として報告していました 朝日新聞も こうした報告をしっかりと報道していました 書き手もこれらの報告には気が付いていましたが いったい何なの?という程度の認識で ここにきてこうした展開になるとは 予想すらしておらず 具眼でなく愚眼 お恥ずかしいかぎりです(苦笑) 一方 慶応大学の臨床遺伝学センターは ほぼ同時期に E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株は 海外から流入したと考えられていたけれど 日本でのみ流行している株にE484K変異をともなう変異株を検出し E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株が 日本国内で独自に発生した可能性を示唆しています <関東と関西では変異株の種類が異なる?> E484K変異を有しN501Y変異を有さない変異株には このようなバックグラウンドがあったのですが この変異株が東京で広がりつつある事実が明らかになり 俄然 社会の注目を集めるようになった訳です 上述したように 東京医科歯科大学病院では これまでの累積で患者さんの1/3でこの変異株を検出し 直近1ヵ月に限ると71%で検出されています また 昭和大学病院では 入院患者さんの60%(15人中9人)で この変異株が検出されています ということで 関西圏では イギリス株が急激に増加しているのに対し 東京では E484K変異だけを有する変異株が増加しつつある という可能性が提唱され始めたのです イギリス株は感染力が強いのに対し E484K変異だけを有する変異株はN501Y変異を有していないので 感染力はそれほど強くないと推定されています 最近の関西での感染者数増加が爆発的なのに対し 東京では増加傾向にはあるものの そこまで激しくないのは こうした変異株の違いが影響しているのかもしれません 但しE484K変異は免疫逃避に寄与していますから ワクチンの効果が減弱する可能性があり要注意です <各種の変異株の検出体制の早急な整備が望まれる> 現在 変異株の検出はイギリス株を中心になされており E484K変異だけを有する変異株の検出は イギリス株の検出に比し技術的にも容易に行えないため E484K変異だけを有する変異株の動態がどうなのか 不明な点が多いことも事実です 変異株の検査体制が早く整備されて 全国での各種変異株の流行の動態が明らかにされることが望まれます また4/5のニュースでは 仙台で2月以降に診断された新型コロナ患者さんの なんと80%がこの変異株だったと報告されました この変異株は 知らぬ間に 関東以外でも広がっているのかもしれません ちなみに 何度も繰り返して述べてきましたが どんな変異株でも その対処法は同じで マスクの着用 手洗いの励行 人混みを避ける こうした生活のなかでの基本行動を徹底していきましょう
高橋医院