IgG4関連疾患の診断 検査 治療 予後
IgG4関連疾患の解説を続けます <検査> @血液検査 血清IgG(1800mg/dl以上) IgG4(135mg/dl以上)の上昇が特徴で 好酸球増多 非特異的IgE上昇は 40%に見られます リウマチ因子 抗核抗体などの自己抗体陽性 血清補体価(CH50)低下 免疫複合体(C1q)陽性なども認められることがあります 炎症反応を反映するCRPは 正常か微増です CRP高値や発熱を呈する場合は 悪性リンパ腫 Castleman病などの可能性を含めて 診断を見直す必要があります @画像検査 CTやMRIによる 頭頸部 胸腹部などの全身検索が重要で 膵臓 腎臓 後腹膜などに 特徴的な所見を呈することがよく見られます @病理検査 腫大している臓器の内部には リンパ球 形質細胞の浸潤を認め IgG4/IgG陽性細胞比は40%以上 かつ 強拡大視野で10個以上のIgG4陽性細胞があること 線維化所見を認めることが 本疾患の診断に必要な病理所見です さまざまな炎症性疾患や悪性腫瘍でも IgG4陽性細胞がみられることがあるため 陽性細胞の比率が診断に重要になります また 自己免疫性膵炎 IgG4関連硬化性胆管炎 後腹膜線維症などでは 著しい線維化を認めますが リンパ節 涙腺・唾液腺病変では 線維化は軽度かほとんど認めません 軽度から中等度の好酸球浸潤も しばしば認められます <診断基準> @項目1 臨床的に単一または複数臓器に 特徴的なびまん性あるいは限局性腫大 腫瘤 結節 肥厚性病変を認める @項目2 血清IgG4血症を認める (135 mg/dL以上) @項目3 病理学的に以下のふたつを満たす *著明なリンパ球 形質細胞の浸潤と線維化 *IgG4陽性形質細胞浸潤 IgG4/IgG陽性細胞比が40%以上 かつIgG4陽性形質細胞10/HPFをこえる この3項目の 全てを満たすものは 確定診断群 1と3を満たすものは 準確診群 1と2を満たすものは 疑診群 とされます 各臓器の悪性腫瘍(がん 悪性リンパ腫など)や 類似疾患 Sjӧgren症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎性肉芽腫症 サルコイドーシス 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 などとの鑑別が必要です <悪性腫瘍との鑑別> IgG4関連疾患は 臓器の腫大 結節 肥厚をきたすため 常に悪性腫瘍との鑑別を要します IgG4関連疾患の悪性腫瘍罹患率は 健常人の3.5倍とする報告があります 両者が混在する症例も存在し 自己免疫性膵炎の経過中に膵がんを発症した報告や IgG4関連唾液腺炎の経過中に悪性リンパ腫を発症した報告があります <治療> ステロイド治療が有効で 比較的高容量で導入し その後維持療法を行います 初期治療で効果が認められない場合は 診断を見直す必要があります 維持療法の期間は1~3年で 寛解が維持されている場合は中止できます 再燃しても 通常はステロイドのみで再寛解に持ち込むことができます 再燃ないし治療抵抗性であった場合に アザチオプリン等の免疫抑制剤の併用や リツキシマブ有効例の報告があり IgG4低下と長期の寛解維持が期待できるとされます ミクリッツ病で 腫脹が顎下腺だけに限局している場合や 無症状のリンパ節腫脹などの場合は 無治療で経過観察します しかし 線維化が進むと腺分泌機能の回復が難しくなるので 口渇やドライアイなどの症状がみられた場合は ステロイドによる治療を実施します 腎障害では 腎機能がすでに低下した症例でも ステロイド治療開始後1か月で 腎機能は著明に回復しますが 多くの症例で腎機能は完全には正常化しません <予後> ステロイドで治療して良くなっても ステロイドを中止すると 約半分の患者さんで再発・再燃します 生命予後は 比較的良好です 時に自然軽快する症例があるため 無症状の場合や機能障害をともなわない場合は 無治療で経過観察されることもあります ただし この病気は 異時性に異なる部位に病変が形成されることがあるため 無治療の場合でも 他の臓器の新たな病気が起きてこないか 慎重な経過観察が必要とされます 特に IgG4関連腎臓病 自己免疫性膵炎 IgG4関連肺疾患 後腹膜線維症/動脈周囲炎 などは頻度も高く 定期的にフォローすることが必要です
高橋医院