PBCの治療と予後について説明します

<治療>

@ウルソデオキシコール酸・UDCA

ウルソは PBCの治療の第1選択薬で
最初から
1日に600mg(6錠)が投与されます

ALP値が正常上限の1.5倍を超えている場合は
直ぐに投与を開始します

それ以下の場合は
3~4カ月に1度肝機能を測定し
胆道系酵素がそのレベルに達した時点で投与を行います

ウルソを投与された患者さんの70%では
ALP値の低下がみられ
半年ほどの投与により著明に改善します

ALP値が基準値上限の1.5倍程度まで低下すれば
治療効果は十分と考えられ
この場合は長期予後も良好であることが確認されています

ウルソは
肝臓の炎症反応や線維化を改善し
肝臓移植ないしは死亡までの期間を延長させ
患者さんの生命予後を延長させます

しかし 進行した症例では 効果が期待できません

人の胆汁の成分なので 副作用はほとんどありません

ウルソで病気が治ってしまう訳ではないので
服用は継続することが必要です

@ウルソが効かない場合

ウルソでALP値の低下が思わしくない場合は
まずウルソの量を900mg/日まで増やします

それでも効きが悪い場合は
高脂血症薬であるベザフィブラートにも
ALP値の改善効果が認められているので
しばしばウルソと併用されます

但し ベザフィブラートの予後改善作用については
はっきりとした結論は出ていません

2016年にはアメリカとヨーロッパで
オベチコール酸という薬が有効であることが分かり
正式に承認されていますが
日本では未承認です

@かゆみの治療

強いかゆみに対しては
抗ヒスタミン薬が使われます

最近は肝臓病で起こるかゆみに対する新しい薬の
オピオイドレセプター拮抗薬(ナルフラフィン塩酸塩)が開発され
PBCのかゆみについても一定の効果が認められています

@骨粗しょう症の治療

胆汁うっ滞が原因で起こる
ビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症に対しては
ビスホスホネート製剤やデノスマブなどの薬が
使用されます


<肝移植>

残念ながら病期が進むと
内科的治療では限界が生じて 肝移植の適応となります

重症進行例では手術成績も低下するので
血清総ビリルビン値5mg/dLをめどに
早目に移植専門医に相談する必要があります

移植成績は 5年で約80%と優れています

術後再発率は
脳死肝移植では約10%
生体肝移植では
術後5年で5〜20% 10年で20〜30%です

再発がみられた場合も 無症候性のことが多く
予後に影響しないといわれています


<予後>

無症候性 PBCの患者さんでは
ウルソを飲み続けていただくことによって
病気のない方と同じ日常生活を送り
天寿を全うすることができます

このように 無症候性PBCは
無症候性にとどまる限り予後は大変よいのですが
約10~40%(5年間で約25%)は症候性へ移行します

黄疸がでてくると 進行性で予後不良です

5年生存率は
血清総ビリルビン値が2.0mg/dLでは60%
5.0mg/dLになると55%
8.0mg/dLを超えると35%となります

早期から門脈圧亢進症を来しやすく
胃食道静脈瘤は肝硬変に至る前に出現することがあるので
定期的な観察が必要です

進行例では
肝がんの併発にも留意しないといけません

男性 線維化進展例は
肝がんの高リスクとされています


<日常生活で注意すべき点>

症状が全くない無症候性PBCでは
日常生活 勤務 食事 入浴 運動等は
一般の方と同じ普通の生活で結構で
食べ物も特に制限がありません

定期的(早期の場合は3~4ヵ月に1度)な血液検査は
忘れないでください


<患者さんが妊娠を望む場合>

無症候性PBCの患者さんは 
妊娠を避ける必要はありません

妊娠によりPBCの胆汁うっ滞が増悪し
掻痒感が増強する可能性はあります
妊娠によるエストロゲンの変化が影響すると考えられます

症候性PBCでは
掻痒感 黄疸の増強や
食道静脈瘤がある場合は
悪化・破裂の危険性が増す可能性があります

妊娠の最初の時期では
ウルソ ベザフィブラートのいずれも投与は中止します

妊娠がPBCに及ぼす影響については
寛解したという報告と 増悪したという報告があります
高橋医院