では ACE2は
新型コロナウイルス感染の病態に
具体的にどのように関わっているのでしょう?

<新型コロナウイルス感染によるACE2発現低下が病態を悪化させる>

新型コロナウイルスのACE2への結合により
細胞表面でのACE2発現が低下するので
その作用が減弱して 炎症が起こりやすくなります

新型コロナウイルス感染によるACE2発現低下が病態を悪化させることを示す図

さらに 新型コロナウイルス感染にともなう
炎症性サイトカイン インターフェロンの増加により
細胞表面のACE2発現が低下するので
炎症が増強してサイトカインストームに進行していきます


<可溶性ACE2が新型コロナウイルス感染の新たな治療薬になる?>

そこで 血液中に可溶性タイプとして存在するACE2
遺伝子工学の手法を用いて作成し(リコンビナント)
新型コロナウイルス感染の治療薬として用いるアイデアが
カナダから発信され免疫学会で紹介されました

発表するカナダの研究者
発表するカナダの研究者・その2


この可溶性ACE2
血液中で新型コロナウイルスのスパイクタンパクに結合して
いわばスパイクタンパクをブロックするので

ウイルスの肺胞上皮のACE2への結合を抑制して
感染を防御できる可能性があります

可溶性ACE2による感染防御を示す図

また ACE2本来の働きにより
炎症性のアンギオテンシンⅡを代謝し
抗炎症性のアンジオテンシン1-7を増加させるので
炎症性サイトカイン産生を抑制できます

可溶性ACE2による炎症性サイトカイン産生抑制を示す図


実際に
ヒト可溶性リコンビナントACE2の APNO1
新型コロナウイルスの感染を抑え
全身のACE2発現臓器のダメージを防御できること
が示されました

全身のACE2発現臓器のダメージを防御できることを示す図


さらに興味深いことに
APNO1の投与により
新型コロナウイルスの中和抗体が誘導され
抗ウイルス作用が発現すること

APNO1の投与は
抗ウイルス薬のレムデシビルの作用を増強することも
報告されています


このように 人工的に作成した可溶性ACE2は
血中で新型コロナウイルスを補足するだけでなく
炎症も抑制するという
一粒で二度美味しいタイプの働きがあり
それに加えて更なるプラスアルファ効果もある

とても興味深く拝聴しました

新しい治療のアイデア 面白いです!
高橋医院