急性発症1型糖尿病
急性発症型は 1型糖尿病のなかでいちばん多いタイプです <疫学> 多くの患者さんは小児期に発症しますが 思春期に発症のピークがあります <原因> ほとんど(90%あまり)が自己免疫性で さまざまな免疫細胞がインスリンを分泌する 膵臓のランゲルハンス島のβ細胞を破壊します この破壊は進行性に持続します 膵島関連の自己抗体である *グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体 *IA-2抗体 *インスリン自己抗体(IAA) *亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体 *膵島細胞抗体(ICA) のうち いずれかの陽性が 経過中に確認されることが診断に役立ちます ただし IAAは インスリン治療開始前に測定した場合に限ります <症状> 口渇 多飲 多尿などの高血糖症状が出現したあと 約3か月以内に ケトーシスまたはケトアシドーシスに陥ります 尿ケトン体陽性 血中ケトン体上昇 のいずれかを認める場合は ケトーシスと診断されます 臨床的判断により 直ちにインスリン治療を開始した結果 ケトーシスやケトアシドーシスに陥らない例があります <内因性インスリン分泌> β細胞が破壊されるので インスリンが分泌されません そのため インスリン分泌の指標である空腹時血清Cペプチドは0.6ng/mL未満で 内因性インスリン分泌欠乏を認めます <治療とハネムーンピリオド> 1型糖尿病の診断当初にインスリン治療が必要とされ インスリン治療後に数ヶ月間 インスリン治療なしで 血糖コントロールが可能な時期が現れることがあり ハネムーンピリオドと呼ばれます 約30%にみられるとされます 但しこの現象は一過性で 再度インスリン治療が必要な状態となり それが持続する場合が多いです <遺伝子異常との鑑別> 糖尿病を発症する *HNF-1α遺伝子異常 *ミトコンドリア遺伝子異常 *KCNJ11遺伝子異常 などの単一遺伝子異常を鑑別することが大切です <急性発症1型糖尿病の診断基準(2012)> 1 口渇 多飲 多尿 体重減少などの 糖尿病(高血糖)症状の出現後 おおむね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る 2 糖尿病の診断早期より 継続してインスリン治療を必要とする 3 膵島関連自己抗体が陽性である 4 膵島関連自己抗体が証明できないが 内因性インスリン分泌が欠乏している @判定 上記1~3を満たす場合 「急性発症1型糖尿病(自己免疫性)」と診断します 上記1 2 4を満たす場合 (=自己抗体がなくても) 「急性発症1型糖尿病」と診断して構いません 内因性インスリン分泌の欠乏が証明されない場合 あるいは膵島関連自己抗体が不明の場合には 診断保留とし期間をおいて再評価します
高橋医院