尿路結石は再発しやすいので
治療後も再発予防対策をとることが大切です

<再発予防>

@再発率

5年で45%
10年以内に50~75%
と高いです

食事指導や生活指導が適切になされなければ
80~90%が再発するとされています

再発率の経時的変化を示すグラフ

@再発予防の基本

*水分の多量摂取
*肥満の防止
*食生活の改善
*定期的な通院

特に水分摂取は重要
1日に2L以上の水分摂取の励行のみで
再発率が60%にまで低下することも報告されています

再発予防の基本をまとめた図

*過食を避ける
*適度な運動
*バランスのよい食事を取る
*夕食から就寝までの時間を4時間以上あける
などの生活習慣の改善は有用です


再発予防のための生活習慣の改善についてまとめた図

<代謝異常の是正>

代謝異常が認められる場合は
食事療法や薬物治療によって是正します

@高カルシウム尿症

カルシウムの多量摂取は
カルシウム結石形成に促進的に働くと考えられ
従来はカルシウム摂取を制限する方向で
食事指導されてきましたが

実際には結石患者さんは
有意にカルシウム摂取が少ないことが判明しました

また カルシウム摂取制限は
逆にシュウ酸の消化管吸収を亢進させ
尿中シュウ酸排泄量の増加をきたすことが
明らかになってきました

そこで最近では
一定量のカルシウム摂取が再発予防に大切である
と指導するようになっています

高カルシウム尿症をもたらす原因の診断と
それに基づく治療が重要です

*腸管吸収型

何らかの原因により 腸管からのカルシウム吸収が増加し
血液中のカルシウム量が増加し
腎糸球体のカルシウム濾過量が増え
高カルシウム尿症を生じる腸管吸収型では
カルシウム制限がすすめられます

*腎漏出型

サイアザイド系利尿剤が投与され
近位尿細管でナトリウムの再吸収が亢進し 
同時にカルシウム再吸収も促されます

頻回に再発するカルシウム結石の患者さん 
高カルシウム尿症の患者さんを中心に
1 mg/day から開始し
副作用がなければ 最低でも3年以上は続ける必要があると
考えられています

*骨吸収型

副甲状腺腺腫の存在が疑われ
その場合には腺種を手術的に摘除すると治癒します

@高シュウ酸尿症

尿中に排泄されるシュウ酸の70%は食物由来です

高シュウ酸尿症についてまとめた図

シュウ酸を多く含む食品は
葉菜類の野菜 タケノコ
紅茶 コーヒー お茶
バナナ チョコレート ココア ピーナッツ アーモンド
などで それらの食品の摂取を控えます

シュウ酸を多く含む食品

カルシウムと一緒に摂ることで
シュウ酸の吸収を減らすことができるので
食事中のカルシウム摂取を増加させるよう
食事指導が行われます

@高尿酸尿症

高尿酸血症と同様
プリン体の多い食物を制限する食事指導が行われます

プリン体は 卵類 臓物類 肉類 ビールなどに多く
また ビール以外のアルコール類摂取も薦められません

尿酸生成を抑制するアロプリノールと
尿をアルカリ化し尿中の尿酸の結晶化を抑制する
クエン酸製剤が投与され
これにより シュウ酸カルシウム結石の再発予防もできます

高尿酸尿症により結石が生成された場合には
尿酸排泄促進剤(プロベネシド ブコローム)は使用しません

@低クエン酸尿症

クエン酸の摂取を促進するような食事指導と
クエン酸製剤の投与が行われます

クエン酸は
シュウ酸カルシウム リン酸カルシウムの結晶形成を抑制
カルシウム結石の再発予防に有用
特に低クエン酸尿 遠位尿細管性アシドーシスの患者さんでは
有用性が高いです

クエン酸の結石予防効果を説明した図

また尿中pH を上昇させ酸性尿を改善することから
尿酸結石 シスチン結石の再発予防にも有用です

@塩分

食塩は尿細管におけるカルシウムの再吸収を抑制し
さらに食塩の過剰摂取が
尿中クエン酸排泄量の減少をもきたすので
適度な食塩摂取制限は有用です


<食事内容・食事パターンの指導>

@食事内容の指導

*動物性タンパク質の過剰摂取制限(1.0g/kg/日)
*シュウ酸過剰摂取の制限
*塩分過剰摂取の制限(1.0g/日以下)
*糖分過剰摂取の制限
*脂肪過剰摂取の制限
*一定量のカルシウム摂取(600~800mg/日)
*炭水化物の摂取(穀物摂取のすすめ)
*クエン酸適量摂取のすすめ
が行われます

再発防止のための食事療法について説明した図

@食事パターンの指導

朝昼夕3食のバランスをとり
夕食過食の是正 朝食欠食の是正を行います

また 夕食から就寝までの間隔をあけることも大切で
4時間程度の間隔を目標とします

再発防止のための食事パターンの改善について説明した図


お恥ずかしいことですが 書き手はこれまで
尿路結石の発症や再発に
食事の内容やパターンが関与するという認識は
あまりありませんでした

読み手の皆さんの参考になれば幸いです
高橋医院