前回 解説した分子シャペロンの代表選手を紹介します

<代表的な分子シャペロン>

@HSP70

作用が最も強い分子シャペロンで
細胞質だけでなく核にも存在します

タンパク質と最初に結合して その疎水性部分を塞ぎ
くっつぃたり離れたりしながら
タンパク質に自発的なフォールディングを起こさせます

@HSP40

HSP70と協調して働く分子シャペロンで
タンパク質を HSP70とHSP40の間で交互に受け渡して
その間にフォールディングを進ませます

@HSP90

人の細胞で最も量が多く存在する分子シャペロンで
細胞の全タンパク質の2%ほどを占めます

普通のタンパク質の存在量は0.03%くらいですから
HSP90がどれだけ多く存在しているかわかります

人の高等な細胞は HSP90では生きられません

プロテインキナーゼ 転写因子 受容体などの
シグナル伝達因子のフォールディングを 手助け 修正します

たとえば グルココルチコイド受容体は
HSP90と結合して構造が安定化しないと
ステロイドホルモンと結合できません

@HSP104

リング型をしている分子シャペロンで
その穴に 変形 凝集したタンパク質を通して
凝集を解きほぐして もう一度フォールディングさせ直します

@HSP60

ミトコンドリアに存在し
ミトコンドリアへのタンパク質の輸送を行っています

@HSP47

小胞体に存在し
コラーゲンが正しくフォールディングできるように助けています

このように 代表的な分子シャペロンは
いずれも「HSP~」という名前で呼ばれています

HSPとはHeat Shock Protein 熱ショックタンパクの略称です


<熱ショックタンパク HSPとは?>

分子シャペロン より 熱ショックタンパク の方が
聞いたことがあるかもしれません

HSPは ストレスにより作られるタンパク質です

熱ショックだけでなく
低酸素 飢餓 放射線 重金属への暴露
といったさまざまなストレスにより 産生が誘導されます

ストレスがかかったタンパク質は
フォールディング構造が壊れて凝集しやすくなりので
それを防ぎ 修復する働きをしています

精神的ストレスがかかった時は 全身で増えますが
脳からストレスホルモンが放出され
全身の細胞に作用してHSPが増えています

@分子シャペロンと熱ショックタンパク

個々の分子シャペロンがHSP~と呼ばれているように
分子シャペロンとHSPは
呼び名が異なるだけで 基本的に同じ働きをしています

もともとは
ストレスで誘導されるタンパク質を保護する物質として
HSPが同定され 注目されていましたが

研究が進むにつれ
ストレスがない状況でも
細胞内には似た働きをする物質が存在していることが
明らかにされて

洒落た名前の「分子シャペロン」と呼ばれるようになりました

分子シャペロンとHSPで違いがあるのは その発現動態で

分子シャペロンは 平常時から存在していますが
HSPは ストレスにより速やかに発現が誘導されます

通常の生命活動で起こる
細胞内で出来たばかりの未熟なタンパク質の凝集などには
常在する分子シャペロンが対応して

細胞にストレスがかかると
HSPが大量に発現誘導されて 緊急事態に対応するわけです

では ストレスがかかると
どのようにしてHSPの発現が誘導されるのでしょう?
高橋医院