日本酒好きの外人さんたちが
外国で醸造所を造っていることを ご紹介しましたが
海外での日本酒造りに挑戦している日本人もおられます

<パリでフランス米を用いて日本酒を造る日本人の若者たち>

平均年齢30歳の14人の日本人が
WAKAZE 和の風 
という名の会社を立ち上げて
新たな日本酒造りに挑んでいます

WAKAZEのメンバーたち

ジャスミン ハイビスカスや
ユズ ショウガ 山椒などの国産ボタニカルを加えて発酵する

赤 白のワイン樽で熟成させる

といった斬新なアイデア

もろみの搾りは
専用袋で搾る槽搾りを手作業で行います
手間がかかるけれど
繊細な香味を表現できるからだそうです


緑茶 番茶 ジャスミン茶などの茶葉を入れて
独特の香りを強めた日本酒は
マスカットのような香りがするとのこと

なんだか ワインのようですね!

カラフルなWAKAZEの日本酒のボトル

彼等は 自分たちの作品を
モノクロの日本酒が色彩を手にしたような感じと評し
日本酒でも味の表現の多様性は重要だ
と語ります


彼等の思いは
日本酒を世界酒にしたい
世界中で日本酒が造られるようにしたい 
ということで

そのためにフランスに進出しました

パリ郊外に
大きな醸造用ステンレスタンクを
12個も揃えた醸造所を作り

南フランスの米どころのカマルグの米を原料にして
パリ郊外の硬水 Bio規格のワイン酵母を用い
フランス産の日本酒造りを試みます

フランスで醸造に励むWAKAZEの人たち

フランスの考え方 思想 技術を
日本酒造りの文脈に取り込みながら
日本酒が
どんな環境でも作れる自由な醸造酒であることを証明したい希望 決意を語ります

彼等がパリで醸造した新スタイルの日本酒は
フランスをはじめ ヨーロッパ17か国で販売され始めて
なかなか評判が良いそうです

彼等がパリで醸造した新スタイルの日本酒

ビジネスとして成功すると良いですね!


<フランス米を日本に輸入して日本酒を造る老舗蔵元>

愛知の蔵元 萬乗醸造の久野さん
自社の日本酒をフランスの3つ星レストランに売り込んだ際に
原料の生産地を重視する
フランスのテロワールという文化の重要性を知られ
とても共感を覚えたそうです

久野さん

そして 
フランスの米どころの南仏カマルグに出かけ
現地のお米の「マノビ」に出会い
そのお米で日本酒を造ろうと計画を始めました

カマルグの畑にたたずむ久野さん

最初は カマルグで 
コシヒカリ 山田錦を造ろうとしましたが
うまく作れなかったそうです

そこで テロワールを大切にしたいので
フランス米を使いたいと思うようになったとか

マノビは 山田錦に似て 麹菌が働きやすい
鉄分が多い赤いお米です

マノビ

同じカマルグでも 
上述のWAKAZEが選んだのとは
異なる種類のお米のようです

しかし 実際にマノビを日本に輸入してみると
フランスでは米の大きさの選別などが大ざっぱなので
酒作りのための均一の米が準備できず
輸入したマノビの20%が
日本での選別段階でふるい落とされてしまいました

また マノビは精米に弱い

マノビと日本米を比較した写真

山田錦は50%ほど磨いて
雑味をそぎ落としていますが
マノビは脆くて精米の途中で割れて壊れて
3500Kgが1200Kgになってしまいました

でも 久野さんはポジティブで
フランス米は 
磨かない方が逆に個性が出るのではないか
「磨き」の意義を見直す機会になった
と語られます

フランスで日本酒を飲んで 
その美味しさにびっくりして
日本に移住して久野さんの酒蔵で修行しているフランス人と
一緒に試行錯誤を重ねられました

そして マノビで造った
「カマルグに生まれて」出来上がりました

「カマルグに生まれて」のボトル


マノビで造った日本酒と
日本の米で造った日本酒を飲み比べると
あまりに香りが異なるのでビックリしたそうです!

マノビの方が ヘーゼルナッツの香りがするとか

ヘーゼルナッツの香りがする日本酒
ちょっとイメージできないけれど 面白そうですね!


番組では「カマルグに生まれて」を抱えて
パリのホテル・リッツのシェフ・ソムリエを訪ねる場面が
放送されていました

シェフ・ソムリエの女性は
日本の米とマノビで造った日本酒は 香りが全く違うことに
とても驚きます

テイスティングするシェフ・ソムリエの女性

日本米は 奥行きがあり 豊かな香りがする

マノビは ミネラル感があり 後味に土壌の塩気が残る
爽やかでフランス人やヨーロッパ人に受け入れられすいと思う

そのように マノビの日本酒を高評価してくれました


久野さんは 
南フランスのテロワール
太陽に光が降り注ぐ
カマルグの田んぼの情景を伝える日本酒を造りたい
と言われます

素敵ですね!

書き手は10年以上前に
カマルグに行ったことがありますが
野生のフラミンゴや白馬が生息している
とても開放的でのんびりとした田舎でした

カマルグのフラミンゴ
カマルグの白馬

有名なのは カマルグの塩 ですね!

カマルグの塩

カマルグで面白かったのは
食事をしたレストランのテラス席に
蚊取り線香が置いてあったこと

フランスの蚊取り線香

ギャルソンさんに
これはきっと日本からインポートしたものだよ と言っても
なかなか信じてもらえませんでした(笑)


クローズアップ現代では 
ソムリエの田崎真也さんが
久野さんの日本酒についてコメントされていました

香りは 米由来の香りと
バナナ 洋なし ほんのりライチのような香りが感じられたり
グリーンのメロンのような香りもある

酸味とのバランスも良くて 溶け込んでいくような感じ
甘味を感じながら やわらかく滑らかで 
ずっと余韻が持続する

コメントする田崎さん

この日本酒からわかることは
米にもテロワールがあり
作る場所によって 米の性格 性質が異なり
水質 気候も影響するので
最終的にはできる日本酒の品質が変わってくる
ということ

その日本酒は まさにテロワールを表現している

世界各地で日本酒が造られるようになると
世界の色々な食卓で提供されるようになってくるだろう

そうすると どんどん品質が良くなり
それにつられて日本の日本酒も進化していくだろうし
消費者にとっては 面白味がすごく広がるのではないか田崎さんは話をまとめられました

日本酒が世界酒になり 選択の幅が大きく広がって 
楽しいことになりそうです
高橋医院