自己免疫性膵炎の診断 予後について説明します

<診断>

「自己免疫性膵炎診断基準2018」が用いられます

@膵腫大

ソーセージ様を呈する 膵のびまん性腫大は
この疾患に特異性の高い所見です

限局性腫大では膵がんとの鑑別が問題となります

@主膵管の不整狭細像

主膵管に びまん性 限局性に不整狭細像を認める

主膵管がある程度の広い範囲にわたり
検出できないか狭細像を呈し
これら病変のスキップを認めることもある

@血清学的所見

血清γグロブリン IgG IgG4の上昇
自己抗体を認めることが多く
高IgG4血症(135mg/dL以上)がひとつの基準になる

抗核抗体 リウマトイド因子などが陽性になることがある

@病理所見

*LPSP
と呼ばれる特徴的な病理像を示し
リンパ濾胞形成のみられることもある

*炎症所見
小葉内 小葉間 膵周囲脂肪組織 膵管上皮周囲で著しいが
膵管上皮内への炎症細胞浸潤は ほとんど認めない

著しいIgG4陽性形質細胞浸潤が特徴的であり
切除膵による検討では
ほとんどの症例で
強拡(400倍)1視野当たり50個以上の陽性形質細胞を認める

*花筵状線維化(storiform fibrosis)
炎症細胞(リンパ球 形質細胞)浸潤と
紡錘形細胞の増生からなる病変で
花筵状と表現される特徴的な錯綜配列を示し
さまざまな程度の線維化を伴う
膵辺縁および周囲脂肪組織に出現しやすい

*閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)
小葉間 膵周囲脂肪組織における
リンパ球 形質細胞の浸潤と線維化よりなる病変が
静脈内に進展し これを狭窄あるいは閉塞する所見

@膵外病変

中枢神経系
涙腺・唾液腺 
甲状腺 
肺 
胆管 肝臓 消化管 胆嚢
腎臓 前立腺 後腹膜腔 
リンパ節
などの報告がある

病理組織所見で
リンパ球浸潤と線維化 閉塞性静脈炎
IgG4陽性形質細胞の病変局所への浸潤を認める

これらの膵外病変は ステロイド治療により改善し
膵病変と膵外病変の出現と治療による消褪が
同期していることが多い

上記の条件を比較的満たしているものとして
IgG4関連硬化性胆管炎 硬化性涙腺炎・唾液腺炎(Mikulicz病)
後腹膜線維症 呼吸器病変 腎病変などがある

これら膵外病変は
自己免疫性膵炎と同時性のみならず
異時性にも認められることがある

@ステロイド治療の効果

画像で評価可能な病変が対象であり
臨床症状や血液所見は効果評価の対象としない
2週間以内に効果不十分の場合には再精査が必要となる

@膵内外分泌機能

典型的な自己免疫性膵炎では
膵外分泌機能障害および糖尿病を認めることが多い

ステロイド投与により
膵内外分泌機能障害の改善を認めることも少なくない

@IgG4

診断基準に示されているIgG4 135mg/dL以上の症例は
全体の83%で
陰性例も少なくありません

IgG4高値例では
多臓器に病変を持っていることが多く
特に頭頸部に病変を有するIgG4 関連疾患の患者さんでは
IgG4の著明な高値をきたしやすい

膵臓だけに腫瘤がある症例では
それほど高値にならない傾向を認めます


<予後>

長期予後は いまだ不明です

@慢性膵炎への移行

膵石合併率が平均10%(7~40%)に認められており
通常の慢性膵炎のように
膵外分泌機能不全になる可能性が指摘されていて
膵消化酵素の分泌低下・栄養の吸収不良をきたします

膵石を形成したAIPでは
AIP の再燃 アルコール摂取が関与している
という報告があります

膵頭部腫大 体部主膵管の拡張所見が
慢性膵炎への移行の独立した危険因子とされています

@悪性腫瘍の合併

膵がんの合併率は1%(0.7~13.9%)ほどで
3~6 年以内の報告が多いようです

IgG4関連疾患全体では
罹患臓器以外も含めた悪性腫瘍併発率が
8.5%(10.1~13.9%)と比較的高率です

ちなみに 自己免疫性膵炎の概念が認識される前には
限局型の自己免疫性膵炎が
膵がんと間違えられて外科切除されることが
少なくありませんでした

@自然寛解

ステロイド治療未施行例でも 自然寛解が散見され
限局型 血清IgG4低値の疾患活動性の低い症例に
多い傾向があります
高橋医院