胆石の合併症として重要なものが
*胆管炎
*胆のう炎
などの胆道感染症です

重篤な命にかかわる病態になることも
少なくありません


<胆道感染症>

胆道感染症は
胆道を主たる感染の場とする感染症胆石などに起因する閉塞機転により
胆道内に胆汁うっ滞が生じ
それを背景に細菌感染が惹起されます

胆道感染症についてまとめた図

主に腸管内からの逆行性感染が多い

胆道感染症の病因と病態についてまとめた図


<胆のう炎>

胆のう炎85~95%
胆のう胆石が原因で起こります

胆のうの出口の胆のう管が石で詰まり
胆汁が出なくなり 胆のうが膨満して
十二指腸から逆行してきた細菌による感染が
起きやすくなります

胆のう炎の原因としての感染が起こる機序を説明する図

胆石がある人が 
急性胆のう炎を起こす頻度は
3.8~12%とされています

@急性胆のう炎

急性胆のう炎の症状についてまとめた図

上腹部~右わき腹 背中の痛み
高熱 悪寒 吐き気などがあり
熱は経過とともに次第に高くなってきます

急性胆のう炎についてまとめた図

食後1~2時間で起きてくる胆石発作が
2~3時間以上続くようなら要注意です


急性胆のう炎の症状をまとめた図

急性胆のう炎 慢性胆のう炎のエコー所見を比較した図

@慢性胆のう炎

食べ過ぎ 飲み過ぎなどで軽い症状が出ます

脂の多い食事のあとの症状が
繰り返して起こることが多い

症状は食後 時間経過とともに改善するので
多くの人は胃や十二指腸のせいだと思っています

炎症の繰り返しで
胆のうの壁が厚くなり 変形して萎縮するため
胆汁の濃縮 分泌が上手くいかなくなり
症状が出てきます

慢性胆のう炎の病態を説明する図
慢性胆のう炎のエコー所見

<診断>

@血液検査

白血球数 CRPの増加を認めれば
炎症があることがわかります

@エコー CT

胆のうの腫大 胆のう壁の肥厚 胆のう周囲の炎症の有無
などをチェックして診断します

エコーで見られる注意すべき所見をまとめた図

<原因菌>

胆石にともなう乳頭部の収縮力に低下により
腸内細菌の逆行性感染が起こります

原因菌についてまとめた表

@グラム陰性菌

大腸菌 31~44%
クレブジエラ 9~20%
エンテロバクタ シュードモナス 5~9%

@グラム陽性菌

エンテロコッカス 3~34%
ストレプトコッカス 2~10%

@嫌気性菌

クロストイジウム バクテロデス 4~20%

などが原因菌として認められます

抗菌薬の投与を行う際は
培養検査を行い
胆汁にどのような細菌が存在しているか明らかにして
抗菌薬を選択します

治療に用いられる抗菌薬をまとめた表

<重症度>

@重症

*意識障害
*循環・呼吸障害
*腎機能障害
*血液凝固異常をともなう肝機能障害
*DIC
のいずれかをともないます

@中等症

白血球数18000以上
右季肋部に有痛性の腫瘤を蝕知する
症状出現後72時間以上の症状の持続
を認め

画像検査で
*壊疽性胆のう炎
*胆のう周囲膿瘍
*気腫性胆のう炎
*肝膿瘍
などの所見が認められます


<壊疽性胆のう炎 気腫性胆のう炎>

いずれも重症化した胆のう炎です

@壊疽性胆のう炎

胆のう壁の壊死をともない
穿孔 腹膜炎の合併のリスクがあります
壊疽性胆のう炎の画像所見

@気腫性胆のう炎

炎症が胆のう局所にとどまらず
*腹腔内膿瘍 
*汎発性腹膜炎
*敗血症
などの致命的な合併症を起こし
極めて急激な臨床経過をたどります

気腫性胆のう炎の画像所見

いずれの場合も
エコー検査で
胆のう壁の不整 断裂像を認め

CTで
胆のう腫大 胆のう壁の肥厚 不整像 ガスの貯留
胆のう周囲への炎症の波及 膿瘍の存在などを認め
診断が確定されます

<治療>

@抗生剤

鎮痙薬で症状を抑えるとともに
可及的速やかに抗菌薬の投与を行います

@手術

可能な全身状態なら
発症からの経過時間にこだわらず
早期に腹腔鏡下胆のう摘出術を行います

可能ならば
発症から1週間以内 72時間以内がより望ましい
とされます

中等~重症例で
何らかの理由で手術ができない場合は
経皮的胆のうドレナージを行い
感染した胆汁を体外に排出し
全身状態の改善を待って 手術を行います

<再発>

手術をせず保存的治療を行った場合の
再発率は19~36%

経皮的胆のうドレナージを行った場合の
再発率は22~47%

このように胆のう摘出術を行わないと
一定の確率で再発が起きてしまいます
高橋医院