ドイツ スイスからさらに東に進路をとって
オーストリアに入っていきましょう

オーストリアワインの宣伝ポスター

オーストリアワインは
生産量の79%が国内で消費されるため
スイスワインと同様に
日本で見かけることはほとんどありません

しかしオーストリアでは
生産者たちの努力と工夫によって
特徴的で高品質なワインが多く生み出されています


<代表的なブドウ>

@リースリング

ウイーン郊外を西に広がるヴァッハウ渓谷を中心に
広く栽培されている白ブドウの品種です

ヴァッハウ渓谷に広がるワイン畑

ドイツワインの解説で お馴染みになりましたね

すっきりとした酸味が特徴でエレガント
白桃やリンゴの風味を持ち
熟成していくと蜂蜜のような甘い香りが加わります


@グリューナー・ヴェルトリーナー

オーストリアで圧倒的な栽培面積を持つ
白ブドウ品種です

グリューナー・ヴェルトリーナーのブドウ

辛口から甘口 フレッシュで軽快なタイプから
重厚なフルボディタイプまで
さまざまなスタイルのワインを生み出す
オーストリアを象徴するブドウです

コショウと同じ香り成分をもつ品種で 
白コショウのような香りが特徴的で
ハーブや洋ナシの香りもします

ミネラル感があり すっきりしていて 
リースリングに近い印象を受けます

グリューナー・ヴェルトリーナーの味わい アロマをまとめた図

和食にもよく合います

グリューナー・ヴェルトリーナのボトル


<ヴァッハウ渓谷>

ドナウ川沿いに
ウィーンから65kmほど上流にあるヴァッハウ渓谷
ユネスコの世界遺産にも認定された
美しいブドウ畑の景観で有名な産地です

ヴァッハウ渓谷の地図

ブドウ畑は
ドナウ渓谷に沿ってある険しい斜面に広がっており
狭い範囲ではありますが土壌も気候も変化に富んでいます

ヴァッハウ渓谷の斜面に広がるワイン畑

ヴァッハウのブドウ栽培面積のおよそ半分が
グリューナー・ヴェルトリーナー
ドナウ渓谷の急斜面の畑の主に下方部で栽培されています

グリューナー・ヴェルトリーナーのボトル

ウイーンからヴァッハウ渓谷へのクルーズで
美味しい白ワインを飲みながら
急斜面に連なるブドウ畑の景観を楽しむのも 
素敵な時間の過ごし方です

ヴァッハウ渓谷へのクルーズ観光船
観光船から見える渓谷の景色

書き手は
この渓谷の中ほどに位置するメルクの修道院が大好きで
何度となく訪問しました

メルクの修道院


<ホイリゲ>

オーストリアワインを語るときに
忘れてはならないのがホイリゲです

ホイリゲの内部の様子

市内北西部の
ベートーベンが暮らしたことで知られる
住宅地ハイリゲンシュタットから
ウィーンの森にかけての地域には
南側を向いた斜面に広大なブドウ畑が広がります

ホイリゲから見渡せるブドウ畑

このあたりが 
「新酒」を意味し自家製ワインを中心に出す
オーストリア東部の名物作り居酒屋の
「ホイリゲ」が集まるエリアで
なかでも市北側のグリンツィング地区が有名です

2019年 ウィーンのホイリゲ文化は
オーストリアのユネスコ無形文化遺産に登録されました

グリンツィング地区にあるホイリゲ

ウィーンのホイリゲ文化は
主に家族経営で受け継がれているワイン居酒屋文化です

「今年の」を意味する「ホイリゲ」は
1年未満のワインの新酒のこと
それを提供する居酒屋も同じくこう呼ばれます

秋一番に収穫され仕込まれたワインは
公式には聖マルティン祭の日(11月11日)に
初めて開封されます

そこでこの限られた日数内で
「只今営業中」を示すのに 入り口の軒先に小枝の束が
目印としてぶら下げられています

ホイリゲの入口の軒先に飾られた小枝の束

かすかに炭酸が残る辛口の白ワインを
ワイングラスではなく
1/4リットルのジョッキで楽しみます

ワインを飲む中ジョッキ

本業はワイン農家なので
料理は簡単な食べ物限定です

供されるのは原則として
調理済みのサラダ ピクルス ハム チーズ パン
などのコールドミールのみで
カウンター販売のセルフサービスです

店で出されるコールドミート
店で出されるパン類

ホイリゲにつきものの音楽「シュランメル」は
シュランメル兄弟がつくりだしたウィーンの大衆音楽で
お客が楽しんでいるテーブルに近づいてきて
ヴァイオリン アコーディオン ギターを演奏しながら歌います

演奏するシュランメル楽団のメンバー

書き手は 2010年頃に起きたアイスランドの火山爆発で
ヨーロッパのフライトが全キャンセルされたとき
ちょうど学会でウイーンにいて
しばらく幽閉生活を余儀なくされましたが
そのときはホイリゲに何度もお世話になりました(笑)


<シュトゥルム>

シュトゥルムは
搾り終わった収穫後のブドウに酵母が加えられ
発酵が始まってから数日たったアルコール飲料で
ワイン醸造の過程で作られます

ワインになるまで発酵に要するのは2~3週間ですが
シュトゥルムを楽しむのは3~5日が勝負です

発酵の途中で取り出されるシュトゥルムのアルコール度は
4~5%が一般的で
いわば「ワインの一方手前」の飲み物

瓶に詰めたあともワインになるまで発酵は続き 
二酸化炭素も発生し続けます

飲める時期も
その年のワインの新酒が解禁される前の
8月末から10月末頃までだけ
楽しめる場所と期間が きわめて限定されています

にごり酒のような外観のシュトゥルム

シュトゥルムの味の特徴は
発酵してできたアルコールと
発酵しきらないで残った糖分と果汁の新鮮さで決まります

濁り酒のように不透明で
少し甘くて 微発泡で とても新鮮

書き手は初秋のベルリンで
一度飲んだことがありますが とても美味しかったです
高橋医院