フランスワインの格付け
ヨーロッパ諸国のワイン事情を説明してきましたが いよいよ最後に 世界のワイン大国のフランスの解説をします <フランスワインの概論> フランスでは 原産地の「テロワール」を重視し ブドウ栽培地それぞれの気候や土壌に最適なブドウ品種を 伝統的な方法で栽培しており ワインの醸造も伝統的方法で造っています 有名なボルドー ブルゴーニュ以外にも 近年は 南部のラングドック・ルーション地方や南西地方などの 安価でカジュアルなワインが手に入りやすくなっています ブドウ畑の面積はスペインに次いで世界第2位ですが 生産量はスペイン イタリアと世界一の座を争っていて ワインの輸出額は世界一です 輸出の最大市場はアメリカ 昔からの伝統的輸入国はイギリスで 最近は中国への輸出量 輸出額が著しく伸びています <格付け> フランスワインを特徴づけるのが 古くから存在する厳格な格付けシステムです @AOC 原産地統制呼称法 フランスではもともと 格付けとブドウ産地の結びつきが強く トップカテゴリのワインには テロワールに基づいた原産地統制呼称法(AOC)が 徹底されています このAOCにより それぞれの生産地で栽培可能な品種や製造法が決められている からこそ 毎年でき上がるワインの味わいや風味にブレがないのです こうして原産地の真正性が守られ テロワールとの密接な関係が維持されます ボルドーなら シャトーごと ブルゴーニュなら 畑ごと シャンパーニュなら 村ごと の格付けがあります 1935年から原産地統制呼称法が用いられていましたが 2009年に新規定に変更となり 「AOP」「IGP」「Vi n de France」 の3カテゴリーになっています *AOP(原産地呼称保護ワイン) 特定の産地で生産される上級ワインに与えられ 産地 使用されるブドウ品種 醸造方法などが 細かく定められています ワインボトルのラベルの表記は 「Appellation 産地名 Protégée(またはContrôlée)」となり 産地名の部分には 「Romanée-Conti(畑名)」 「Vosne-Romanée(村名)」 「Bourgogne(地方名)」 などが入ります *IGP (地理的表示保護ワイン) 生産地域を表示することができるテーブルワインに与えられ 指定地域の指定ブドウ品種の使用や 最低アルコール度数が定められています 畑まで細分化されている「AOP」よりも 護している区分けが広く規定も緩やかです *Vin de France (テーブルワイン) 特定の生産地域の表示がないテーブルワインで 比較的価格がリーズナブルで 生産地域の表示がないため自由に造られています この格付けは「質の良さのランク」ではなく 規定をクリアしたワインほど上級の格付けとなりますが 結果的に「AOP」のワインほど質が良いものであることが 多くなっています ただし 生産者の意向によって 規定をクリアしていない品種を使用してワインを生産し 本来ならば上級ワインに勝るとも劣らない品質であるのに 最下級の「Vin de Table」で販売しているという場合もあります @グラン・クリュ グラン・クリュは フランスワインで多く使われている言葉で ボルドー ブルゴーニュ アルザス シャンパーニュなどの グラン・クリュが有名です 「最高峰の」というイメージがありますが 実は地域によってその意味合いが変わっているので 注意が必要です ブルゴーニュ アルザス シャンパーニュの場合は クリュは特定のワインを生み出す畑 またはそこで収穫されたブドウから造られたワインを意味するなど 畑や区画などが対象です *ブルゴーニュのクリュ ブルゴーニュのグラン・クリュは 原産地呼称・AOCと結びついているのが特徴的で 端的に言えばグラン・クリュは「特級畑」のことで ロマネ・コンティ モンラッシェ エシェゾーなどが それに当たります シャブリ・グラン・クリュやコルトンでは 「特級畑」という意味合いで使われない場合もありますが 厳選された畑であるクリマなど産地が 関係している部分は共通しています このようにブルゴーニュのAOCでは グラン・クリュを頂点とし その下にプルミエ・クリュが続き さらにその下に 畑名 村名などが続く ピラミッド型が基本となっています つまりブルゴーニュのグラン・クリュは 最高峰の畑で造られたワイン と捉えることができます
*ボルドーのクリュ 一方 ボルドーのクリュは サン・テミリオン(AOCサンテミリオン・グラン・クリュ)を除き 特定のAOCと結びつくものではなく あくまでシャトーが対象となります 1855年にナポレオン3世の要請により制定された メドックとソーテルヌのグラン・クリュ格付けに選ばれたシャトー 1953年に制定後 1959年に改定された グラーヴのグラン・クリュ格付けに選ばれたシャトー 1954年に制定されたサン・テミリオンの格付けに選ばれたシャトー などがそれに当たります 例えば メドックの格付けに選ばれているシャトーの場合 1級を頂点に 2級 3級 4級 5級と続きます ブルゴーニュでは グラン・クリュの下にプルミエ・クリュがありましたが メドックの格付けを見ていただければ分かるように 「メドック地区のグラン・クリュに選ばれた シャトーの中の1級(プルミエ・グラン・クリュ)」 ということで 意味合いが全く違うものになります さすがワイン大国フランスだけあって ややこしいですね!(笑)
高橋医院