ブドウ栽培に適した土壌
良質なブドウの実がなる土壌とは どのようなものなのでしょう? <水はけが良い土壌がいちばん> 土壌のいちばんのポイントは 水はけの良さです ブドウの木は 成長期に水が5日間停滞しただけで 根腐れが起きてしまうのです 理想的な土壌は 水はけがよく なおかつ 地下水面の高さが十分で ブドウの根につねに水分が供給されるものです 一方 ブドウの実が色づくようになったら 地下水面が下がり ブドウの木の成長を止め エネルギーが ブドウの木でなく実の成熟に振り向けられる そのような土壌が望ましい では どうして水はけがそんなに大切なのでしょう? まず ブドウの木は根が活発に呼吸するので 土壌に酸素が豊富に存在する方が良いのですが 水はけが悪いと 水が多く存在して酸素が減るので良くありません また 暖かい水は冷えるのに時間がかかるので 水が少ないほど 土壌の昼夜の温度差が大きくなり 果実の成熟に有利になります 水はけが良いと 根が深く発達するので ブドウの木の生理学的安定性が高まるとも言われています 興味深いことに 枝葉の成長期には 水が適度に不足していた方が良いと言われています 実が小さくなって収量は減りますが タンニン フェノール類が増えて 質の良い実になるのだそうです いつでも水がたっぷりあればよい というわけではないのですね <あまり肥沃でない土壌が良い> 水と同じことが 肥沃さにも当てはまります ワインの質を考えると 土壌はあまり肥沃でなく ブドウの木の勢いは弱い方が良いそうで 樹勢がありすぎるとワインの品質が損なわれるとされています 土壌に十分な水と養分があると 葉は豊かになりますが 実の質はあまり良くならず むしろ多少のストレスが加わった方が 実にエネルギーが配分され 良い実が得られるとのこと 贅沢な環境で育てれば良い というわけではないのですね 面白いです <植物ホルモン・アプシジン酸> 上述した興味深い現象を 科学的に説明するのが 植物ホルモンのアプシジン酸です 植物にも動物と同様に ホルモンがあるのですね! アプシジン酸は 土壌の水が不足した時に 根から地上部の木の本体に送られる植物ホルモンで 木の本体は このホルモンの働きにより水不足を認識して 水蒸気を逃さないように葉の気孔を閉じます そうすると 葉でなく実にエネルギーが配分され 良い実に成熟します アプシジン酸は 成長中の種子で作られる別の植物ホルモンのオーキシンの作用と相反し アプシジン酸とオーキシンのバランスが 実の成熟に影響を及ぼします オーキシンは 実の成熟を遅らせ アプシジン酸は 実の成熟を促進するのです それぞれのホルモンが 適切な時期に分泌されることが大切で 葉が色づく時期に 根が水不足にさらされてアプシジン酸が分泌されると 成熟した良い実が得られるとされています 良い実を得るためには 木や葉のエネルギー状態が悪くなることもいとわないと いうことで とても興味深いです <石灰岩質と粘土質> ブドウ畑の土壌についてよく耳にするのが 石灰岩質と粘土質です 石灰岩質の土壌で育ったブドウは タンニンが強く 力強さがあるけれど コク まろやかさに欠ける 一方 粘土質の土壌で育ったブドウは濃厚です 石灰岩質 粘土質が混じりあう土壌で育ったブドウは 深み コクがあり 骨格もしっかりしているのでいちばん良い と言われています <土壌の化学組成> 最後に 土壌の化学組成ですが ブドウの実の成熟には それほど重要でないとされています 土壌の栄養分が豊富なほど良いのでは?と想像しますが ワインの特徴 品質と 土壌の化学組成とのあいだには 有意な関連性は見出されていないそうです たとえば 土壌の微量元素が触媒となって ブドウの成長を促進させて 芳香物質の生成を促すことはあっても 香り成分の生成に影響することはないとされています ちょっと意外ですね! 土壌に含まれる栄養素としては 窒素 リン カリウム カルシウム 硫黄 微量栄養素などがあり 月並みですが これらのバランスが重要とされます 特に 酵母の働きには窒素が必要とされ 窒素が少ないとブドウの品質が落ちるそうです
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