ワイン造りに適したブドウ
ワインの原料であるブドウの実がなる ブドウの木について解説します <ブドウの木の栽培に適した地域> ブドウの木は 植えてから収穫できるようになるまで何年もかかり 1年に1度しか収穫できません しかし 生命力は強く 切り枝を地面に刺すだけで 簡単に根を下ろして自生を始めます ブドウの木が栽培される地域は 北緯30~50度 南緯20~40度の間に限られ 年間平均気温が10~20℃ 年間降水量が500~1600ml の条件で 基本的に乾燥地域を好みます 典型的な栽培地は 地中海沿岸 中近東 ギリシア本土 エーゲ海などで 温暖な気候 高低差に富む地形が 栽培には理想的とされています そして適度な雨量が ちょうどよい湿気を与えてくれます 世界で有名なブドウの栽培地は 谷と盆地があることが多く 昼夜の温度差が大きいことがポイントになります 光合成も呼吸も 温度が高いと活発で 低いと不活発なので 昼夜の温度差が大きいと 昼の光合成量が夜の呼吸量を凌駕するので 糖分や香味成分が多い ワインに適した良質なブドウができます <緯度とワイン> 白ブドウは高緯度 赤ブドウは低緯度の地域で 良質なものが収穫されます 低温な高緯度で作られたブドウは 白ワインの味わいを決める酸味・リンゴ酸が保たれ アロマ成分も充分に生成されます 一方 ある程度気温が高い低緯度で作られたブドウは リンゴ酸が低下し 果皮の着色が亢進するので 赤ワインに適したものになります 最近は 暑い産地のワインは酸味が少ないので香りに乏しく 高緯度の冷涼さが好まれる傾向で ましてや地球温暖化の影響もあるので より冷涼な高緯度の地域でブドウが作られるようになってきています <ワイン造りに適したブドウ> 粒が小さく 果実に弾力があり 酸度が適度に高く 糖度がある程度以上あるブドウが適しています 糖度と酸度のバランスが大事なポイントで 香り 味に影響を与える成分も重要です <ブドウの種類> ブドウは 遺伝子の突然変異が起こりやすく 長い歴史の中で 突然変異 環境淘汰 自然交雑 人為淘汰などを繰り返して 多くの種類のブドウが生まれてきました 人工的に 古い品種をかけ合わせて新しい品種を作ることも 度々行われています 主にワイン造りに用いられるのは ヨーロッパ系品種とアメリカ系品種です ヨーロッパ系品種は ヴィティス・ヴィニフェラと呼ばれます カスピ海沿岸が発祥地で自生していたブドウで 西に広がった西洋系 東に広がった東洋系(日本の甲州 中国の竜眼などは東洋系) に分類されます 果実に含まれる糖を 自身の重さの1/3ほどにまで濃縮でき 酸味 タンニンなどとの自然のバランスにより 保存性の高いワインが造れます アメリカ系に比べると カビなどの病気に弱いのですが 異なる環境 気候に適応できる生命力の強さもあります 数百種類の品種があり 世界各地の多様な環境下で栽培されています アメリカ系品種は ヴィティス・ラブルスカと呼ばれます アメリカ大陸東部が発祥地で 耐寒 耐病性に秀でていて 降水量が多くても玉割れしません 香りがかなり強いのが特徴です 昔からフィロキセラと共存していたので フィロキセラに耐性を有していて フィロキセラがついたアメリカ系品種がヨーロッパに持ちこまれて 大規模なフィロキセラ禍が起こってしまいましたが 自らが接ぎ木の台木となることで災害を救いました 現在は ワイン用のブドウの品種の数は減少傾向にあり 地域で栽培されていた地元品種が減り 一握りの人気の国際品種が世界のブドウ畑を席巻しようとしています しかし その反動で最近は 世界各国で地元の品種を見直す動きが起きてきています また ブドウの品種により世界分布のパターンが異なります 特定の地形 気候の地域でしか育たない品種と 世界中のさまざまな環境に適応できる品種があるからです シャルドネ カベルネ・ソーヴィニヨン メルロは 栽培可能な条件範囲が広い品種で 世界各地で栽培されています 一方 ピノ・ノワールは 気候 土壌の条件が極めて厳しい品種で ブルゴーニュ以外では オーストラリアのヤラ・バレー ニュージーランド南島 アメリカのオレゴン等以外では 高品質なものは栽培されていません 近年では 遺伝子解析によりブドウの品種の生い立ちが解明され ピノ・ブランは ピノ・ノワールが突然変異したもので アントシアニンの遺伝子のスイッチがオフになっているので 果皮が白いこと カベルネ・ソーヴィニヨンは カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交雑で生じたこと といった興味深い事実が明らかにされています
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